無能 追放される
おお、ブクマありがとうございます!
読んでくださってる方にも感謝です!
モチベ上がりますのでこれからもよろしくお願いいたします。
追放回ですがもう間もなくヒロインも登場します。
ヒロイン登場は明日まで明日までお待ちください!
「おせぇよ無能が!」
酒場に入るやいきなりドヴォルに殴られる。
「お使いすらできねぇのか!? どんだけ無能何だよお前は!」
怒鳴り散らすドヴォルを見て、パーティーメンバーはおろか、周りにいた客たちも見世物を見ているかのようにへらへらと笑っている。
「その辺にしておくんだドヴォル。可哀想じゃないか」
哀れみの目を向けながら勇者フォールが倒れている俺に駆け寄ってくる。
「せっかくの素材がこんな無能と一緒にいたら汚れ切ってしまう。あ そ ぶ ならせめてこの素材を回収してからにしてくれないと」
ぐりぐりと俺の体を踏みながら、俺からリュックを奪い去り中に入っていた素材を目に通す。
「おっとすまねぇ。無能があまりに無能なんで腹が立って素材の事すっかり忘れちまってたぜ」
「全く、あなたは粗暴すぎるんですよ。まぁ無能が相手なら仕方ありませんけどね」
ウィズがやれやれと呆れた表情を浮かべる。
「ねぇ。前から思ってたんだけどもうこの無能いらないんじゃない? 今回の依頼を達成すれば私たちはAランクでしょ? Aランクになればこんな無能の代わりなんていくらでもいると思うんだけど」
「確かに……。私の頭脳をもってしてもこの無能の有用性は中々見いだせずにいましたが、いなくなればそちらに無駄な労力を使う必要が無くなる。ステラにしては良い案です。この無能は追放しましょう」
Aランク、ギルドではS~Fのランクがあり、ランクが上がるほどより高難易度かつ報酬が高額な依頼を受ける事ができる。フォールたちのパーティーはBランクで今回の依頼をこなせばギルドからAランクに昇級となるだろうと言われていた。
「なっ! まっ……」
「おおーいいねぇ! 無能の顔を見ずに済むし、Aランクとくれば優秀な奴をいくらでもスカウトできる! こりゃぁめでたい! よっしゃあーーおめぇら今日は俺たちの驕りだ。A級昇級祝いのパーティーだ! パーっといこうぜ!」
ドヴォルの発言を聞いた、他の客たちはワーーーと歓声を上げる。
「やれやれ、俺を差し置いて勝手に決めやがって。まぁステラの言う通り、明日には俺たちは全員Aランクだ。今日くらい大目に見てやるか」
まだ決まってもいないであろう事をあたかも決まったかのように宣言し盛り上がる一行。一方で俺の追放に関して言及する人は誰一人いない。
「という訳で無能君は今日限りでクビだ。早く消えるように」
「なっ! フォール! ちょっと待っ」
「うるせぇぞ無能が! いい加減空気を読みやがれ! てめぇがいたら美味い酒も不味くなるんだよ! とっとと消えやがれ!」
ドヴォルが俺の胸倉を掴み、酒場の入り口に向かって大きく投げつける。投げられた俺は受け身を取る事すらできず、体を床に大きく打ち付ける。
「悪いな無能君。恨むなら神様でも恨んでくれたまえ」
「よっしゃー目障りな無能も消えたし、今から飲み比べだ! 誰でもいいぜ! 誰か俺と勝負する奴はいねぇか?」
回りの者たちは既に俺の事など忘れ、あれやこれやと盛り上がっている。
今まで自分のできる事を精一杯やってきたつもりだった。弱体魔法を操るデバッファーとしての仕事をし、それだけでは足りないと思い日常生活の雑用や、情報収集、魔物に対する囮や、ストレス発散のサンドバッグにされても我慢してきた。
そんな俺に対し回ってきた最後の結果がこの有様である。何と現実は非情なのだろうか。本当ならふざけるなとぶち切れてやりたい。だがデバッファーの自分にそんな力はない。あまりにも惨めすぎて思わず涙が出そうになる。
「……泊まれる場所を探さないと……」
懐にはわずかながら硬貨があった。報酬の分け前はほとんど貰えなかったが、ほんの少しでも貯めればまとまったお金になる。古びた宿での一泊分くらいの費用が手元に残っていた。
町をウロウロし、何とか格安の宿を見つける事ができた。店主にわずかながらの硬貨を払って部屋に案内してもらった後、すぐさまベッドに倒れこみ横になる。
「これから……どうしたらいいんだ……」
何とか野宿はせずに済んだがもう金はない。加えて自分はパーティーから放り出された身。明日からは自分一人だけの力で稼がなければならない。色々とやるべき事があるが、様々な要因があった事で体に大きな疲労が溜まっていた。
「シャワーくらいは浴びとかないと……」
明日から新しい仕事をするにしても最低限の身だしなみをしておこうと考え、今日の汚れを水で洗い流す。シャワーを浴び始めた所までの記憶があるのだが、気が付くといつの間にかベッドの上にいた。
無意識のうちに体を洗い終え自分の部屋に戻ってきたようだ。しかし意識があったのも一瞬、すぐさま俺は再び意識を飛ばし、いつの間にか深い眠りにつく事となった。