無能 〇〇と呼ばれる
100話まで後2話
ここまできたかぁって感じです
皆様ありがとうございます
「だはーやっと着いたぜ!」
俺とミラーナとレイシア、そしてギルドの男の四人で来た道を戻り森を抜け、無事に町にたどり着く事ができた。
「けど運が良かったわね。ほとんど魔物と遭遇しなかったし」
「オークエンペラーがウロウロしてたからね。みんな警戒して姿を消してたんだと思うよ」
帰りの道中は魔物と遭遇こそしたものの、その頻度はかなり少なかった。おそらく魔物たちもオークエンペラーという存在に畏怖し、襲われないようその姿を隠していたのだろう。
人社会とは別で魔物社会も大変なようだ。
「じゃあ俺はギルドに戻るぜ! オークの件もあるし、パーティーの奴らと合流しないといけねぇからな!」
男はそのままギルドに戻るようだ。自分以外のパーティーメンバーが無事に戻れたのか心配なのだろう。
「兄ちゃんたちは明日でもいいからギルドに来てくれ。あのオークたちの戦利品があれば信憑性も増すだろうし、報告しやすくなるからな」
「なら明日にしてもらっていいか? さすがに今日は疲れたからな」
「了解だ。それじゃあ明日来てくれ。今日は兄ちゃんたちのおかげで本当に助かったぜ。ありがとな!」
男はお礼の言葉を残して去っていった。
「さて……俺たちはどうする? 俺たちもギルドに報告しに行く?」
「私は騎士団が借りている宿に戻るわ。報告しないといけない事がたくさんあるから」
「それじゃ私は適当に店探して食事してこようかな。確認したい事もあるしね」
彼女たちもどうやらすべき事が残っているようで一旦解散となった。俺もオークエンペラーとの戦いでかなり消耗してしまっている。可能ならすぐにでも宿に戻ってゆっくり体を休めたい状態だ。
ギルドへの報告は明日すればいいだろう。
「あっそうだ。ヒューゴ、これを渡しておくよ」
レイシアが懐から小さな箱を取り出し、それを俺に手渡してきた。
「これってアイテムボックス!?」
「これは君が持っているのが一番いいと思うから。お金は別で私が持ってるしさ」
「いいのか?」
「まぁ預けるだけだしね。やる事が終わったら返してくれたらいいよ」
アイテムボックスの中にはオークエンペラーだけでなくオークナイトやメイジ、ジェネラルの亡骸も入っている。オークエンペラーを倒したのは俺だが、他のオークたちを倒したのはレイシアだ。それらの素材の所有権は当然彼女にある。
(信用されてるんだろうな)
アイテムボックスを俺に預けるという行為。普通に考えたらこの行為は彼女にとって損でしかない。俺が黙って素材を売り払って逃げ出そうものなら彼女は大損だ。最もそんな事をするつもりは毛頭ないのだが。
「それじゃまた明日。髪色染めるのも忘れないようにね」
そう言い残しレイシアが手を振りながらその場を去っていった。おっとそういえば髪色を染めるのを忘れていた。魔の森に長い時間潜っていたため、俺の髪色は気づかぬうちに元の黒色に戻っていた。
無事に帰ってこれたとはいえ今の俺はお尋ね者。せっかくオークエンペラーを退治したのにここで捕まってしまえばそれが無駄になってしまう。
忘れないうちに染めておこう。
「じゃあヒューゴ。私も戻るわね」
ミラーナも一度騎士団が宿泊している宿に戻るため歩を進めようとする。
「ヒューゴ!」
俺の名を呼んだかと思うとくるりと振り返り俺の方をじっと見つめてくる。
「本当にありがとう……。私を助けてくれて……。ヒューゴ……いやヒュー君は今でも私にとって最高の"英雄"だよ!」
突然の告白、突然の笑顔。耳が、目が彼女の声を、表情を捉えて離さない。それを聞いた、それを見た俺は完全に彼女に魅了されてしまっていた。
「また明日ね!」
彼女もまたそう言い残し、その場を去っていった。
「ったく人の気も知らないで」
今の自分はどんな顔をしているだろう。驚きの顔、喜びの顔、呆れの顔、どれが今の自分の顔なのか自分ですら分からない状態であった。
「さて、俺も休むとするか」
そんな顔を隠すためにも急いで個室に行かなければ。俺は宿を探す事にした。




