世界を滅ぼすなら
[魅惑の伯爵夫人]は食堂ではなく、冒険者の店です。冒険者の店には色々サービスがあります。
ヒューヒュとレイナの会見の翌日[魅惑の伯爵夫人]に戻ると、冷夏と共に奥の商談スペースに通された。
通常依頼人との密談に使われたりするスペースだが、この店では滅多に使われない部屋だ。
デポさんに案内されて中に入ると、そこには憔悴したデグさんが座っていた。
一刻後
黒焦げの2つの遺体を確認し、デグさんと冷夏が号泣する傍らで、デポさんと対応策を練っていた。
先ずはこの2つの遺体を葬る手配をしなくてはならないし、ロバートさんへの連絡、今受けている魔王とハルピア商会会長との会見の護衛、ミケさんが管理していたパーティー資金の確認、やらねばならない事は山積みだ。
「デポさん。ロバートさんの行き先、知りませんか?」
「知ってます〜連絡の手紙出しました〜。」
「二人の遺体は……」
「引き取り後、大地母神殿の冒険者達の墓に埋葬します〜」
「パーティー資金は……」
「お預かり分から、上記の経費を引きお返し予定です〜金貨10枚前後でしょう〜」
「会見の護衛は……」
「それだけは何とかして下さい〜。契約解除違約金は金貨80枚です〜」
え?
私は抗議した、違約金は報酬の倍返しが基本のはず。
「通常どうりですよ〜。報酬は後払いの総額成功報酬ですが金貨40枚です〜」
え?
私と冷夏二人で金貨40枚?
「お疑いなら〜お店にある冷夏さんのサイン入り契約書お見せします〜」
金貨40枚あれば、短期の護衛なら最低でも冒険者200名は雇える金額……。
「あそこで鼻を啜ってる娘は殲滅魔法使える大魔法使いですよ~」
デポさんは冷夏を指して言う。
「仲間の弔いに街一つ滅ぼして、手向けられる娘です〜」
さすがに、そんな心配はしてないがデポさんの指摘は事実でもある。
しかし……
「それを言うなら……」
「はい、お気づきですね~、陛下は世界を滅ぼすだけなら、半刻もかかりません〜」
「かつて、魔族だけを避難させ〜世界を滅ぼす計画が発案されました〜」
が、
「シュミュレーションで、9割以上の確率で〜ゴブリンが世界の覇者になりました〜繁殖力の差です〜」
「とにかく〜レイカさんを何とかしてください~会見は3日後、伸ばしても7日後ですね~」
デポさんに取り急ぎ、会見スケジュールを伸ばす事を依頼した。
さて、どうしたら良いだろう。
魔族の魔力と大魔法が組み合わされる魔王は最悪の戦略兵器とも言えます。
ただその使用は(恐竜が覇権を失い、哺乳類が覇権を得た様に)ゴブリン天国がくるだけです。
私の黒歴史がまた1ページ。




