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【3章完結!】  ステータスダウンしかできない無能デバッファー。追放宣告を受けてしまったが実は最強デバッファーでした。  作者: 追放されるけど何だかんだでハッピーなのが好きな人
一章 無能と呼ばれる男
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無能 猶予を貰う

お待たせしました!

いよいよ反撃開始です!

元々主人公含め職業設定してたのですが最終的にカットする事にしています

変なのが残ってたら報告ください

騎士団から派遣されたという女性、ミラーナにギルド内にいる全ての人間が目を奪われた。

恰好は女性騎士のそれで、動きやすい軽装に手甲と足甲を身に着けている。

その姿はまさしく麗しき女性騎士、その一言に尽きる。



「……ミラーナさんですね! お待ちしておりました!」


はっと我に返った受付嬢が応対する。


「ミラーナさんには私たちのギルドで最も活躍しているパーティーと一緒に活動してもらって、その活動を知ってもらえればと思います! ご紹介しましょう! 今私たちのギルドで最も活躍しているパーティー、栄光の翼の皆さんです!」


栄光の翼。フォールをリーダーとする若手メンバーばかりでありながら目まぐるしい勢いで成長を続けているパーティーだ。ギルドにとっても栄光の翼の名は自慢できるものなのだろう。大きく胸を張りその存在をアピールする。


「フォールだ。栄光の翼のリーダーをやっている。この力を使ってギルドに貢献させてもらっているよ。そして今日を以って無事にAランクになる事ができた。それも俺の力があっての……」


受付嬢の言葉を聞いたフォールたちがミラーナに対して自己紹介を始める。面白い事に彼らはいちいち自己紹介以上に自分がどれだけすごいのかを存分にアピールしていた。おそらくミラーナに対し、自分の存在をアピールしたいのだろう。

逆にステラは面白くないのか、簡潔な自己紹介しか行わなかった。自分と付き合っているフォールが他の女に目を奪われているのが許せないのだろう。


「さて……これで俺たちの自己紹介は……」

「変ですね。栄光の翼は全員で五人パーティーと聞きましたが?」


その言葉にフォールはビクッと肩を震わす。しかし笑顔のまま表情を変えず言葉を続ける。


「ええっと、五人目ですが実は理由がありましてこの場には……」

「……なるほど。私はてっきりそちらに倒れている彼が五人目のお仲間だと思ったのですが」


その言葉を聞き、俺はミラーナに視線を向ける。そしてミラーナの瞳にもまた俺の姿が映る。こう見てみるとその瞳は宝石のように美しい。


「その男はもう我々とは関係ありません。彼は仲間を危険に巻き込み、あわよくば始末しようと目論んだとんでもない男です。その結果、そこの無能はギルドからの追放が決まりました」

「なるほど、彼があなたたちの仲間を。それで彼の言い分は?」

「は?」

「彼の言い分は何なのですか? と尋ねたのです」


ミラーナの問いを予期していなかったのかフォールは思わず間の抜けた声をだしてしまう。だがすぐさま、頭を切り替え言葉を続ける。

「言い分も何も……。そこの無能は魔法をろくに使えない、囮もできない、自分の仕事もできない、そんな男です。活躍している俺たちに嫉妬し、隙を見計らって始末しようとしたんです」


回りの者たちもフォールの発言につられうんうんと同調するように頷く。


「……なるほど。その発言が真実なら追放も仕方ないでしょう」

「その通りなんです。だからそこの無能は」

「しかし、その証拠はあるのですか? 彼があなたたちを始末しようとした、その証拠は?」

「えっ?」


またもや間の抜けた返答をしてしまうフォール。


「ちょいと待てや姉ちゃん! まさか俺たちを疑ってるのか? 悪いのは俺たちじゃなくてそこのゴミ無能の」

「ドヴォル! 黙ってろ! 今彼女とは俺が話しているんだ!」


ドヴォルが口を挟もうとした事に焦りを覚えたのか、フォールは大声を上げそれを制止する。


「疑う……ですか? そうですね。疑っていないと言えば嘘になります」


疑われているという言葉を聞き、フォールは思わず驚きの表情を浮かべてしまう。


「その理由は二つあります。まず一つ目、私は昨日の夜、この町にたどり着いていました。そこで町の人々がこんな話をしているのを耳にしました。栄光の翼はストレス発散のために自分たちのパーティーにいる男に度重なる嫌がらせや暴行を行っていると」

「な!!」

「そして二つ目、それは単純にあなたが信用できないからです。そこにいる彼、あなたは彼に対し無能という言葉を何度も使いましたね。追放されたといっても、元々は一緒に行動していた仲間、そんな仲間に対して何度も無能という言葉を言い放つあなたを信用できるとお思いですか?」


フォールは思わず黙り込んでしまう。そういえばと自分の発言を思い返してみると、確かに彼女に向かって無能という言葉を何度か口にした記憶があったからだ。


「さっきから聞いてりゃ! 俺たちに対して文句があるってのか!? 文句があるなら!」

「ドヴォル! 黙れと言っているだろう!」


粗暴なドヴォルが我慢しきれずついに実力行使に出ようとするが、寸での所でフォールが制止する。今この場で彼女に手を出そうものなら自分たちが嘘をついていましたと証言するようなものだ。ここが野外ならいくらでも隠ぺいしようがある。しかしここはギルド内、多くの人の目があるし何より相手は騎士団に所属している。何かが起こりギルドと騎士団で確執が起きてしまうのはマズイ。フォールは内心苛立ちつつも、何とか冷静を保とうする。


「とはいえ逆にあなたたちの言っている事が本当ではないという証拠もありません。そこでどうでしょう? 今日から一週間、私がそこの彼を監視しましょう。彼がもしあなた方が言うように問題を起こす人物であればあなた方の好きに……。逆に彼が普通の人物であなた方に問題があるのであれば彼の処遇の見直しをするというのはいかがでしょう?」


突然の提案にフォールはどう返すべきか悩む。目の前の女性は自分が監視する事でどちらの言い分が正しいのか見極めると言っているのだ。普通なら断ればいいのだが、下手に断ると自分たちにやましい事があるから断ったのではないかと疑われてしまうからだ。


「悪いが信用できない。もしそこのむ……彼が一週間君を騙しきったら、いやそもそも何かの理由をつけて君とグルになる可能性だってある」

「そうですか……。なら条件をつけましょうか? もし彼が私を騙し切り、その後ギルドに何らかの迷惑をかけたのなら騎士団の名にかけて補償を。正確には私が所有する全財産、加えて私の身を差し出しましょう。ですがもし彼が無実なのであれば、追放の取消、そしてあなた方にはそれ相応の報いを受けてもらいます。あの栄光の翼がパーティーメンバーに対し暴行を加えていたとなれば騎士団としても無視できないので」


追加された条件を聞き思わず息を呑む。全財産、それがいくらか分からないが騎士団に所属する以上、少なからず蓄えがあるだろう。だがそれ以上に目の前の女性が自身を差し出すと言う言葉を聞いた事で思わず息を呑んでしまう。

同じパーティーのステラも美人の部類だが、前の前の彼女はそれすらをはるかに上回る美貌の持ち主だ。そんな彼女を好きに出来る。そんな妄想をしただけで男の欲というものが湧いてくる。


「よっしゃー引き受けた! その約束忘れるなよ! 姉ちゃん! 万が一、そこの無能がヘマをしたと発覚したら……分かってるよなぁ」


フォールが返答をする前にドヴォルが提案を受け入れてしまった。


「おい! ドヴォル何を勝手に!」

「いいじゃねぇか! 悪いのはそこの無能なんだ。俺たちは何も悪い事はしていない。そうだろう? それよりも、あの体を好きにできると思うと……今からたまんねぇぜ」


未来の事を想像してなのか、ドヴォルが舌なめずりをする。


「ちょっと! 私は反対よ! そこの女がどうなろうと私には関係ないわ!」

「落ち着いて下さいよステラ。悪い事ばかりじゃありませんよ?」


反対するステラに対し、ウィズは彼女に対しメリットの提案を行う。


「考えてもみて下さい。彼女は騎士団所属。騎士団となれば王国に伝手があります。彼女を足がかりにすれば王との謁見ができる可能性もあります。そうなれば私たちは王にすら認められた選ばれしパーティーに、それどころかSランクも夢じゃありませんよ!」

「王様に……Sランク……」

「くくく……決まりだな! それじゃあ一週間、そこの無能の監視、精々頑張ってくれよ! さてと、それじゃあ一週間後に備えて、今から蓄えなきゃな!」


ドヴォルが大笑いしながらギルドを後にし、ステラとウィズもそれに続く。


「……えーと、フォールさんよろしかったのですか?」


心配した様子で受付嬢がフォールに声をかける。


「他の三人がああなった以上もうどうしようもないだろう。すまないがそういう事にしておいてくれ」

「分かりました。それではミラーナさんにはそこのむ……彼の監視をしてもらう事にしましょう」

「ドヴォルの馬鹿が……余計な真似を……」


そう言い残し、フォールもギルドを後にその場から立ち去った。


「さて、それでは一週間、よろしくお願いしますね。"ヒューゴ"さん」


こうして俺は無能としか呼ばれていないのに自身の名前を知っている女性、ミラーナの監視の元、一週間過ごす事となった。


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