無能 思いつく
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「英雄!? 俺が!?」
一体彼女は何を言っているのだろう。突然英雄になれと言われ、俺は完全に混乱していた。
「ああ、言い方が悪かったね。具体的には今回の問題を君の力で片づける。そうすれば君は英雄だ。英雄になれば衛兵たちも君を無下にはできないだろうし、君の彼女の騎士様が交わしたっていう契約も破棄できるし、君を馬鹿にしてた連中も見返せる。良い事だらけじゃないか」
「良い事だらけ……って。それよりどうして君がミラーナの契約の事を!?」
「美人騎士様をかけて栄光の翼と君が勝負してるって話。一部で噂になってたからさ」
確かミラーナが栄光の翼相手に啖呵を切った時、周りにはギルドの受付嬢や、他の冒険者パーティーが何人かちらほらいた。となれば情報が洩れたとしても何らおかしくはなかった。
「それに今回の問題を俺だけで解決するって事はオークナイトやメイジ、ジェネラルやいるかもしれないエンペラーも倒すって事だろ! そんなのできる訳」
「ないと思ってる?」
俺の言葉を聞いたレイシアが頭をかしげる。
「というより多分、この問題を解決できるとしたら君だけだと思うよ。オークジェネラルの一体や二体なら何とかなると思うけど、オークエンペラーがいるなら話は別。あのヴァルトがいたとしても厳しいだろうね」
勝てないと言い切るレイシアの言葉に俺は息を呑む。確かに領主の屋敷で戦ったヴァルトは今まで戦ってきた相手とは違う雰囲気を纏っていた。
実際に戦ってみて分かったが、栄光の翼の面々とは比べ物にならないくらい強い。今回は勝てたが次に戦って勝てるかと言われると正直怪しいくらいだ。
そんな彼がいるならオークの大群が攻めてきたとしても何とかなるのではないかと思ったが、どうやら俺の見込みは甘かったようだ。
「でも君の力を使えばオークエンペラーが相手でも何とかなると思うよ。私の攻撃と彼女の攻撃、そのどっちも簡単に受け止めた君ならね」
どうやら俺以上に彼女は俺の魔法の事を評価しているようだ。未だに実感はないが、ミラーナとレイシアのあの一撃を抑え込めた俺の魔法なら……。知らぬ間に俺は拳を強く握りしめていた。
「とはいえいくら君が規格外でも一人じゃオークの進行を抑えきれない。そこは何か手を打たないとね」
彼女の言う通り、敵はオークエンペラーだけではない。ジェネラルが何体いるかも分からないし、それより下位のオークたちもどれだけいるか分からない。
例え自分がオークエンペラーを抑え込めたとしても他のオークたちに襲撃をかけられれば町もただでは済まないだろう。
(となると助っ人が必要だな)
そうなってくると必要なのは頼りになる助っ人、それもジェネラル相手に戦えるほどの実力者が必要だ。今回ギルドはあてにできない。一応変異種を討伐するにあたってメンバーを選定しているが肝心のAクラスの実力者はワイバーン退治に渓谷に向かってしまう。
残るメンバーだけだと戦えたとしてもオークナイト、メイジクラス相手にだろう。
(それに俺の言う事は信じてもらえないだろうしな)
さんざんギルドから無能扱いされてきた俺だ。そもそも俺が何を言っても信用してもらえないだろう。
(領主も全くあてにならないよな……)
今自分を追い回してきている衛兵たちを率いているのが領主だが、肝心の戦闘力はいささか頼りない。正直オーク相手に勝てるかも怪しい所だ。
(となれば残るの騎士団だけだけど……厳しいよな)
ミラーナを筆頭に何名か騎士団の者たちが町にいるのは確認している。屋敷で戦ったヴォルトもそうだ。彼らが協力してくれれば非常に心強いが、屋敷でやりあった後のこの状況では接触するのは難しいだろう。
(せめてミラーナがいてくれれば……)
頼りにできる彼女も今は拘束されている。何としても助けに行きたいがどこにいるかも分からない状況だ。せめて彼女の居場所が分かれば。そんな思いが胸をよぎる。
「難しい顔してちゃ良い案も出てこないよ。ここは美味しい物を食べて頭を切り替えようよ」
「お待たせしました。こちら盛り合わせパフェになります」
「おっ! 来た来た。君も甘いものでも食べてリラックスしたらどうかな?」
注文していた料理が届いたの見たレイシアがそれを口に入れる。全く、人が考え事をしているというのに。
美味しそうにデザートを食べる彼女は子どものような無邪気な笑顔を浮かべていた。
(こう見えてもミラーナと同じくらい強いんだよなぁ……)
見た目は少女のレイシアだがその実力はかなりのものでミラーナにも引けを取らないほどだ。それに加えあのミノタウロスを一人で倒してしまえるほどの力を持っている。
(ん? 待てよ?)
おいおい、待てよ。見知らぬ仲じゃなくて、オークナイトやメイジ、それどころかジェネラルすら倒しうる実力者。そんな存在がいるじゃないか。今目の前に
となれば俺が取る手は一つだ。
「レイシア! 君の力を俺に貸してくれ!」




