無能 襲われる
サブタイそろそろ被ってしまいそう……
考えるの地味に難しいです
「うおおおお!」
先に動いたのは騎士の男だ。声を上げながら俺に向かって斬りかかってくる。
「よっと」
寸での所で俺はかわす。先ほどの衛兵とは違い、剣筋も良く、訓練しているなと感じさせる動きを取ってくる。とはいえこちらは散々囮だの新技の実験台だのされた事のある身だ。それをかわす事くらいなんら難しい事ではない。
「この!」
続けざまにもう一人の男が斬りかかってくるが、それもかわす。それにしても躊躇いがないな。こっちは相手と違い、防具を身に着けていないというのに。
どうやら本気で俺を倒そうとしているようだ。
(となると手は一つだな)
とりあえず領主にはオークの大群に対する報告はした。信用はしてくれなさそうだが、情報を耳にしているとしていないのとでは差がある。この報告で結果的に少しでも住人たちが助かってくれればと後は願うだけだ。
最も不法侵入という罪が対価として加わってしまったが。
「おとなしくしろ!」
考え込んでいると騎士の男が剣を薙ぎ払ってくる。俺はそれを身を引いて避け、男二人に速度ダウンの魔法をかけ、その場から逃走を図る。
「「待……て!?」」
こちらを追いかけようとしていた男たちが体勢を崩して前に倒れこむ。俺の魔法の効果で足のバランスが取れずに転倒したようだ。
「何をしているか! 早く追わんか!」
領主の怒りの声が聞こえるが騎士たちも動こうに動けないのだろう。怒声を無視し、俺は一目散に部屋を後にした。
「いたぞ! 侵入者だ!」
部屋を出ると今度は衛兵たちが追いかけてくる。先ほどまでの騒ぎで本来の屋敷の守り手である衛兵たちも動き出したようだ。
(ミラーナに怒られるな)
せっかくこっそり侵入できるようにミラーナが動いてくれたというのに。本当なら合流したいところだがこの状況ではそうもいかないだろう。俺はともかくミラーナは騎士団所属。彼女なら悪い事にはならないだろうし、何より強い。万が一誰かと敵対する事になったとしても彼女なら突破できるはずだ。
迫りくる衛兵たちに魔法をかけつつ出口目指して走る。
(よし、出口だ。あそこを抜ければ)
「悪いが、ここは通行止めだ。おとなしくしてもらおう」
出口を抜けようとした俺に対し、突然何者かが襲い掛かってくる。
「くっ!」
襲撃者の攻撃を何とかかわし、その姿を目に映す。
「ほう。あの攻撃を避けるか。大したものだな」
目の前に現れた人物。それは男は斧を持った男であった。体の大きさはドヴォルよりは小さいが、それでも体つきは屈強な男を思わせるそれで、これまでの人物とは一味違うオーラを纏っていた。
「侵入者が現れたと聞いたが、まさか栄光の翼のメンバーとはな」
「俺の事を知っているのか?」
「今最も有名なパーティーの一員となれば知らない者はいるまい。騎士団でもそれくらいの事は把握している。」
どうやら目の前の男もまた騎士団所属の者のようだ。騎士団にまで素性がバレてしまっているとは。これは思った以上に厄介な事になりそうだ。
「それとうちのミラーナが世話になったようだな」
「ミラーナ!? お前ミラーナの事を」
「何やら君とつるんで色々としていたみたいだな。今そのあたりの話を聞かせてもらっているよ」
「っ!? お前!」
話を聞く。つまりそれは彼女と対話できる状態になっているという事。つまり彼女は目の前の男の手に落ちたという事だ。どういう経緯でそうなったかは分からないがこの男が嘘を言っているようには見えない。それが彼女と同じ騎士団に所属している者となればなおさらだ。
「答えろ! 彼女をどこにやった!?」
「これは我々身内の問題。少なくとも君には何の関係もない話だ」
「ふざけるな!」
「君の私情に彼女を巻き込んだ、それこそふざけていると思うがどうかね?」
この男の言い分にも一理ある。彼女が善意で協力してくれていたとはいえ、事の発端は俺は追放された事から始まる。それがなければ彼女との関わりも大きく変わっていたものになっていただろう。
「さて、時間が惜しい。君と問答をしている余裕はないのでね。私も任務を果たさせてもらうよ」
ガンと斧を地面に叩きつけ、構えを取る。すると男の斧に雷が纏わりつき始めた。それと同時にとてつもない威圧が放たれる。思わず足がすくんでしまいそうになるくらいだ。
「それは……雷属性の!?」
「魔法付与を知っていたか。いや、彼女と一緒に行動していたのなら、知っていても何らおかしくはないか」
ミラーナも使っていた魔法付与。通常の武器による攻撃にさらに破壊の力を乗せる技。この男、騎士団所属の者の中でも只者ではなさそうだ。
「君には様々な容疑がかかっている。手荒な真似はしたくなかったが拘束させてもらうぞ」




