燻る塊
街中で戦闘すると、衛兵が駆けつけますが、大抵間に合わず、事後処理しか出来ません。
冒険者の店[森の若木亭]
クソ野郎が宿を取っている宿屋。
挑発する為に、赤毛と一緒に食事をする。
食事を終えたら、裏通りに誘導しよう。
(大丈夫、返り討ちに出来る。)
そう自分に言い聞かせる。
赤毛と関係したのは、こういう時に命懸けで戦ってもらうため。
「角を曲がったら走るわよ。」
角を曲がり、二人で走り出す。
[木人召喚]×3(使3残2)
[毒花粉の霧](使1残1)
前方に待ち伏せていたドライアード(見た目は全身緑色したエルフ)が中魔法を使ってくる。
待ち伏せとは……。
クソ野郎が行動を読んできた。
契約発動[魔術無効]
赤毛の片手剣が淡く光り[毒花粉]を打ち消す。
[火球](使1残6)
ドライアードを火達磨にする。
植物の精霊だけあり、絶叫しながら良く燃える。
木人も召喚主が消えたので無力化した。
「ジグ後ろからくるエルフを抑えて!」
赤毛に指示を出し魔術を使う。
[風の盾]×2(使2残4)
エルフの放ってきた矢が風で逸らされる。
私と赤毛にニ本づつ飛来していた。
エルフの連射技術は、やはり侮れない。
[高速詠唱](使1残4)
[蜘蛛糸拘束]×2(使2残2)
クソ野郎がエルフ魔法を使う。
馬鹿が……私の勝ちだ。
私は蜘蛛糸に拘束されつつも勝利を確信した。
[高温火球][使2残2]
契約発動[魔術無効]
片手剣がまた淡く光る。
赤毛への[蜘蛛糸]は霧散した。
クソ野郎は私の魔術で青い炎に包まれる。
断末魔の叫び。クソ野郎、燃え尽きるがいい。
[高速詠唱](使1残7)
[毒蜂召喚][毒蜂襲撃](使2残5)
赤毛が毒蜂達の襲撃を受け絶叫した。剣を取り落としたのを見て追撃がかかる。
[苦痛拘束]×2(使2残3)
赤毛は呻き声を上げて動かなくなった。
倒れるところを白髪のハーフエルフが支え、首に短刀を突きつける。
私も[蜘蛛糸拘束]に[苦痛拘束]を重ねられ手も足も出ない。
「久しぶりねミケ」
一瞬誰だかわからなかった。
昔とは髪色も印象も激変していた。
軽やかだった声も違う。
私は苦痛に耐えつつ声を絞り出す。
「……生きていたのね。チャバネ」
激痛、魔術を使う為の集中が出来ない
「裏切り者のお前を殺す為に冥暗から帰ってきたのよ。」
白髪の双眸が怒りに燃えている。
「ミケ、一つ答えて。貴女の養父、貴女の愛する先生は何処に潜伏しているの?」
「素直に話せば、この赤毛の恋人は見逃すし、貴女は苦しませずに殺してあげるわ。」
「……聞いてどうするの。」
今は時間が欲しい、時間を稼がないと。
「知らないの?エルフ共がヴァイゼナールに多額の賞金をかけているのよ。」
「居場所だけでも、哀れな生き物一匹が遊んで暮らせるぐらいの額を。」
「……」
考える込むふりをする。
チャバネが赤毛の胸を切り裂く
「この赤毛も災難ね。貴女が話さないと貴女より先に嬲り殺しよ。」
[高温火球](使2残0)
白髪と赤毛が青い炎に包まれる。
白髪の甘さが私を救った、苦痛に耐え集中する時間を与えてくれた。
チャンスは一度。
100 %殺す確実な魔術を奴にぶつけた。
赤毛を巻き込んだが、白髪を殺せない事は避けたかった。
魔術の効果時間が切れ、私は自由になる。
衛兵が来る前に姿を消さなくては。
赤毛と白髪だった黒い塊は、まだ燻っていた。
チャバネが喋っているのは、恨みが精神的外傷を上回ったからです。
皆さんお気づきかと思いますが、ミケはサイコパスです。
ミケ視点では、セリフで喋る事はあっても、内心で名前を呼ぶ事はなかったと思います。
作者としてはジグにお疲れ様と言いたいです。
私の黒歴史がまた1ページ。




