無能 明日に備える
いよいよ100話まで後1話!
「ふぅ……まさかどこも満室になってるとはな」
あれから町を歩きまわり、ようやく空き部屋のある宿を見つける事ができた、今回ウッドモンキーの変異種、ワイバーンの変異種討伐に伴って多くの冒険者が出払っていた事もあり、あちこちの宿がほぼ満席の状態になっていた。
「だが何とか見つけられたのは本当に運が良かった」
それでも野宿を避けるために、その後も何度も別の宿に足を運んだ。そして結果的に部屋はオンボロだが、値段はそこそこ高い。微妙な宿ではあったが何とか泊まる先を見つける事ができた。
「女将さんの宿は開いてなかったな……。どこかに行ったのか?」
一番最初に訪れた場所は今まで泊まっていた女将さんのやっている宿だったのが、行ってみると入口に臨時休業の文字が書かれた紙が貼ってあった。
「そういえば動いてみるとか何とか言ってたな」
ふと女将さんが言っていた言葉を思い出していた。あの日私なりに動いてみるという旨の発言をしていた。それに加え、どうやらこの町のギルドマスターとも面識があるような素振りを見せていた。もしかすると本当に何かしらの行動を取っているのかもしれない。
「といっても俺たちができる事はすべてやった。後は報告するだけだ」
俺一人の力だけとは言い難いが、今回の討伐で何とかオークの群れ、それを統率する化け物、オークエンペラーを討伐する事ができた。統率者がいなくなったとなればオークたちのこれからの動きにも大きな影響が出るはずだ。
町がこれから先オークに襲われるという可能性がゼロになったわけではないが、オークエンペラーの指揮のもと、集団で一気に襲い掛かってくるという事はないだろう。
「だけどまさか本当にオークエンペラーがいるなんてな。さすがに予想できなかった」
今回の戦いでAランク認定されている魔物すら超えるとんでもない存在がいるという事を改めて知る事となった、何とか自分の魔法を駆使する事で撃破できたが、次にオークエンペラーのような化け物と相対した時に勝てるかと言われると自信はない。
もっと強くならなければ
そんな思いが胸を駆け巡る。
後一歩遅ければおそらくミラーナの救出は間に合わなかっただろう。となれば大切な幼馴染とこれから先二度と会えなくなるという最悪の展開になった可能性もある。
そして素早く救出に向かう事ができたのはレイシアがフォローしてくれたからである。彼女がいなければ簡単に森を進む事ができなかっただろうし、オークの群れ相手に足止めされて時間を大きくロスしていただろう
無事にオークエンペラーを撃破できたのも二人がいたからこそである。
「仲間……か」
ふと栄光の翼にいた時の事を思い出す。かつての栄光の翼、昔のフォールやステラは今のように、自分の実力をひけらかすような真似などしていなかった。
それこそ強くなるためにただひたすらがむしゃらに目の前の事に集中して様々な任務をこなしていた。だが成功が続き、いつかそれが慢心となり驕りとなった。そして彼らはいつの間にか弱者を蔑むような輩へと変貌してしまったのだ。
「力を持ちすぎるのも駄目……か」
フォールたちだけでなく、オークエンペラーにもそのふしがあった。人の言葉を理解し、それを話せる知能がある事には驚かされたが、だからこそ付け入る隙ができた。もしあの魔物が普通のオークのように知能が低い存在であれば、あのような奇襲の作戦を取る事ができなかっただろう。
ただ力任せに暴力を振るう戦い方を取られていたらまた違う展開になっていた可能性すらあったのだ。それも全滅という最悪の可能性すらありえた。
「力がないと守れないし、力がありすぎるとそれに溺れてしまう。難しいな」
この問いに対し俺は自分の答えをすぐに出す事はできなかった。だがそれでも今はミラーナと合流し、全員で無事に帰ってこれたという事を素直に喜ぶべきだろう。
「難しい事を考えるのはやめだ! とにかく明日だ! 明日ギルドに報告しに行かないといけないしな」
ともかくまずは自分ができる事をやるべきだ。明日の報告に備え、俺はすぐに就寝する事にした、




