無能 奮闘する part7
「ホザクナァァァ! ゴミの分際でぇぇ!」
オークエンペラーの怒りがついに限界に達したようだ。これまで以上に激しい怒気を込め、斬られた方と反対の腕で殴りかかってくる。
「もうお前の攻撃は見切った! 当たらねぇよ!」
これまでの戦いで相手の攻撃パターンはほぼ頭に叩き込んでいる。先ほどは激しい威圧にこそ気圧されたが、油断さえしなければ全て対処できる。殴りかかりの一撃を俺は剣ではじき返し、すぐさまお返しと言わんばかりに一閃を叩き込む。
「ブギャァァァ!」
激しい痛みが腕に襲い掛かり、オークエンペラーがたまらず悲鳴を上げる。こちらの腕も切断するつもりで斬りつけたのが、筋を切るまでにしか至らなかった。弱体化の魔法で防御力を下げてもなお、オークエンペラーの皮膚はそれだけ丈夫なのだろう。
「だが筋は切った! お前の両腕、もう使い物にならないだろう」
「ホザクナァァァ! ニンゲン風情が!」
今度はオークエンペラーが大きく息を吸い込み始める。おそらく咆哮と共に衝撃波を発生させるあの技を放つつもりなのだろう。
「それも見た! もう撃たせるか!」
息を吸い込む動作の隙をつき、今度は手に持っていた剣をオークエンペラーの喉に向かって突き刺す。
「うぉぉぉぉ!」
腕と同様、防御力を低下させているにも関わらず硬い。だがそれでも剣で貫けるほどには柔らかくなっていた。大きく力を込め、グサリと喉を貫く一撃を放つ。
「ゴボォッ!」
たまらずオークエンペラーが大きく体を揺する。その反動で俺の体は剣ごと振り落とされるが、相手の喉に対して一撃を入れる事に成功した。
「ヴォ……ヴォノレ! グゾガァァ!」
再び咆哮を放とうとオークエンペラーが息を吸い込む。
「ゴボォォグァァァァァ!」
息を吸い込もうとしたオークエンペラーに痛みが襲う。喉を貫かれ、出血をしている状態で大きく息を吸おうとしたのだ。呼吸するだけでもつらい状況。そんな中咆哮を放つ事などできる訳がなかった。
「グッヴォォ! ヴァリエヌ! ヴィンゲンヴォドギニ! ゴノヴォレガァァ!」
両手の筋が切られてしまった事で斧を握れない。咆哮を叫ぼうにも喉をやられてしまった。一度こちらが不利になった時は戦えないメスの人間を巻き込む形での範囲攻撃を放つ事で状況を打破した。
殴り合いでは勝てない相手なのに、自分の持ち技がことごとく潰されてしまった。
(ヴァダダ! ヴァダオヴァリジャナイ!)
両手と喉はやられたが、まだ動く部位はある。
(ヴィマハダイギャグダ! タイギャクジデ カイフクズレバ!)
オークエンペラーは唯一まともに動く足を使い、その場から逃走を図る。大ダメージを受けはしたが自分の治癒力ならそれを治す事は可能だ。
相応の時間がかかるだろうし、再起できるのもいつになるかは分からない。それでも逃走さえできればまだ未来はあるはずだ。
「逃がす訳ないだろ!」
だがそれをむざむざ見逃すわけがない。おそらく本来なら逃げ足も相当なものだろうが、速度低下の魔法もかけている。逃げだそうとしたオークエンペラーの背中に向かって、俺は剣を突き立てる。
「ブギャァァ!」
「うぉぉぉぉ!」
さらに深く、もっと奥深くへと剣を差し込む。
「これで! 終わりだぁ!」
そして突き刺した剣を思い切り横に振るい、オークエンペラーの体を抉り取るようにして切り裂いた。
「グゴァァァ!」
激しい叫び声が辺り一帯に響き渡る。ただしそれは戦闘を繰り広げる前に聞いた威圧ある雄たけびではなく、痛みによる悲鳴であった。
「ゴノオレガァァァ!」
ドスンとオークエンペラーの膝が地面につく。そしてそのままオークエンペラーはうつ伏せに倒れこむ。
「グゾォォ……グゾォォ!」
悲鳴が少しずつ小さくなっていく。そして最後には何も言葉を発さなくなった。
最悪の魔物、オークエンペラーはこうしてその生涯を終える事となった。
ついに決着!
ちょっとあっけなかったですかね?
スカッと爽快感感じて頂ければいいのですが……




