無能 謝る
ひと段落つきましたが別の課題が……
どうなるやら
「うわぁ…………まさか本当にいたとはね……」
あれから言い争う二人をなだめ、改めて俺はレイシアに状況を説明した。そして戦いの中でオークエンペラーを倒したことも。
「ごめんレイシア。君との契約。守れなくなった」
彼女が俺に力を貸してくれたのは見返りとして、オークエンペラーと一対一で戦える状況を提供するという契約があったからだ。ところがそのオークエンペラーは俺が倒してしまった。これは明らかな契約違反。彼女に何を言われたとしても俺が悪いという事に変わりはない。
「契約ってどういう事?」
「そうかミラーナには言ってなかったな」
そしてミラーナには離れ離れになってから今までの行動の経緯を説明した。
「私のために……」
それを聞いたミラーナはうっと気まずそうに口ごもる。そもそも事の発端は自分がピンチに陥ったからだ。自分がオークエンペラーに遅れを取らなければこのような事にはならなかったのだから。
「そっか……。倒されちゃったんだね」
「本当にごめん! ミラーナを助けるためにはこうするしかなかったんだ! オークエンペラーの亡骸はもちろん提供するし、取れた素材も全部提供する! 何とかそれで手を打ってくれないか?」
俺は謝罪の言葉を発しお辞儀する。結果はどうであれ契約を反故にしたのは俺だ。その責任は取らないといけないだろう。
「ヒューゴは悪くない! 悪いのは私! 責任は私が取ります! だから彼の事は!」
続けざまにミラーナもお辞儀をする。彼女の事だ。自分が助けられた事に負い目を感じているのだろう。
「ん。いいよ別に」
「だよな。それだけじゃ……」
「私にできる事なら何でも……」
「「ってえ?」」
今彼女は何と言った? 聞き間違いかと思った俺とミラーナは思わず声を揃えて同じ言葉を出す。
「そもそも先に行けって言ったのは私だしね。それにいくら相手がオークエンペラーだったとしても君ならもしかすると倒してしまうんじゃないかって思ってたし」
両手を頭の後ろで組ませ、けろっとした表情を浮かべている。その顔は本当に何も気にしていないという顔だ。
「じゃあ……」
「"契約"はあくまで保留。それも利子付き。私にとっては悪くない条件だったからね」
「レイシア……」
そういえば彼女から先に行けと言われた時に、そんな会話をした記憶がある。まさかここに来てそれが生きてくるとは。
「まぁ大きい貸しができたって事にしておくよ。オークエンペラーとやりあえる騎士様とそれを倒してしまえる君に恩が売れたんだ。私としても大儲けだしね」
そういいレイシアは満足げに笑みを浮かべる。後から何を請求されるかを考えると正直怖い部分もあるが、何はともあれこれで契約の件に関しては一旦保留にできそうだ。
「だからオークエンペラーの素材も別にいらないよ。というよりこれは君が持つべきものだしね。これで当初の予定通り"討伐の証"を手に入れられたんじゃないかな?」
確かに。レイシアの言う通り、オークエンペラーの亡骸があれば、今回のオークの群れ騒動を立証する貴重な証拠となる。それに加え、魔の森にいた討伐隊の面々もオークたちと遭遇している。彼らの証言がそこに加わればギルドも無視できないだろう。
そしてそれの解決に貢献したとなれば……。
「おーーーい! 大丈夫か! 兄ちゃんたち!」
遠くから声が聞こえる。この声は先ほど救出した討伐隊に加わっていたギルドの男の声だ。
「あの騎士さんたちは先に帰らせたぜって何だこりゃ!」
やってきた男はオークエンペラーの姿を見て思わず驚きの声を上げる。確かに普通のオークと違う、この個体を見れば誰でも驚くだろう。
だがギルドの男が来てくれたのは好都合だ。これでキッチリと今回の騒動の説明ができる。となればギルドでも貴重な証言者となってくれるだろう。
俺はギルドの男にこれまでの状況を話す事にした。




