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魔導書(電子書籍版)と契約し旅にでる  作者: 弓納持水面
第8章 哀れな生き物

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幼なじみ達

クプファー視点です。

宿に帰ると白髪のハーフエルフとドライアードが迎えてくれた。

ドライアードは友人(しはいか)の精霊。

白髪のハーフエルフはシロカネ。

昔はチャバネと呼ばれていた幼なじみだ。


シロカネは立ち寄った人間の街ので売られていたのを助け出した。

最初は買い取ると申し出たが、エルフシルク一反(いったん)よりも高額だった為、弓に訴えて助け出すしかなかった。


結果として、任務に支障が出るかもしれないが、見捨てる事はエルフの誇りが許さない。

幼なじみとしても、ありえない事だ。

ハーフエルフはエルフ法ではエルフではないが、法を改めるべきだろう。


チャバネからシロカネになるまでに、色々あったのだと思う。

シロカネは筆談は出来るが喋れない。

歌は唄え、エルフ魔法の詠唱も出来る。

だが、喋ることが出来ない。


「ミケと接触した。」

シロカネに伝える。

ラットが奴隷狩りの冒険者を射殺し、チャバネがエルフ魔法で奮戦するのを囮に逃げた裏切り者。

裏切り者のハイエルフ、ヴァイゼナールの養女。

奴を捕らえ、ヴァイゼナールの潜伏先を明らかにしなくてはならない。


[ラットは冒険者を8人射殺したよ。死の直前まで、後ろに回り込むと言ったミケを信じていたよ。]

シロカネが流麗な筆跡で怒りを綴る。

[先生の愛娘にして愛人の奴なら、必ず先生と繋がっているよ。]

色が抜け白くなってしまった髪の奥で暗く瞳が恨みに燃えている。


「ああ、俺もそう考えている。」

弓はラットに劣り、エルフ魔法ではシロカネに劣ったミケが生き延び、冒険者をしているのには裏があるはずだ。

能力のないハーフエルフの大半が娼婦や人間の玩具として生きているのだから。


[宿が判れば今夜にでも仕掛けようよ。逃げる可能性があるよ。]

シロカネが提案してくる。


「それは無理だ。ミケは冒険者として[魅惑の伯爵夫人]に仲間と逗留している。」

魔族の宿に力押しは効かない。

それに冒険者の店ギルドは厄介な相手だ。

「街中で仕掛けるチャンスを待とう。」


[なら何故接触したの?奇襲の方が良かったよ?]

こんなに積極的なシロカネは久しぶりだ。

いや、シロカネとなってからは、初めてだろう。

チャバネの時は快活で魅力的な少女だったのだが。


「奴には冒険者仲間がいるはずだ。殺すだけなら不意打ちで充分だが、捕らえるなら仲間を特定し排除しておかないと駄目だ。」


[クプファーは誠実過ぎだよ。冒険者なんて仲間でも、黙って消えれば諦めるんだから。]


人間世界に世慣れたシロカネの方が正しいのだろう。

ただシロカネには言えないが、ミケと話せば解決する期待もゼロではなかったし、戦うにしても卑怯な真似はしたくなかった。


[ミケの事考えてる?]

シロカネの差し出した紙を破り捨て、彼女を抱き寄せた。

エルフ法は改正すべきだ。

ラット、チャバネ、ミケ。

エルフ達がハーフエルフ達をどう見ているか分かるというものです。


ちなみにハーフエルフはエルフ法では人間の為、関係を持つのはエルフ法違反です。


私の黒歴史がまた1ページ。

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