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魔導書(電子書籍版)と契約し旅にでる  作者: 弓納持水面
第8章 哀れな生き物

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覗き見

郊外にある妖魔神殿は広く、籠城戦が出来るぐらいです。


今日はアヤメと共に、レイナを護衛して過ごす。

午後からレイナが妖魔族族長代行と会うらしいんだけど、ちょっと不安に思っている。

セバスさんは昨日夜から妖魔神殿に詰めるって言って居ない。

アヤメと私でレイナを守らないといけないんだよ。

女性の護衛なら増やしても良いと言われていたので、ミケさんにも相談したかったが帰って来なかった。

(もちろんジグさんも帰ってないよ……ラブラブなんだろうな。)


『実質アヤメ一人で二人の面倒見るのか……アヤメも災難だ。』

ん?マドウ、なんか悪口言ってるね。


「冷夏、菖蒲、お願いがある。」

魔王からお願いされるなんて、勇者にでもなった気分だけど、なんだろう?

丘の向こうが見たいとか言い出すのかな?


「族長代行がどんな人か見たい。」

丘の向こうではなかったが、う~ん、大丈夫かな。

セバスさん居たら絶対反対する気がする。


「適当な場所がないか、兄の手の者に確認してみます。」

アヤメが冷静に対応している。

でも、兄の手の者って……。

アヤメの里って竜人衆とか竜人の庄とか言いそうだよ。


一刻後

「ここからなら、族長代行の一行が見れます。」

妖魔の村からハルピアへの街道が見える小屋の中に3人でいた。

なんかドラマで、こんなシーン見た記憶がある。


「二人とも、来ましたよ」

アヤメが告げるので外を見ると、隊列を組んだホブゴブリン達が歩いている。


「(ホブゴブリンが、いっぱい来てるよ、マドウ。)」


『(ホブゴブリンが分かるとは教育の成果が出てきたな)』

うるさいよマドウ。


「ホブゴブリンだけで50は居ますね。装備も整っている。」

「まだ隊列は続いてますし、総勢は200 位だと思いますよ。」

ひと目見てアヤメが言う。


「そんな事わかるの?」

私も疑問に思った事をレイナが訊ねる。


「子供の頃、物見の訓練とか、させられませんでした?」

「ああ、レイナはしませんよね。」

いや、私もしてない。

う~ん、大抵しないと思うぞ、アヤメ。


「次がきたよ。ドワーフだけど……」

レイナが口ごもる。

「すごい、種子島の数……」

火縄銃を揃えてドワーフが行進してきた。

私はアヤメと顔を見合わせる。

ドラマだと、このあと来るのは、うつけ者だが、今回来るのは、ダークエルフだろう。


「やはり、ヒューヒュですね。」

ルビーのピアスをしたスタイルの良いダークエルフが馬に乗っているのを見てアヤメが呟いた。


午後

「やっぱり、レイカ達だったかぁ。」

妖魔神殿に到着したヒューヒュに呼ばれ、開口一番に言われた。


「種子島を持った狙撃手が待ち伏せてるって報告受けて、レイカが思い浮かんだから。」

う~ん、覗き見バレてたし、結構危なかったんじゃ……。


「危うく種子島衆に一斉射撃させるとこだったよ。」

ヒューヒュは笑っているが、アヤメは怖い顔している。


「魔王って、どんな娘?」

ダークエルフ族の正装に着換えながらヒューヒュは私達に訊ねてくる。


「悪い娘じゃないよ。好奇心旺盛な、凄い美少女。」


「まだ幼く、魔王としての基盤は脆弱、ハーフエルフを不合理な死から救うぐらいの見識はあります。」


私とアヤメはそれぞれ答える。


「そっか。」

ヒューヒュは一瞬、思案顔をした。


「殺しても、生かしても、魔族は暫らく纏まらないと思います。」

アヤメがいい添える。

うん?用心棒アヤメは、なんか物騒だぞ?


「アヤメは怖いねぇ、そう思わないレイカ?」

ヒューヒュはいたずらっぽい笑みを浮かべて、話を振ってきた。


「お昼抜きで、お腹空いてるからだよ」

私が冗談っぽい口調で答えると、

「[空腹の竜、手負いの虎]って言いますからね。」

とアヤメも、とぼけて3人で笑った。


会見、何とか上手くいきそうだよ。

ホブゴブリンはゴブリンの亜種で、この世界ではゴブリンの上位互換です。

ただ、その分繁殖力ではゴブリンに劣ります。


私の黒歴史がまた1ページ。

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