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【3章完結!】  ステータスダウンしかできない無能デバッファー。追放宣告を受けてしまったが実は最強デバッファーでした。  作者: 追放されるけど何だかんだでハッピーなのが好きな人
一章 無能と呼ばれる男
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討伐隊 任務開始 part11

驕れる者久しからず……

昔の人って本当にうまい言葉考えますよね

少しはいい薬になればいいのですが


「何とか……倒せたわね」


ほっと息をつくミラーナ。すると無自覚の内にふらっと自身の体がふらついたため、咄嗟に剣を地面に突き刺し杖の代わりにして姿勢を保つ。


相手はオークジェネラル、それも二体同時に相手した事で想像以上に自身の体力を消耗していた。


(とはいえこれで彼らが逃げるまでの時間を稼げたはず)


本当なら討伐隊の者たちが逃げるだけの時間を稼げば良かったのだが、戦いの中で二体だけなら何とか倒せる。そう判断したミラーナは時間稼ぎするための戦いではなく、相手を倒すための戦いをする事にした。


相手は魔物。それも群れを作って行動しているかもしれないのだ。倒せる機会があるならさっさと倒しておいた方がいいとミラーナは考えたのだ。


「長居は無用です。私たちも退却しましょう」


先ほどから独り言をブツブツ呟いているウィズ。先ほどまで繰り広げられていた戦闘に目を奪われていたローナル。その二人に対し退却するよう言葉を投げかける。


「た……退却ですの?」

「今回の討伐は誰がどう見ても失敗。そもそもウッドモンキーの変異種など初めからいないので失敗というのも変かもしれませんが」「初めからいない!? 一体あなたは何を言っていますの?」


ミラーナの言葉にローナルは驚きの声を上げる。ウッドモンキー変異種の討伐。今回騎士団からは自分を中心としたチームでそれに参加する事となり、彼女はチャンスが来たと思っていた。


指示も自分が担当。そこで活躍をすれば隊長であるヴァルトに成果を見せつける事ができる。そうすれば貴族令嬢の身分に恥じないそれ相応のポジションを騎士団内で手に入れるはず。そう考えたのだ。


「変異種の情報は虚偽だったという事です。それも報告したのはそちらにいる栄光の翼所属の 有 能 な方々だそうで」

「ウィズ様のパーティーが!? 一体どうして」

「彼らはAランクパーティーの一員。そんな彼らがとある日にウッドモンキーに苦戦したのです」


そうウィズたち栄光の翼はAランクパーティー。そんな彼らが本来であれば簡単に倒せるはずのウッドモンキー相手に大苦戦した事があったのだ。それもつい最近にだ。


「Aランクの自分たちがウッドモンキー相手に苦戦するわけない。ありえない。そう考えた彼らはこういう結論に至ったんです。"相手が変異種" だったから苦戦したのだと」

「なんて事……」

「本当の実力はAランクよりもっと下。そんな彼らをAランクまで届かせる事ができる人がいたの。最もその人はどこかのろくでもない方に嫌がらせを受けているようですが」


あの栄光の翼のメンバーが実は大した実力を持っていない。にわかに信じがたい話だが納得できる部分もあった。

今回の討伐隊の参加者の中で最もランクが高いのはウィズだ。本来ならランク相応の活躍をしているはずなのだが、魔の森に入ってからこれまでの戦闘で目立った活躍はしていなかった。


それどころか他の者たちから戦闘の邪魔とさえ言われていた記憶がある。これまでの光景とミラーナの証言。その二つが繋がろうとしていた。


「そ……そんな……それでは私は……」


相手の肩書ばかりに気を取られて本質を見抜けなかった。今回指揮を任されたにも関わらず、結果は他のメンバー全員が逃走する事になるという酷いものだった。これでは到底評価などされないだろう。


「……これでは私は!」


ただの道化ではないか。貴族令嬢たる自分は結局何の成果も出せなかったのだ。


「無駄話でしたね。早く合流しに」

「認めませんわ!」


退却しようとするミラーナに対し、キッと強い目で睨みつけるローナル。


「成果無しに退却。そんな恥ずかしい真似できるはずもありませんわ!」


頭でどれだけ理論づけても感情がそれを許さなかった。


「そうです! 私は天才! 天才たる私が成果を上げず敗走? ありえないのですよ!」


独り言を言っていたウィズも一体どこから話を聞いていたのか便乗するようにして声を上げる。


「例えウッドモンキーの変異種がいなくても、もっとすごい魔物を倒せば……」

「いい加減にしなさい!」


ついにミラーナの怒りの感情が限界に達し、怒声を飛ばす。


「成果を上げる? この森に来たのは危険な魔物を倒すため。あなたたちの評価を上げるためでも何でもないわ!」


未だ自分たちの現状を理解しようとせず、見栄ばかりはる二人の態度に我慢ができなくなったのだ。


「そんなに成果が欲しいのならどうぞご勝手に! 二人で仲良くなんでもすればいいわ! 好きにしなさい!」


相手をするだけ無駄。これ以上付き合う必要はない。そう判断しミラーナは二人を置いてその場から離れようとする。


「待……待ちなさい! まだ話は終わって」



ゾクリ



突然、背筋が凍るほど寒気を三人が襲う。


「ぐう!」

「な……なんですの……」


胸が締め付けられる。動悸が激しくなる。呼吸をするのが苦しくなる。とてつもない重圧に三人は押しつぶされそうになっていた。


「う……そ……まさか……本当に」


オークジェネラルを倒したミラーナでさえ恐怖を覚えてしまうほどの重圧。それほどの重圧を放てる存在。いるかどうか分からない。それでいて出会えば終わり。どうしようもない。当たってほしくない予想。


最悪の事態を知らせる鐘がミラーナの頭の中で鳴り響く。それと同時に何者かが歩く音なのかズシン、ズシンという音が少しずつ大きくなって耳に入ってくる。それは少しずつ確実に自分たちの元に近寄ってくる。


「本当に……いるなんて……」


ついにその主が三人の前に姿を見せる。


「グルォォォォ!」


咆哮と共に一体の魔物が姿を現した。


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