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魔導書(電子書籍版)と契約し旅にでる  作者: 弓納持水面
第8章 哀れな生き物

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さて、どうしよう

アヤメの護衛依頼で[五芒星]は、そこそこ報酬を大地母神殿から得たばかりです。

もちろんアヤメには秘密になっています。

冷夏と[魅惑の伯爵夫人]の食堂で将棋を指していると、貴族風で身なりの良い10〜12歳くらいの少女が付き人らしい初老の男性と入ってきた。


ちなみに冷夏は将棋がかなり強い。

冷夏曰く、完璧超人の姉よりも優る唯一の事だったらしい。


来店した二人の姿を見て、

「あら〜、いらっしゃい〜、はじめまして~、デポと呼んでくださいね~」

デポさんがいつもの挨拶をする。


「シャンヴィル・デポトワール殿ですな、こちらはレイナ・ジェンカ様。」

「しばらく世話になります。」

付き人の初老男性が挨拶を返す。


青紫の瞳に黒髪の貴族らしい少女は黙っている。

下賤の者とは話したくないという貴族独特の感覚なのか、単に人見知りなのかはわからない。


「護衛の方や他のお付きの方は後からですか〜?」

デポさんが尋ねる。

少女は高位貴族に見えるから、見た目どうりなら、もっと大人数になるはず。 


「いや、お忍び故、レイナ様と儂だけで動いております。」

「必要なら、護衛の冒険者を雇うつもりでおります。」

お忍びだとしても、人数が少な過ぎる。

そこそこの人数の冒険者を雇う必要があるだろう。


「あらあら〜大変ですね〜。ご依頼ならぜひ〜。」

デポさんが野菜のごった煮を出しながら宣伝を始めた。

なんだろう?

デポさんが緊張している感じがする。


夕方

珍しく兄弟で出かけていたジグさん、デグさんが帰ってきた。

その後、直ぐにミケさんも戻る。

ミケさんがビックリした顔を一瞬だけ見せて席に付く。

階段から昼間の少女と付き人が降りてきていた。


「ロバートさんが冒険者稼業は、30日ぐらい休みにする。しばらく留守にするって言って出かけたよ。」

夕食を取りながら、レイカが皆に伝言を伝える。

私以外のメンバーは懐が何故か十分に暖かい様だ。

「その間、個人で仕事受けるのは自由だって。」


さて、どうしよう。

夕食の時間が終わり、灯りが減らされた食堂で一人考える。

下級神官になる前ほど困窮はしてないが、30日何もせず休める程豊かではない。

ミケさんとジグさんは甘く、二人で過ごすみたいだし、レイカとデグさんは神殿で修行の日々だろう。

私も修行の日々としたいが、この宿の宿泊代と食事代を稼がねばならない。


[家族や友情は金の貸し借りをする時点で終わる]


借りるのは論外だ。

歩き巫女なら神殿に挨拶すれば、宿には困らない。

だが私はまだ下級神官で神殿に泊まるには(格安とはいえ)料金がかかる。

姉夫婦の所は(れいか)絡みで訪ねづらくなったし、そもそも義兄と30日も世話になる程、親しくはない。


「アヤメちゃん〜短期で用心棒しない〜。推薦依頼あるんだけど〜。」

デポさんが給仕をウッドゴーレムに任せ、いつの間にか隣に座っている。

なんだろう、[竜の背のトカゲ]になった気分だ。

[竜の背のトカゲ]

竜人族のことわざです。


私の黒歴史がまた1ページ。

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