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魔導書(電子書籍版)と契約し旅にでる  作者: 弓納持水面
第8章 哀れな生き物

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灰は灰に

鎧は簡単な補修だったので、数日で上がっています。

それゆえ、一人になった喪失感は大きいはずです。


今日[魅惑の伯爵夫人]は臨時休業している。

ハーピー商会にデポ姐さん達が招かれ出掛けているからだ。

ペティさんが銀貨を1枚貰い出掛けていった。

休暇は久しぶりだと言う。

(さら)われないかとアヤメさんが心配していたが、デポ姐さん曰く「この街で私の所有物(ドレイ)に手を出す不届き者はいません〜」

との事だ。


自分は今、[冒険者達の墓]の前にいる。


午前中は兄者と最後にまわった武具市場に行き修繕した鎧を受け取った。

ほんの数日前兄者と一緒に歩いた市場だ。


修繕から上がってきた兄の鎧は下取りしてもらった。

鎧があっても魔術は防げないが、万全で戦えていれば兄は……と考えずにはいられない。

後、兄者の形見の片手剣はサブウェポンにする事にした。

鞘を新調し、今は腰に下げている。


冒険者に向いてない。

アヤメさんに指摘された事実を考えている。

今までは兄者が考えて、自分を導いてくれていた。

レイカ様を守りたい気持ちもあるが、サキュバスの件からして自分の情欲に理由をつけているだけかも知れない。


この街なら冒険者を辞めても、力仕事の人足として食べていけるだろう。

無理に武器を振るうことはない。

だが、親父の様に、実の祖父の様に冒険者になり旅をしたい。

そう子供心に思っていた事実もある。

どうしたら良い?兄者……。

[冒険者達の墓]には他に誰もいない。


夕方

灰色髪のハーフエルフが1人墓を訪ねてきた。

最初銀髪のミケさんを思い起こしドキリとしたが、訪ねてきたハーフエルフの髪は暗い灰色髪だし、灰色の瞳をしていたので、直ぐに別人とわかった。


「昼過ぎから居ますね。どなたか大切な方を亡くされたのですか?」

ハーフエルフに話かけられた。


「はい、兄を……」

それだけ答える。


「私は幼なじみが闇に還ったと知り来ました。」

「チャバネは快活で、魔術の才がありました。」

突然雷が鳴り、雨が降り始めた。

辺りが急に暗くなってくる。


「しかし、不公平だと思いませんか?」

灰色のハーフエルフは雨の中でも喋り続ける。

「私が、まだ彷徨っているのにチャバネは闇で安らぎ、ミケは生き延びているなんて!」


ミケさんが生きてる?

いやそれ以上に様子がおかしい。

灰色だった瞳が紅く変わり、蛍火の様に灯っている。

こいつはハーフエルフなどではない、アンデッドだ。


[視線拘束](使0残18)

契約発動[魔術無効]

[刃の雨](使1残17)

契約発動[魔術無効]


「な、魔術が効かないだと!」

突然攻撃された。

しかし、魔術が効かず焦っているようだ

兄者の剣が、兄者が護ってくれている。

戦斧を構え、気合いを込める

[神聖付与](使1残2)

愛用の戦斧が雨の中、白く輝く。


「貴様、大地母神の聖戦士か!」

「彷徨う我が下僕となれ!」

[倍速攻撃](使1残16)

アンデッドが小剣を抜き素早く繰り出してくる。

こちらは多少の手傷は気にせず踏み込む。


互いに悲鳴を上げて間合いを取る。

小剣と侮っていたが鎧ごとザックリ斬られた。

恐るべき怪力。

だが相手も傷口から煙がたなびき苦痛に顔を歪ませている。


次が勝負になる!!

咆哮を上げ飛び込む

[鼓舞](使1残1)


アンデッドは小剣で戦斧の軌道を逸らし、一撃を入れようとした様だ。

通常なら、それは成功し自分の心臓は一突きされているはずだった。

しかしそうはならず、小剣は怪力に耐えきれず根本から折れ、戦斧はアンデッドを真っ二つにした。


断末魔の叫びを残し、アンデッドは灰になった。

雨も止み、あたりは夕焼け空に戻った。

[自己治癒](使1残0)

怪我を癒して宿に戻る事にした。

冒険者を辞めるかどうか結論が出た。

兄者が最後の導きを与えてくれていた。

この世界のヴァンパイアは[永遠の神]との契約によるノーブルヴァンパイア。

ノーブルヴァンパイアによって吸血殺害された者がなるスレイブヴァンパイア。

[永遠の神]に魅入られる事によるノーマルヴァンパイア。

ノーマルヴァンパイアによって吸血殺害された者がなる。レッサーヴァンパイアと多彩です。

今回は

ハーフエルフ。女性

能力(敏6力5技4射8魔6聖0)

から

ノーマルヴァンパイア。女性型

能力(敏6力15技4魔18聖0)

に変化しています。

他にヴァンパイア特有の魔術や能力が付与され、恐るべき魔物となります。


私の黒歴史がまた1ページ。

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