無能 一息つく
あっさりしすぎな気もしたけどどうでしたか?
スカッとして頂ければ良かったのですが
「はぁはぁ……やったの……か?」
オークエンペラーが倒れこんだのを見て、俺の膝がガクッと崩れ落ちる。正直体力も魔力も限界に近い状態であった。いくら魔法で相手のステータスを大きく下げられるとは言っても、俺自身が強くなるわけではないのだ。
ただの魔物相手ならともかく相手はオークエンペラー、Aランク相当の強さ認定されているオークジェネラルすら上回る戦闘力を持った化け物。そんな魔物が相手となればさすがに余裕で撃破とまではいかなかった。
「だが……これで……」
「ヒュー君!」
座り込んでいた俺の元にミラーナが駆け寄ってくる。彼女もかなりの体力を消耗しているはずなのだが、先ほど飲んだ回復薬が効き始めているのか、歩けるくらいには回復しているようだ。
「ヒューぐん! ヒューぐん!」
ミラーナが俺の胸に飛び込んできたかと思うとすがりつき、泣きながら自分の名前を呼んでくる。
「よがっだ! よがっだよう!」
泣く彼女の頭をそっと撫でる。"ヒュー君" 呼びといい昔を思い出すな。迷子になったり、転んだりした時に昔のミラーナは割とよく泣いていた記憶がある。
その時もこうして泣きながらしがみつかれた記憶がある。あやすときは今と同じように、泣き止むまで思う存分涙を流させずっと頭を撫で続けたものだ。
「むかじがら無茶ばかりずるんだもん! ヒュー君が死んじゃったら私!」
「ごめんな。でもあいつを倒すためにはああするしか」
「ゆるざない! わたじが良いというまでこのじぜいで!」
再会した時も似たような台詞を聞いたな。まぁこのまま彼女の気が済むまで……
「あ…………取り込み中だった……かな?」
どこからか声をかけられたため、その方向に顔を向ける。すると一人の女性の姿が目に映った。先ほどまで行動を共にしていた女性。オークの群れと遭遇した時に気を利かせ、自分を先に行かしてくれた女性だった。
「急いで駆けつけたけど……お邪魔だったようだね」
そこには苦笑いしながら頬をかいているレイシアの姿があった。
「……いつから?」
「ヒュー君が死んじゃったらって所くらいかな?」
その台詞を聞いたミラーナが突然ばっと俺の体を手でぐいと押し、目をぬぐう。目こそまだ赤いが涙を流してはいなかった。
「違うわよ!」
「えっと……」
「違うから!」
ミラーナがキッと目でレイシアを睨みつけている。さすがの彼女も他人の前であの姿を見せる事に対し羞恥心があったのだろう。目だけでなく顔も真っ赤になっている。
「忘れなさい!」
「えっ?」
「あなたは何も知らないし見ていない! いいわね?」
必死に訴えかけてくるミラーナを見て、レイシアはあごに手を添えうーんと考え込む。そして何か閃いたのかハッとした表情を浮かべる。
「そうか! 分かったよ。私はあの美人女性騎士様が幼馴染君の前で大泣きした事も、甘えて抱きついてたのも見てないし知りもしない。これでいいかな?」
「良くないわよ!」
「しかしあのクールな騎士様にそんな一面が。これは同じ騎士団の人たちに高値で売れそうな」
「売れないわよ!」
(はは……何か一気に気が抜けたな)
言い争う二人の姿を見て、俺は知らぬ間にほっと一息をついていた。




