幼なじみ達
クプファー視点です。
宿に帰ると白髪のハーフエルフとドライアードが迎えてくれた。
ドライアードは友人の精霊。
白髪のハーフエルフはシロカネ。
昔はチャバネと呼ばれていた幼なじみだ。
シロカネは立ち寄った人間の街ので売られていたのを助け出した。
最初は買い取ると申し出たが、エルフシルク一反よりも高額だった為、弓に訴えて助け出すしかなかった。
結果として、任務に支障が出るかもしれないが、見捨てる事はエルフの誇りが許さない。
幼なじみとしても、ありえない事だ。
ハーフエルフはエルフ法ではエルフではないが、法を改めるべきだろう。
チャバネからシロカネになるまでに、色々あったのだと思う。
シロカネは筆談は出来るが喋れない。
歌は唄え、エルフ魔法の詠唱も出来る。
だが、喋ることが出来ない。
「ミケと接触した。」
シロカネに伝える。
ラットが奴隷狩りの冒険者を射殺し、チャバネがエルフ魔法で奮戦するのを囮に逃げた裏切り者。
裏切り者のハイエルフ、ヴァイゼナールの養女。
奴を捕らえ、ヴァイゼナールの潜伏先を明らかにしなくてはならない。
[ラットは冒険者を8人射殺したよ。死の直前まで、後ろに回り込むと言ったミケを信じていたよ。]
シロカネが流麗な筆跡で怒りを綴る。
[先生の愛娘にして愛人の奴なら、必ず先生と繋がっているよ。]
色が抜け白くなってしまった髪の奥で暗く瞳が恨みに燃えている。
「ああ、俺もそう考えている。」
弓はラットに劣り、エルフ魔法ではシロカネに劣ったミケが生き延び、冒険者をしているのには裏があるはずだ。
能力のないハーフエルフの大半が娼婦や人間の玩具として生きているのだから。
[宿が判れば今夜にでも仕掛けようよ。逃げる可能性があるよ。]
シロカネが提案してくる。
「それは無理だ。ミケは冒険者として[魅惑の伯爵夫人]に仲間と逗留している。」
魔族の宿に力押しは効かない。
それに冒険者の店ギルドは厄介な相手だ。
「街中で仕掛けるチャンスを待とう。」
[なら何故接触したの?奇襲の方が良かったよ?]
こんなに積極的なシロカネは久しぶりだ。
いや、シロカネとなってからは、初めてだろう。
チャバネの時は快活で魅力的な少女だったのだが。
「奴には冒険者仲間がいるはずだ。殺すだけなら不意打ちで充分だが、捕らえるなら仲間を特定し排除しておかないと駄目だ。」
[クプファーは誠実過ぎだよ。冒険者なんて仲間でも、黙って消えれば諦めるんだから。]
人間世界に世慣れたシロカネの方が正しいのだろう。
ただシロカネには言えないが、ミケと話せば解決する期待もゼロではなかったし、戦うにしても卑怯な真似はしたくなかった。
[ミケの事考えてる?]
シロカネの差し出した紙を破り捨て、彼女を抱き寄せた。
エルフ法は改正すべきだ。
ラット、チャバネ、ミケ。
エルフ達がハーフエルフ達をどう見ているか分かるというものです。
ちなみにハーフエルフはエルフ法では人間の為、関係を持つのはエルフ法違反です。
私の黒歴史がまた1ページ。




