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魔導書(電子書籍版)と契約し旅にでる  作者: 弓納持水面
第8章 哀れな生き物

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蛙による解説

解説回ですね(笑)

警備兵目線です。

後書きは今回Eテレの教育番組風にしました。

人間から蛙に、蛙から人間に、急激な肉体の変容は精神に大きなダメージを与える。

蛙になった時点で服は着ていられないし、装備はもちろん手放す。

結果として、全裸で発狂した警備兵が出来上がる。


10人以上を一瞬で無力化し、大笑いしている魔族の美少女、その隣で困惑している冒険者2人、隣で囀る会長とこの街の領主(デポ)、この街の混沌が、この中庭に顕現している。


「会長、奥でお茶の準備が整っております。」

奥から歩いてきた会長秘書が混沌を無視して会長に告げた。

領主(デポ)一行4人と会長が奥に入ってゆく。


「警備兵、何名かついて来なさい」

会長秘書が指示を出す。

自分もついて行く一員に選ばれた。


城の奥宮にあたるスペースに入ると、直ぐに、このハーピー商会創業者、英雄ロイターとアナ会長の肖像画が飾られたホールがある。



英雄ロイターは初代勇者パーティーの一員で、勇者パーティーに入る前は王都イブスルで盗賊をしていたと言われている。

そして第一次魔王戦争後、報奨金を元手に魔獣ハーピーのアナと起業したのがこのハーピー商会である。


その後10年で、ロイターのコネとアナの商才、戦後復興の流れによってハーピー商会は大商会へと成長、街の名前もイブスル干渉を経てハルピアに変わった。


この豪商達が治める街の筆頭商会、この街の真の統治者が肖像画の片割れ、ハーピー商会アナ会長である。



ホールを過ぎ、応接間に近づくと香茶の良い香りがしてきた。

普通の安価と言われる茶葉でさえ一服、銀貨1枚はする。

高級茶葉ならその10倍、最高級なら青天井だ。

日給が銀貨1枚に満たない自分には飲めない代物の香り、どんな味なのかは想像がつかない。


先程、大笑いしていた魔族の少女と領主(デポ)、アナ会長とその秘書が応接間に入った。

2人の冒険者と我々警備兵4人は部屋の前で待機する。


「ねぇ、アヤメ。ハーピーって2種類いるんだって。」


「ええ、そうですね。魔獣ハーピーと妖鳥ハーピー。ただ通常はどちらも魔物です。」


我々は慣れてしまったが、冒険者にはハーピーは魔物だ。

話かけられた方の娘が、先程リザードマン刀を抜いたのも、もっともな話だ。


ハーピーで数が多いのは妖鳥ハーピーになる。

山や島の崖に集落を作る妖魔で肉食。

数体で狩りをし、群れの基本は女。

そこにその群れをハーレムとする男ハーピーが1人君臨する。

男ハーピーは単独で放浪し、女ハーピーの群れを巡り争う。

まぁ大陸西部の草原に棲むライオンと同じだ。


魔獣ハーピーは、そんなハーピーを素体に魔族が造った魔獣で妖鳥ハーピーの卵に魔術的処理をして作るそうだ。

魔獣らしく不眠で寿命はなく、魔術も使えるが繁殖能力はない。


アナ会長は後者で英雄ロイターと知り合った経緯は不明。

ただロイターと知り合う前は№で呼ばれており、アナと言う名前は英雄ロイターが名付けたことが確認されている。

会長が昼夜を問わず働くので、2交代制の商会使用人達は大変らしい。


しかし、魔族と魔獣で何を話あっているのだろう。

あの同僚を蛙に変え元に戻した、とびっきりの美少女は何者だろう。

王冠風の物を被っていたが……。


「菖蒲、冷夏、一緒にお茶しよう。」

美少女に冒険者2人が招かれ、部屋に入った。


新魔王は女だと言うが、まさか……。

いや、詮索はなしだ、俺は蛙になりたくない。

「マドウ、イブスル干渉って何?」

『魔王戦争後、復興したイブスルを狙って王家の遠縁を立てて人間諸国が侵攻してきた事を言う』

『イブスル王家は王都陥落時に皆、処刑済みだったからな。』

『対して商人達は魔族のデポを立てて応戦。勝利した商人達は街を魔族領ハルピアと称した。』

「魔王戦争後も戦いは起こったんだね。マドウ。」

『政変と戦いの記録を歴史と言うからな』


私の黒歴史がまた1ページ。

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