幼馴染 ため息をつく
幼馴染ことミラーナ回です
主人公と別れてからの別視点
しばらく続くと思います
「はぁ……何やってるんだろ私」
部屋でただ一人。ぽつんとベッドに座り込んでいるミラーナがボソリと呟く。
ヒューゴを領主の屋敷に侵入させるために、見張りの衛兵をその場から引き離す役割を引き受けたミラーナ。
まず彼女は衛兵たちに、喧嘩が起きているので仲裁に入ってくれないか、無論自分も同行すると言い彼らをその場から離れさせようとした。無論全くの大ウソだったのだが、あたかも本当に喧嘩が起こっているかのように見せかけるため、彼女なりにそれなりの演技はした
最初はここを離れる事はできないと衛兵たちもその申し出を拒否してきたのだが、負けじとこちらもお願いをする事で何とか引き受けて貰う事ができたのだ。
最も当の衛兵たちは、ミラーナという美女にお願いされたという事で鼻の下を伸ばし、下心で引き受けたのだが。とはいえ無事にその場から彼らを引き離し、無事にヒューゴを屋敷に侵入させるという目的を達成させる事ができた。
そこまでは良かったのだがその後に予期せぬ事が起こったのだ。
「まさか騎士団の人たちがもう来てたなんて……」
衛兵たちと歩いているとその先で何と自分と同じ騎士団所属の者たちと遭遇したのだ。しかも出鱈目で言った喧嘩が実際に別の現場で起こっており、それの仲裁をちょうど終え、一息つこうとしていた所だったのだという。
「それにヴァルト隊長まで来ているなんて……誰が予想できるのよ!」
それに加えあの場にはヴァルトまでいた。斧と雷の魔法を操る男。騎士団の最高戦力と言われる隊長格の一人。そんな男と遭遇してしまったのだ。
出会ってしまった以上、キチンと報告しなければならない。
ミラーナはそう考え、これまでの経緯を簡潔に話したのだが、ヴァルトに納得をしてもらう事はできず、それどころか騎士団の一員として行動すべきであるにも関わらず、私情で動いたと判断され、拘束される事となってしまった。
「もっときちんと説明できていれば」
自分の思いを上手く伝えるのは中々難しいものだ。さらに運の悪い事にヴァルトは自分と会うよりも前にギルドに顔を出し、ギルド受付嬢から話を色々と聞いていたのだという。
その中でギルドからの要請を無視し、ヒューゴという一人の男と行動を共にしているという話をされ、そこに多くの嘘をまじえた報告をされてしまったのだ。その説明をひっくり返すほどの説明をミラーナはする事ができなかった。
「ヒューゴ……」
その上ヒューゴの存在まで知られてしまった。見張りをしていた衛兵たちを引き付けていた事に疑問を覚えたヴァルトは、自分たちが屋敷で何かしようとしていたのではないかと考え、様子を見に行くといい屋敷に入って行ってしまったのだ。
「いくらヒューゴでもヴァルト隊長が相手だと……」
ヒューゴの魔法は規格外だ、一緒に行動していたからこそ分かる。あれほど敵のステータスを大きく下げる魔法など聞いた事ない。その性能はワイルドベアやキラータイガーでさえ簡単に倒せるようになってしまうほどだった。
だが今回は相手が悪い。あのヴァルトが相手となればそうもいかない。何せ相手は騎士団の中でもトップクラスの実力者が相手なのだ。実際、何度か現場でその強さを見た事があるがこれまた規格外だ。おそらく今の自分では敵わないであろう力。その力が幼馴染に振るわれるとなると、いてもたってもいられない。
(とにかくここを出ないと……)
ミラーナは話をより詳しく話すようにといわれた後、そのまま連行されて今騎士団が借りている宿の一室に閉じ込められてしまう事となったのだ。
この部屋には窓が一つしかなくしかも三階である。飛び降りれない事は無いが、怪我はするだろうしかなり目立つ。普通に出ようにも、ここは宿屋。待機を言い渡されている者が大勢いる。気づかれずに抜け出すという事もできそうにない。
自分がモタモタしているとヒューゴが捕まってしまう。どうにかして誰にも見つかる事なく部屋を抜け出せないか考えるミラーナの耳にドアがノックされる音が聞こえる。
「失礼します。お昼をお持ちしましたわよ。首席様」
声と同時に金髪を縦ロールにした女性が部屋に足を踏み入れてきた。




