葬儀
土葬、火葬、野ざらし、この世界では様々な埋葬方法があります。
ただ、アンデッドがいる世界なので祈祷は必須です。
あれから3日、郊外の大地母神殿の片隅で2人の葬儀が行なわれている。
ロバートさんは思ったより遠方にいるのか姿を見せていない。
2人の遺体は改めて火葬され一つの小さな素焼きの壺に納められている。
死亡した大抵の冒険者は祈祷だけされて野ざらしが普通の対応になる。
だが街で死んで、仲間に予算がある場合は共同墓地に葬られる。
その場合でも、スペースの関係で土葬ではなく火葬にされるのが一般的だという。
大地母神の老神官の祈祷が終わり、壺が地中に下ろされ、神官見習いが土を被せ始めた。
参列者は私と冷夏、デグさんのみ。
だがそれでも、冒険者の末路としては良い方だと思う。
「冷夏、気は進まないと思うけど……」
街に戻る帰り道、私は冷夏に声をかける。
「仕事だよね?大丈夫、やるよ。働かなきゃ、ごはん食べられないから」
あっさりと返事がきた。
あの死体置き場で号泣した後は、冷夏は至って冷静さを取り戻している。
「前世でね。比較的死に近い場所に長くいたんだ。昨日の夕方まで笑いながら話していた娘が翌朝は居ないとかね。」
「だから、大泣きしたら切り替えが、ついちゃうんだよ。」
冷夏が寂しそうな顔をするのを初めて見た。
私はその寂しさを慰める言葉を知らない。
そしてそれが、もどかしい。
もどかしさを抱えながら、もう一つの問題に着手する。
こちらの方が厄介かもしれない。
「デグさん、冒険者続けますか?続けるには、デグさんは優しすぎる気がしますけど。」
泣きながら歩くデグさんに声をかけた。
「ロバートさん来たら、相談してみてはどうですか?」
少し思う事もあり、畳みかける。
「それは酷いよ。アヤメ」
冷夏がデグさんに変わって反論する。
「確かに、デグさんは優し過ぎるとこもあるけど、私は何度も助けられてるよ」
「そして、優しいデグは冷夏の為に死にました。ですか?」
多分そうなっても、デグさんは本望だろうけど……。
「冷夏、甘やかしては駄目です。」
「デグさん、考えて結論を教えて下さい。悩みや苦しみを半分以上引き受けてくれたジグさんは闇に還ったのですから。」
「アヤメ……それは鬼だよぅ」
亡きジグさんから兄弟で、村を追放同然に出たと聞いている。
確かに、村を追われた食詰め者に出来る仕事は冒険者ぐらいしかない。
しかし、村を出て1年経たずにジグさんは死んだ。
もし、冒険者以外で食べてゆけるなら冒険者は辞めた方がデグさんの為だと思う。
気まずい沈黙が訪れ、私達は宿に戻った。
デグさんは終始無言だった。
冒険者という名のフリーランスは使い捨てだったり過酷です。
フリーランスにならざる得ないのと、望んでフリーランスになるのとでは、天地の差があります。
大地母神教えでは、生命は闇から生まれ、死後は闇に還るとされています。
私の黒歴史がまた1ページ。




