暗転
初投稿です。
色々、読んでたら書いて見たくなりました。
よろしくおねがいします。
バイタルを計測する機械音が警告音を奏でてる。私には、もう何も見えてない。
しかし不思議と苦しくも痛くもない。薬が効いているのだろうか?
「ご家族はまだ?」
「連絡はつきましたが、深夜ですので。」
音だけが聞こえる。
機械の音、医師の声、看護師の声、音だけが聞こえる。
しかしそれらも段々遠ざかってゆく。
薬が効いているわけではなさそうだ。段々感覚がなくなってゆく。
そっか、そういう事か…。
先送りしていた時がきたんだ。
(ちょっと残念だな。)
そんな事を思いながら、それを受け入れようとした…。
そのとき、不意に男の人の声がはっきりと聞こえた。誰の声だろう?
「聞こえるか?……。もう聞こえているはずだ。……よ。意識を手放す前に聞け。
お前には選択肢が二つある。
そう二つあるのだ。贅沢にもな。
このまま深淵の闇に帰るか?
我と契約をし新たなる旅に出るか?だ。」
不意に音が戻る。
「…拍数…低下!…最大量投与して…」
切迫する声が遠くに聞こえる。
また不意に、今度は穏やかな声、女の人の声がはっきり聞こえる。
看護師さん?
「旅路の果て闇に帰るのも悪くはないですよ。」
看護師さんではない。
看護師さんは、後ろ向きなことは仕事上言わない。
どうしよう?……。
しばらくの逡巡の後、私は返事をした。
何で、その返事をしたかは自分でも、わからない。
たぶん、ちょっと残念と思っていたからかも知れない。
「なるほど、それが答えでよいな?…。まあ、さもあらん答えだ。……そろそろだな。」
遠くで誰か叫んだ
「……!……!ご家族が………。」
意識が暗転した。
水音。冷たい!え!溺れる?
「落ち着け冷夏よ、足が、ぎりぎり付くぞ。死神の泉とはいえ、こちらに来たばかりで、溺死する訳にはゆくまい。」
え!でも!
混乱している私は、足がつくと言われても水を飲んでしまい溺れ始めていた。
「聖なる泉ですよ。口の悪い魔道書、冷夏を頼みますよ。」
沈む!沈んでゆく…。
「オイ。シッカリしろ!」
心配そうにのぞき込む顔。スキンヘッドの…誰だろう知らない人。
水から引き上げられたっぽいけど、まだ夢の中なのかな?
「兄者すぐきてくれ!」
意識は再び暗転していった。
ごめんなさい。知らない人。まだねむいや。
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