無能 疑われる
台風が来ているみたいです
皆さんお気をつけください
私の住んでる地域にも来るみたいですが……
「やっぱりどこもかしこも、変異種についての噂で持ち切りだな」
「変異種が二体も発生したとなれば、こうなっても不思議じゃないわ」
ギルド、というより栄光の翼の面々により、魔の森にウッドモンキーの変異種が、渓谷にてワイバーンの変異種が発生したという情報がもたらされた。
その影響もあってか、町を回ってみると、住人たちがなにやらソワソワしている姿が目に映る。
「でもみんな、あまり驚いているようには見えないわね」
「ギルドや衛兵がいるからな。彼らがいれば大丈夫と考えているんだろう」
この町のギルドには栄光の翼含め、Aランクパーティーもいくつかあるし、衛兵もいる。変異種が現れたとしても何とかしてくれる。そう考えているのだろう。
「本当なら町の人たちに避難勧告したいのだけど……」
「逆に余計に混乱する……か」
既に町では二体の変異種の話で持ち切りになっており、この状況でその情報は嘘で本当はオークの群れ、下手をすればオークエンペラーがいるかもしれないという情報を言ったとしても誰も信じようとはしないだろう。
「ギルドは信用してくれない。となれば……」
「この町の領主さんに頼るしかないって事ね」
「正直期待はしてないけどな」
この町の領主は事なかれ主義である。自分たちが話を持ち込んだとしても信用はおろか、動こうとしてくれるかどうかも怪しい。とはいえ、ギルドが信用してくれないとなれば彼らに頼るしかないだろう。
「仕方ない。駄目元で」
「みつけたぞ!」
ふと、自分たちの姿を捉えた何者かがこちらに向かって駆け寄ってくる。
「ちょうど良いタイミング……って所か」
駆け寄ってきた人物は鎧を着こんだ男。領主に仕える衛兵の一人だった。
「貴様がヒューゴだな? 元栄光の翼の?」
「ああ、ちょうど良かった。俺も衛兵さんの方に。いや領主様に話が」
「貴様にはパーティーメンバー殺害未遂の容疑がかかっている。おとなしくついてきてもらおうか」
突然、何を言い出したかと思えば獲物である槍を抜き出し、衛兵が戦闘の構えを取る。
「何だって!? 一体どういう」
「しらばっくれおって! 栄光の翼のウィズ殿が言っておったぞ。今回、自分たちのリーダーのフォールが遅れを取ったのは貴様のせいだと!」
「ウィズが!?」
「自分を追い出した腹いせに呪術か何かを使って自分たちに呪いをかけた。その結果、リーダーであるフォールどのがワイバーンにやられてしまったと」
呪術? そんなもの俺は使えないし、そもそも追放されてから俺はフォールたちに会っていない。だというのにいきなり訳の分からない事を言われさすがに戸惑いを覚えてしまう。
「それに加え、そちらの美人騎士殿の弱みを握り、無理やり連れまわしているそうだな。何とうらやま……けしからん奴だ!」
今度はミラーナの事について言及される。彼女は俺を助けるために行動を共にしてくれているのだが、どうやら俺と彼女と一緒に行動している理由を誰かが適当にでっち上げているようだ。
「待ってください。別に私は彼に行動を強制されている訳では」
「心配しないでください騎士殿! 我々が必ずあなたをお救いします!」
弁解しようとするミラーナの言葉を聞き入れるつもりはないようだ。とはいえ俺もいわれのない罪を受け入れるつもりもサラサラない。となれば
「ふん。抵抗する気か? 罪がさらに重くなるだけだぞ」
「悪いけど、無実の罪で捕まるつもりはないからな」
「せいぜい後悔するがいい! 牢屋の中でな!」
仕方ない。戦う気はなかったが無抵抗のまま殴られるわけにはいかない。俺も戦闘の態勢を取り、構えを取る。
こうして衛兵と俺の戦いが始まった。




