無能 幼馴染と話す
幼馴染とイチャイチャ!
ベタだけどいいよね!
次回はいよいよ戦闘回です!
「全く……昔から本当に鈍感なんだから!」
あれからしばらく時間が経ち、ミラーナもどうやら落ち着いたようだ。落ち着いたと思ったらこうして再び非難の言葉を浴びせてきたわけだが。
「いや……気づけって言われる方が難しいだろ」
「そんな事ない。私は一回見ただけであなたがヒューく……ヒューゴだって事がすぐに分かったわ。だって全然変わってないんだもん。目とか」
自分では気づかなかったがそれほどわかりやすい特徴なのだろうか。俺の目は髪色と同じ黒で村に住んでいた時は珍しいと言われた事もあったが、町に来てからは自分と同じような見た目をした人物を何度も見た事がある。
「そっか。でもやっぱり俺は気づけなかったよ。だってあのミラーナがこんな美人になってるだなんて……想像も出来なかったよ」
目の前の女性は同姓同名の別人ではなく、俺が知っている女性、ミラーナであった。ミラーナとの関係はいわゆる幼馴染で、かつて村で一緒に住んでいた時によく遊んでいた。
ミラーナの両親は既に他界しており、代わりに祖父と二人で生活していた。この祖父というのがまたとんでもない人で何でもかつては王国の騎士団長にまで昇りつめた事のある実力者だったらしい。
そんな祖父だが孫には弱く、俺ともよく遊んでくれた。遊びの中で簡単な剣術なども教わった事もあり、俺にとっては剣の師匠と呼んでもいい存在だ。
だがある日、王国の偉いさんからの呼び出しがあったとか何とかでミラーナと祖父は急遽、村から引っ越しをしないといけない状況になってしまった。ミラーナは泣いた。俺と離れたくないと大泣きし、俺の両親や彼女の祖父もどうしたものかと考え込んだ。
「おっきくなったら一緒に冒険してやるよ!」
見かねた俺は何とか泣き止ませようとこんな事を言った記憶がある、
「もし困った事あったら絶対俺が助けてやる! だから泣くな!」
我ながらませがきだったなと思う。だがこの言葉が彼女の心に響いたようで
「本当!? 絶対だよ! おっきくなったら一緒に冒険しようね! もちろん二人一緒に! 絶対だよ!」
「だったら私はおじいちゃんみたいな立派な騎士様になる! 騎士様になったらヒュー君の事助けてあげる! だからいつでも頼ってくれていいんだよ!」
いつの間にか泣いていた彼女は泣き止み、むしろ私を頼ってねと胸を張って宣言した。そうお互いに約束を交わし別れる事となったのだ。
それがまさかこんな形で再会する事になるとは夢にも思っていなかった。こうして幼馴染との再会に驚きながらもお互いが別れてから今日までに何をしていたのか昔の話をする事となった。
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「信じられない!! あいつらそんな事してたの!! 今すぐ連行してやろうかしら」
「ちょ……ミラーナ落ち着いて……」
俺たちは店主である女将さんから呼ばれ、作ってもらった昼食を一階で食べながら話をしていた。ギルドで見たおしとやかな態度はどこへいったのか、俺の話を聞いたミラーナは怒りに震えていた。
「大体、ヒューゴもヒューゴよ! 何であんな奴らと今まで行動してたのよ! あなたなら何とでもできたでしょう!?」
「仕方ないだろ……。俺だってこんな事になるとは思ってもいなかったんだから……」
昔の俺を知っているミラーナからすれば俺が彼らの好きにされていた事に納得できないようだ。ともあれ自分の心配をしてくれている人物がいたという事実は俺にとって非常にありがたい事であった。
「それよりもあんな約束してこれからどうするんだよ! 一週間の監視って言っても普通にしてるだけじゃあいつら絶対に納得しないぞ! それどころかギルドとグルになって俺をはめようとしてくるはずだ」
だからこそ彼女がフォールたちにした取引に納得できずにいた。このまま一週間なにもせず黙っていれば、おそらく何をしていなかったとしても彼らは何かしらの理由をつけて自分たちを潰そうとするはずだ。そうなればミラーナの全てが彼らの物になってしまう。いくら無能と呼ばれようと再会した幼馴染をむざむざ彼らに引き渡すつもりなどない。
「決まってるじゃない。彼らが何も言えないくらいの活躍をすればいい。そうすればギルドとしても動かざるを得ないはずよ」
俺の質問に対し彼女は自慢げに答える。
「そうと決まれば早速出発しましょう。あなたの実力を見たいし、私の実力も気になるでしょ?」
こうして俺は彼女と二人で出かける事となった。