無能 先行する part1
お待たせしました
ようやく主人公復活です
お楽しみください
と言いたいところなのですが申し訳ありません……
諸事情により明日以降の月~水まで更新ができなくなりそうです……
代わりに別日程で一日二話投稿するようにしますので何卒ご了承を!
こっそりと魔の森に入る。これが俺とレイシア、一日かけて考え、お互い話し合った上で決めた案だ。
あれから食事を終えた俺たちは、何とか衛兵たちの目を掻い潜りつつ町を回り、様々な情報を仕入れる事に専念した。
そしてその中で、明日討伐隊が結成され、ウッドモンキーの変異種、ワイバーンの変異種のそれぞれを討伐しに行く事が決まったという情報を手に入れる事ができた。そして人目のつかぬよう一晩それぞれ宿でひっそりと過ごして次の日を迎えたのだ。
ミラーナがどちらの討伐隊に参加するかまでは分からなかったが、彼女の実力を考えると、どちらかの討伐隊に参加する可能性は高い。となればオークの群れの情報を持っているため、彼女も魔の森側、つまりウッドモンキーの変異種討伐の隊に加わるだろうと予測し、自分たちも魔の森に向かう事に決めた。
「けどやっぱり討伐隊に参加した方がいいんじゃないか? レイシアから貰ったこれもあるし」
そう言いながら俺は液体の入った瓶を眺めていた。この液体は、振りかける事で色を一時的に変色させる効果を持っていた。これを頭にかける事で染料として使う事ができ、髪の色を別の色に染める事ができる。これを使って、今俺の髪色は茶色に染めている。
そうする事で町中を堂々と歩いていても衛兵に声をかけられる事が無くなったのだ。人の髪色は大きな特徴になるのでそれを変えてしまえば、案外バレなくなる。レイシアにそう言われ、使用する事となった。
制限時間があるとはいえこれを使い、髪色を変える事で相手を誤魔化す事ができる。その状態で偽名を名乗れば討伐隊に参加して加勢する事も可能なのではないか。そう考えた上での発言だった。
「それを使ったからといって正体がバレなくなる訳じゃないからね。あくまで髪色を変えるだけだし、時間制限もある。もし討伐隊の中にヒューゴを知っている人がいたらすぐにバレる可能性もあるからやめた方が良いと思うよ」
レイシアからは否定の言葉を投げかけられる。確かに彼女の言う通り、この染色液だけでは自分の正体を隠す事はできないだろう。いっその事顔も隠せるように仮面などを買う事も考えたがそれはそれで目立ってしまう。
そこで討伐隊と合流する事はあきらめ、彼らとは別ルートでこっそり魔の森に潜入。危険な魔物を先に退治しながらミラーナと合流。あわよくばオークたちを倒すなりして町への被害を最小限に抑えようと考えたのだ。最もミラーナと合流するとなれば、彼女がこちらの討伐隊に参加していないといけないのだが。
「うんうん。オークエンペラーはいるか分からないけどジェネラルならいっぱいいると思うし。彼らをたくさん倒せばヒューゴの事も皆認めてくれるんじゃないかな? それで幼馴染の彼女とも再会してめでたくハッピーってわけだ」
レイシアがまるでこちらの心を読んだかのように話しかけてくる。確かに大量のオーク、それもナイトやメイジ、ジェネラルなどのオーク変異種を討伐したとなれば、それ相応の評価をもらえる事が期待できる。そうすればミラーナと栄光の翼の者たちの賭けに勝利できる可能性もある。
「でも優先は町の安全と幼馴染彼女との合流……だよね?」
こちらの考えを全て見透かしてやったぞ。どうだと言わんばかりの表情をレイシアが浮かべる。その姿は子どもがはしゃぐそれと同じだ。顔が幼く見える事もあって本当に少女が喜んでいるように見えなくもない。
「えっ? いい年して子どもみたいにはしゃぐなって? 分かった。気を付けるね」
こえーよ。どれだけ心の中を読もうとしてくるのか。このまま会話していてもこちらが一方的に弄られるだけだ。
「冗談はここまでにして、そろそろいこっか。俺を弄るんじゃねぇって怒られそうだし」
だからこえーよ。とはいえこれ以上、弄られるのもごめんだ。レイシアの言葉に従い、討伐隊より先に魔の森に入る事にした。
「いやぁ、何か嫌な雰囲気出てるね」
「オークエンペラーがいるかもしれない。そう思っているから余計にそう感じるのかもしれないな」
魔の森。今日だけでなく既に何度も足を踏み入れている場所なのだが、いつもとは雰囲気が違う。何かが起ころうとしている予兆の前触れとでもいうべきか、いつも以上に辺り一帯がシーンとしていた。
「でも油断は禁物だよ」
「ああ、オークが群れて行動している影響で他の魔物たちが生息地から離れて活動しているからな」
本来、強力な魔物ほど森の奥深くで活動しているというのが魔の森の特徴なのだが、オークが群れて活動している影響か、魔物たちが住処から追い出されるという事態が発生している。そのため、本来ならもっと奥に行かないと出会わない魔物とすぐに出会う可能性がある。
中堅どころならともかくBランク相当の魔物は森に入ってすぐ出ようものなら慌てふためく事間違いなしだ。
「討伐隊の人たちがいきなり強力な魔物と出くわすかもしれない。もしミラーナがいるなら大丈夫かもしれないけど、彼らの安全のためにもできるだけ危険な魔物を討伐しておこう」
討伐隊が入った後でこっそり後を追う事も考えたのだが、その場合彼らはいきなり予想外の敵と出くわす可能性がある。、混乱しながらの戦闘になり、最悪負傷者がでるかもしれない。
可能性をゼロにこそできないが、自分たちが先行して強力な魔物を倒しておけばその可能性はぐっと減るだろう。
「肩慣らしにもなるしちょうどいいかもね」
レイシアも討伐には乗り気のようだ。彼女はミノタウロスですら一人で倒せるほどの実力を持っている。彼女がいればそう易々と魔物相手に遅れは取らないだろう。
「でもいいの? 魔物の素材もらっちゃっても?」
今回、俺は前作の探索の時に持ってきていた魔法のリュックは持ってこなかった。今回の目的は稼ぎではなく討伐、しかも相手は強敵ばかり。少しでも戦いやすくするために邪魔になりそうなものはすべて置いてきたのだ。
「今回の契約、"果たせる"かどうか分からないからな。その代わりに受け取っておいてくれ」
「そっか。じゃあ遠慮なく貰っておこうかな」
レイシアは俺とは違い、小さい箱の形をしたアイテムボックスを所持している。見た目によらず多くの物を出し入れできる優れもので、冒険者にとっては必需品だ。だがアイテムボックスは貴重な品であるため、その分かなり高額である。まあ彼女くらいの実力があればアイテムボックスを買うくらいの収入を得るのは容易いだろう。
「よし、それじゃあ先に進もう」
こうして俺とレイシアは討伐隊が来るよりも先に魔の森の探索を始める事にした。




