無能 奮闘する part2
ポンッとテンポ良くいきます
「グブルォォォ! 下等生物のニンゲン風情が! 意気がるなよ!」
雄たけびを上げながらオークエンペラーが斧を手に持ち構えを取る。どうやらさきほどの攻撃で完全に本気になったようだ。
「グブォォォォ!」
力を込めると同時に、オークエンペラーは闘気を纏っていく。
(ふぅ……)
だがそれを前にしても何故か俺は冷静でいられた。最初は遠く離れていてる状態であったにも関わらず、目の前の魔物の叫び声は威圧を感じるほど圧倒的だった。
しかし実際にその魔物を前にしてその光景を目にしても恐怖を感じない。それどころか闘争心がたぎってくる。それほどまでにこの魔物に怒りを覚えている。
「ヒューゴ……」
それだけこの幼馴染が自分にとって大切な存在であると改めて実感する。彼女を守るためなら例え敵がオークエンペラーだろうが何だろうが引くわけにはいかないのだ。
「イクゾ!」
オークエンペラーが再び大きな斧を振るって攻撃を放ってくる。闘気を纏っている影響か、先ほどよりも大きな力を感じる。まともに喰らえば俺の体くらいなら一瞬にして粉々にしてしまえるだろう。
「当たるか!」
だが俺にはステータスダウンの魔法がある。自分で使っている時は特に何も思わなかったが、幼馴染から指摘を受けた事で初めて自分の力が規格外である事を知った。
グレートボアを筆頭にワイルドベアやキラータイガー、オークジェネラルですら簡単に倒せるくらい弱体化してしまう魔法。恐るべき力だが、当然格上にも通用する。
例えそれがオークエンペラーであろうと。
(ナゼダ! ナゼオレの攻撃が当たらない!)
オークエンペラーは今のこの状況に対して困惑を覚えていた。
(ナゼこのニンゲンはこれほどまでに速い? いやナゼオレの攻撃が遅くなるのだ!?)
目の前の人間はそれほど素早い動きをしていない。余裕で目で捉えられるし、大振りの攻撃であっても簡単に当てられる。自分が持つ火力の高さは他人の誰より分かっている。当てればこの程度の敵など一撃で木端微塵にして粉砕できる。本来ならこの程度の相手など数秒もあれば一瞬で片づけられるはずだった。
(ナノニナゼダ!? ドウシテオレ様が苦戦している!?)
それでいて相手の攻撃の一発一発が重い。普通の人間の攻撃程度ならば防御せずとも自身の皮膚で簡単に防ぐ事ができる。現に、さきほど拳で砕いた男が使っていた魔法、あまりにも貧弱だったため防御の姿勢を取る事が逆に無駄なくらいだった。
それに比べ、目の前で休んでいる人間の女の技は、防御を必要とするくらいの威力を持っていた。とはいえ防御さえすれば余裕で受け切れるくらいのダメージしか自身の体には入らなかった。
(ドウシテこれほどまでに一撃がオモイ!?)
だが目の前の人間の男は違う。他二人と違い、武器もない、魔法もない、ただの素手だ。体格もオークと比べるとカスみたいもの。所詮ただの人間だ。
にも関わらず、殴られると激しい痛みが襲い掛かってくる。突如現れ不意打ちを決められた時は思わず倒れこんでしまうほどだった。
(アリエヌ! アリエヌゾ!)
自分の攻撃は通用しないのに一方的にこちらばかりがなぶられる。それも武器も魔法も使わないただの人間相手にだ。オークを統べる者として君臨してから今日まで。これほどの屈辱を味わった事など生涯一度もない。
「グブォァァァ! アリエヌゾォォォォ!」
自身のプライドを傷つけられた怒りからか、さらに怒気を込めた威圧を放つ。それは人間どころか、同種族のオークたち、それもジェネラルですら怯えかねない激しいものだった。
(くっ! そう簡単にはいかないか!)
オークエンペラーの放った激しい威圧にのまれそうになる。どうやらこれまでの攻防で相手の逆鱗に完全に触れてしまったようだ。
(だけど!)
負ける訳にはいかない。例えどれだけ威圧を放とうが、倒さなければならない相手に変わりはない。ここまで順調にダメージを与えられているが、様子を見るにどうやらこれからが本番のようだ。
「矮小なゴミムシが! このオレサマを本気にさせた事後悔させてくれる!」




