無能 訪問される
今日から一週間
またお願いします
「ふわーーー。何だもう朝か」
気が付けばいつの間にか朝日が昇っていた。どうやら知らない間に完全に眠ってしまっていたようだ。
(さて……これからどうするかな)
とりあえずだがミラーナが騎士団に手紙を送ってくれている。手紙の内容を全て信じてもらえるかは分からないが、少なくとも何かしら動いてはくれるだろう。
考えているとぐぅーーとお腹が鳴る。昨日帰ってきてから食事をしたというのにもうお腹が空いている。
(とりあえず、女将さんに朝食を作ってもらうか)
扉を開け、俺は女将さんに朝食を作ってもらえないか相談しに行こうとする。その時、鼻に何やら良い匂いが漂ってくる。
(この匂いは……もう朝食を作ってくれているのか?)
これはありがたい。すぐに朝食にありつけそうだ。足を動かし俺は匂いのする方向に向かう。
「おはよう。いい朝だね」
聞こえたのは女性の声。この宿にいる女性はミラーナと宿の女将の二人だけ。しかしその声は二人のどちらのものではなかった。
「なっ!?」
「うーん。この宿はいいね。落ち着いて食事ができるし、ご飯も美味しい」
「あら、うれしい事いってくれるじゃない。あら、お兄さんおはよう」
聞こえた女性の声とは別の声、宿の女将がひょこッと調理場から顔を出しこちらを見てくる。
「今からあなたの朝ごはんも作るわ。ちょっと待ってて頂戴」
「は、はぁ……」
そういい、女将は再び調理場に姿を消した。
「って何で君がここにいるんだ!」
さりげなく馴染んでいる目の前の人物の存在に対し、思わず俺は大声を上げる。
「もう……朝からうるさいわねぇ。近所迷惑よ……」
俺の声に反応したのか、ミラーナも眠そうな顔をしながら自分の部屋から姿を現した。
「やぁ、おはよう。昨日ぶりだね」
「昨日ぶりね…………って!」
ミラーナもまた俺と同じように予想外の人物が宿にいる事に対し、驚きを隠せずにいた。
「何であなたがここにいるのよ!!!」
俺たちよりも先に宿で朝食を取っていたのは、昨日行動を共にした女性、レイシアだった。
「また可愛い子が来たわねぇ。あなたモテモテじゃない」
何故こうなったのか。俺とミラーナは、宿の女将、そしてレイシアの四人で机を囲い朝食を取っていた。
「ふふ……本当に彼はすごいんだよ。その魅力に私も」
「ちょっと! ヒューく……ヒューゴはあなたのものじゃないわよ!」
「えーー。私まだ何も言ってないんだけどなぁ」
ニヤニヤと意地悪い笑みを浮かべるレイシアに対し、ミラーナはぐぬぬと拳を握りしめていた。
「熱いわねぇ。私にも昔、こういう時があったわぁ。懐かしい」
女将も昔の事を思い出しているのかしみじみとしている。
「ところで、どうしてここに? それにどうやって?」
彼女の性格上、たまたまここに訪れたとは考えにくい。何かしら理由があっての事なのだろう。
「いやー苦労したんだよ。元栄光の翼の君と騎士団所属の美女騎士様。良くも悪くも目立つ君たちだけど、滞在しないといけない以上、どこかに泊っていると思ってさ。頑張って探し当てたんだよ。君たちの宿泊先」
どうやら彼女は俺たちがこの町を拠点にしていると判断し、俺たちの事を探していたようだ。
この宿屋はそれほど大きくなく、通りも人通りが少ない。一見、外から見ると普通の家にも見えなくはない宿だ。そのためか俺もミラーナも目立つ事なく何とかゆっくりと体を休める事ができている。
「あなたも暇人ね」
パンを食べながら、嫌味を言うミラーナ。どうやらレイシアに対し不信感を抱いているようだ。俺個人の印象としてはレイシアは悪い人物には見えないし、実力もある。
彼女と繋がりを持つのは悪くはないと思うのだが。
「昨日別れた後の話をしようと思ってね。君たちには色々迷惑をかけたから、情報料はタダにするよ。悪くはないでしょ?」
レイシアは俺たちと別れた後、単独でオークジェネラルの様子を見に行っていた。そんな彼女がわざわざ報告に来たという事は……。
「分かった。遠慮なく聞かせてもらおう。タダなんだろ?」
「そうこないとね。貰えるものは貰っとかないとね」
ミラーナはまだ納得していないようだが、情報を貰えるのはありがたい。俺たちはレイシアから話を聞く事にした。




