無能 先行する part10
とうとう佳境です
次回から戦闘シーンかけそうです
「はぁはぁ……」
俺は全速力で激しい雄たけびが起こった場所に向かって、懸命に走っていた。雄たけびと同時に襲い掛かってきた重圧。オークジェネラルですら大した事がないようにまで思える威圧。
「くそっ!」
ミラーナは強い。それもフォールたち栄光の翼のメンバーが全員でかかったとしても打ち破れるくらいの実力を持っているのは間違いない。
それに加え、自分が弱体魔法を使っていたとはいえ、ワイルドベアやキラータイガーと言った魔物を簡単に切り倒すほどの強さも見せた。おそらく彼女なら自分の魔法抜きでもBランク相当の魔物、それどころかAランク相当の魔物相手であっても突破できるだろう。
(こんな事なら無理にでも合流しておけば!)
だが今回ばかりは相手が悪い。オークジェネラルもかなりの強敵であるが、それ以上の強さを持つ魔物がいるかもしれない。この森は今まさにそんな状況となっている。
まさかそんな森の中でただ一人、囮を引き受け他の者たちを逃がすために戦っているなど考えもしなかった。自分の読みは完全に甘かった。そのせいで彼女の身に危険が迫っているかもしれない。
(俺は馬鹿だ! 彼女に甘えてばかりいて……本当に大馬鹿野郎だ!)
彼女が一人残っている事もそうだが、オークジェネラル以上の化け物など存在しないだろうと心のどこかで僅かながらも思っていた。彼女なら最悪一人でも何とかなる。実力こそ疑ってはいないが、ある意味それに対して自分はどこか甘えを覚えていたのだ。
(速く! もっと速く!)
考えが杞憂であればどれだけ良かったか。そんな思いが胸を巡る。結果的にあらゆる事が最悪の方向に転がりつつある。だがまだだ。まだ望みはある。まだ彼女が、"あの咆哮の主"と対峙してない可能性も十分ある。
それならばまだ間に合う。俺はさらに足に力を込め、限界以上の力を振り絞りながら、目的地を目掛けて走る。
(近い!)
徐々に嫌な気配が大きくなってくる。もうすぐだ。もうすぐ目的地に
ドゴォォォン
何かがぶつかったような激しい音が俺の耳に入ってくる。ただの音ではない。間違いない。これは戦闘をしている音だ。
(っ!?)
その予感は的中した。一人の人間と一人の魔物がそれぞれ向き合っている。そして魔物の方が手に持っている大きな斧を振るって攻撃を放ち、相手を大きく吹き飛ばしていた。そして吹き飛ばした相手を追撃するためにノシノシとゆっくり歩を進めていた。
ブチッ!
その光景を見た事で俺の頭の中の何かが切れる。考えるよりも先に手が、足が、体全体が動いていた。
「俺の大切な幼馴染に何してやがる! このクソオークが!」
追撃しようとしていたオークの前に体を割り込ませ、無意識うちに相手の腹を目掛け、素手による一撃を大きく叩き込む。
「グブォォォ!」
呻き声を上げながら魔物は倒れこむが、それを視界に捉えている余裕などない。今は魔物に襲われていた人物の事で頭がいっぱいになっている。
一人の女性。大切な幼馴染。襲われるまで後一歩の状況まで追い込まれていた彼女を、何とか守る事ができたのだから。




