無能 追い打ちをかけられる
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主人公がキッツいのはここまで
次回からいよいよ反撃予定です
「申し訳ありません。む……ヒューゴさんに依頼を割り当てる事ができないんですよー」
宿で一泊を過ごした次の日、俺は一人でも受けられる依頼を探すため、ギルドに足を運んでいた。しかしギルドの受付嬢から依頼を受ける事ができないと宣告されてしまった
「大変申し上げにくいのですが、むの……ヒューゴさんは昨日の依頼でフォールさんたちの邪魔を。それもみなさんを巻き込む形で魔物と一緒に攻撃しようとしたとか。お話は既に伺っていますよ」
聞けば、フォールたちの活躍に嫉妬した俺が、彼らの邪魔をしようとし、挙句にはどさくさに紛れて亡き者にしようとした。どうやら俺が町に戻るまでの間にそんな嘘偽りの情報をギルドに報告したようだ。
「その結果。フォールさんたちも苦渋の決断であなたを追放する事にしたそうです。さすがに味方から命を狙われるのはたまったものではありませんからね」
ふざけるなと言いたい。魔物に巻き込まれる形で攻撃を受けそうになったのは俺の方だ。激しい怒りを覚えるが受付嬢はそんな俺を無視し、言葉を続ける。
「本来ならばギルドとしてあなたに罰を与えないといけませんが、フォールさんたちが既に追放という罪を与えた。だからそれ以上は許してやってくれと懇願してくれました。その結果あなたは一週間の謹慎処分ですみました。良かったですねー」
謹慎処分を受けるとその期間の間は依頼の受注はおろかギルドへの出入りも禁止される。つまりギルドを通しての素材の換金すら行えなくなってしまう。そんな報告を嫌味ったらしく笑顔で言い放つ受付嬢。そもそも何も悪い事はしていないのに何故俺が謹慎処分を受けないといけないのだろうか。
「こちらからは以上です。さぁ用事が済んだのなら早く出て行ってくれませんか? 無能の……おっとヒューゴさんの相手をしている時間はないんですよ。今日はフォールさんたちのAランク昇級の説明に加え騎士団の方の出迎えがあって忙しいんですから」
「ちょっと待ってください! そんな一方的な理由で納得できる訳が……」
「おい、無能! 何故お前がここにいる!?」
受付嬢につめよろうとした途端、後ろから声をかけられる。見るとフォールたち全員の姿が俺の視界に映った。
「お前は謹慎処分を受けているはずだろ? 何故ここにいる?」
「謹慎処分だって!? 何でだよ! 何でそんな話に」
「お前が無能だからだろうが!」
ドヴォルが大声を上げ、俺に詰め寄ってきたかと思えば胸倉を掴んでくる。
「俺たちの邪魔ばかりし、挙句魔物と一緒に始末しようと考えるとはよ! はん、今まで面倒見てやったのに裏切られた気分だぜ」
「何を言って! それはお前らが!」
「いい加減見苦しいですよ無能」
ウィズがやれやれとため息をつきながら眼鏡をクイっと持ち上げる。
「あなたは活躍する私たちに対して嫉妬していた。だからあんな馬鹿な行動に出たのでしょう? ですがいくら無能だからといってやっていい事と悪い事があります。そんな事も分からないのですか?」
「ふざけるな! 俺は何もやってない! 逆にお前らが!」
「いい加減にしないか!」
フォールが腰に携えていた剣を抜き、それを俺に向ける
「無能君。君のやった事は許される事じゃない。本来であれば極刑であってもおかしくはない立場だ。だが君は無能なりに俺たちのパーティーを支えてくれた。だから温情を与えたというのに」
フォールの目は真剣そのものだ。一歩間違えば斬る。そんな目をしている。だがその目とは裏腹に口元には笑みを浮かべていた。コイツこの状況を楽しんでいるのか? ありもしないでたらめをでっち上げ、俺をはめようとしているこの状況を。
「フォールさん。温情は最早不要です。この無能、ヒューゴは今日限りでギルドからも追放。他の支部にも入れないようブラックリスト入りとしますので」
ブラックリスト入り、これはギルドの中でも非常に重い判決でこの町以外にある全てのギルドを利用する事ができなくなる。すなわち冒険者生活を絶たれるといっても過言ではない。
「ぷっ! 本当に無能ね。余計な騒ぎを起こさなければ追放にならずに済んだのに」
「本当だな! いやぁ無能もたまには面白い事やってくれるじゃねぇか! 俺はすっきりしたぜ!」
ドヴォルが笑いながら俺を投げ飛ばす。投げ飛ばされ床に倒れこんだ俺の姿を見てあちこちでクスクスと笑っている声が嫌でも俺の耳に入ってくる。ギルドにいるのは受付嬢やフォールだけではない。依頼の受注や報告をしにきたもの、素材の買取を行いに来た者もいたのだ。
「無能君。君は確か田舎の小さな村出身だったな。追放された事で君は何の遺恨もなく村に帰れる。良かったじゃないか!」
うんうんと頷きながらフォールは引き抜いた剣を再び鞘に戻す。受付嬢から追報を言い渡された事で彼の気もどうやら晴れたようだ。
「さて、無能君には笑わせてもらったがそろそろ俺たちの仕事もしないとな。約束通り俺たちは今日昇級できるんだね?」
「はい、素材を確認でき次第昇級させて頂きます」
そして何事もなかったかのようにフォールと受付嬢が昇級についての話を続ける。
「それと今日から一週間、ギルドの活動を視察するとの事で騎士団から一名ギルドに派遣されます。フォールさんたちにはその方と活動を共にしてもらえたらと思いまして」
「なるほど。確かに快進撃を続けている俺たちと一緒に行動すれば騎士団のメンバーにも俺たちの活躍、ギルドのすごさを知ってもらえるでしょう。それは素晴らしい案だ。ぜひ引き受けさせてください」
「フォールさんなら引き受けてくれると思いました。報酬も弾みますのでぜひお願いします。そろそろその方も来ると思うのですが……」
受付嬢の言葉が止まる。それと同時に騒がしかったギルド内がシーンと静かになる。誰かがギルドの扉を開け、中に入ってきたからだ。普通誰かが入ってきただけではこんな事にはならない。依頼を受けに来たんだなー。素材を換金しに来たんだなー。それくらいの印象しか受けないからだ。
だが入ってきた人物の姿を見て、今ギルド内にいるメンバーは口を閉じ、思わず息を呑んでしまう。
入ってきた人物は女性であった。しかしただの女性ではない。
腰まで伸びた亜麻色の髪、風がないにも関わらずなびいているように見え、一本一本がさらさらとしている。
切れ長でクールな目つきをしており、まるで人形のような美しさを持つ美貌
プロポーションは完璧な黄金比を体現しており、見る者全ての心を奪うような肢体。
絶世の美女
彼女を一言で表すとこう表現できるだろう。
「本日、騎士団から派遣されましたミラーナと申します。皆様よろしくお願いします」
ミラーナと名乗った女性は優雅な振る舞いでお辞儀を行った。
最後に登場した彼女は……
今日中に次話を投稿しますのでしばらくお待ちを!




