無能 驚愕される
おはようございます
今日早めの更新になります
お休み終わってしまいましたがストックある分毎日投稿しますのでよろしくお願いします。
「一体どういうことなの? 防御力だけじゃなくてスピードも明らかに落ちてた! 一体どういう事なのよ!?」
グレートボアを倒したと思ったら美人幼馴染に俺は詰め寄られていた。
「ただの魔法だって……。俺以外にもできるでしょ」
「できないわよ! 確かにステータスを下げる魔法を使える人はあなた以外にも何人か見た事はあるわ。でもあれだけ効果がある魔法を使う人なんて初めてよ!」
顔目前まで迫ってきているため、密着する形となってしまっている。女性特有の良い匂いが鼻をくすぐる。このままでは理性が持ちそうにない。
「つまり、あれがヒューゴにとって当たり前だったと今日まで思っていたって事でいいのね?」
「はい、その通りでございます」
俺は何とか理性を保ちながらも、何とかミラーナと距離を取り説得に成功した。幼馴染という事もあってかミラーナは俺に対しグイグイと攻めの姿勢を見せてくる。昔と違い目の前の幼馴染は美しい女性に成長している。正直目前に顔が迫るだけでドキリとしてしまうくらいだ。
「まさかヒューゴの魔法が他の人たちのより強力な弱体効果があるなんて想像もしなかったわ……。あなたと一緒に行動していれば自分がすごく強くなったと勘違いしてしまってもなんらおかしくはないわ」
ミラーナが言うには俺の魔法は世間一般のものと比べても遥かに強烈な効果を持っているようだ彼女自身もまさかグレートボアを一太刀で倒せるようになるとは夢にも思っていなかったようで、俺の魔法による弱体化の効果に驚かざるを得なかったようだ。
「それで……他にもまだ隠し持ってる事はないわよね? ヒューゴって昔から村の大人たちをびっくりさせるような事ばかりしてたし」
ジロッと怪訝の目を向けてくる。このままだと彼女に怒られてばかりになりそうだ。村にいた時はよくあれやこれややんちゃをして大人たちに良く怒られたものだ。とはいえ自分の考えた案が村の発展に貢献した事も何度かあり、一部の人には泣きつかれながら良い案を出してくれと言われた事もあった。懐かしい記憶だ。
そしてその記憶については彼女も把握している。同じ村に住んでいた事もある彼女に隠し事は通用しないだろう。それならばいっその事ここで全部ばらしてしまい怒られるのは一回だけにしよう。そう決意した俺は自分の当たり前を説明する事にした。
「探索の準備は?」
「無能と呼ばれた俺の仕事でございます」
「荷物持ちは?」
「無能と呼ばれた俺の仕事でございま」
「倒した魔物の素材の解体は?」
「無能と呼ばれた俺の仕事で」
「戦闘中の仕事は?」
「無能な俺が魔物を引き付ける盾になりつつ、弱体化の魔法を魔物に放ちます。無能だから盾役になるのが当たり前と言われてました」
「素材の換金や宿の手配は?」
「無能と呼ばれた俺の仕事。しかし換金の分け前は無し。外に放り出され野宿させられる事も」
「何で文句を言わないのよ! っていうかその気持ち悪い敬語をやめなさい!」
怒られるのを承知で話したため、少しでも怒りを抑えようと敬語で話していたのだがかえって気味悪がられてしまったようだ。
「それにあいつら本当に人間なの? 実は人間の皮を被った魔物って可能性はないの? はっきり言って聞いてるだけで気分が悪くなって仕方がないんだけど」
フォールたちのパーティー、栄光の翼での俺の役割を聞いた彼女は怒りに震えていた。仲間に対して、いやそもそも人として彼らの行いに対し目の前の幼馴染は怒ってくれているのだ。
「昔はあんなんじゃなかったんだけどなぁ……」
「追放宣言されたっていうのに何を呑気な事を言ってるのよ……。でも彼らが有頂天になるのも無理がないのかもしれないわね。あなたと一緒にいたんだもの。自分たちの実力以上の成果を出せてさぞ満足してるでしょうね」
グレートボアとの戦いでミラーナは俺の弱体魔法が通常より強力な効果を持っているという事を理解し説明してくれた。
「そんな中、あいつらはあなたを無能と判断し追放した。本当に馬鹿だわ。そのせいで今まで簡単に倒せた魔物相手に苦戦する事になるでしょうね」
もし彼女の言ってる事が本当ならば、フォールたちは俺の魔法のおかげで駆け上がれた事になる。しかし彼らは栄光の翼として一躍注目を浴びる事になったのは自分たちの力あってこそだと完全に思い込んでいる。ミラーナはそれを確信しているからかクスクスと笑っている。
「ミラーナの話が本当なら、俺もスカッとするけどさ。そんな都合よく俺の魔法が実は優秀でしたって事になるかな?」
「私が言うんだから間違いないわよ。ヒューゴがフォローしてくれたからこそグレートボアを簡単に倒せたんだから」
「それだといいんだけど」
「もう! なら速く実践で証明しないとね。さぁ行くわよ」
疑心暗鬼な俺とは裏腹に自身に満ち溢れたミラーナの後に続くように二人で森の奥に入る事となった。