領主たるもの part4
最近かなり暑いですね
朝・晩はまだ少し寒く感じるかもしれませんが……
体調にはお気を付けて
「下民風情が! 調子に乗るなぁぁぁ!」
激昂したレジオンが魔力を付与した剣を振るって一閃を放つ。
「させ……るかぁ!」
すかさず俺が攻撃力低下の魔法をかけその威力を抑え込む。
「ぬぅぅ! また力が……」
オークエンペラーの攻撃をも抑え込んだ俺の魔法。敵の攻撃が魔剣によるものだったとしても有効なようだ。そのおかげでレジオンの一撃は、剣技を極められていない俺であっても簡単にいなす事ができた。
「小細工を……しおって!」
「そりゃどうも。昔からこういった戦い方しかできなかったもんでね」
互いの剣がぶつかり合い、軋んだ音が辺りに響き渡る。レジオンは前の領主と違い、戦闘をこなす事ができるだけでなく、魔力付与まで使いこなす一流の剣士だ。普通に斬りあえば、俺の体など簡単に切り裂かれてしまうだろう。
(何故だ!? 何故……何故力が出ん! 何がどうなっている!?)
一目見ただけで、レジオンが苛立ちと戸惑いを覚えているのが分かる。自分の体が思うように動かない。これほど煩わしい事はないだろう。あのオークエンペラーの動きさえ制限できてしまう俺の魔法に、レジオンは完全に翻弄されてしまっていた。
「ぬぅぁぁぁ! 下民の! 分際でぇぇ!」
このままでは埒が明かない。そう判断したのか剣を掲げてさらに魔力を周囲から集める。俺を斬り倒すのではなく、辺り一帯ふきとばして強引に倒してしまおうと考えたようだ。
「巨大な力の前では小細工など無力! 身を以って知るがいい!」
魔力を集め終えたレジオンが剣を俺に向かって振り降ろそうとする。しかしその一撃はどこからか飛んできた飛来物によって妨害される。
「そうはさせん!」
アルシャが矢を放ってレジオンの剣へと命中させ、その攻撃を弾いたのだ。
「ぐ……ぬぅ!」
剣を弾かれた事で、レジオンが態勢を崩し、大きな隙を晒し出す。
「はぁ!」
アルシャが作ってくれたこの隙。見逃す訳にはいかない。すかさず俺はレジオンに向かって剣を振るう。
「がっ!?」
防御低下の魔法をかけた上での一閃。それを受けレジオンが呻き声を出す。
(くっ! 浅い!)
倒すつもりで放った一撃であったが、寸での所で風を体に纏われ威力を抑えられてしまう。
「ぬぅ……はぁぁぁ!」
さらに風を纏われ、レジオンを中心に強風が発生する。
「くっ……そ!」
強風にあおられ俺は体を吹き飛ばされる。何とか着地に成功するが、レジオンを倒し切る事に失敗してしまったのだ。
「ヒューゴ! 大丈夫か!」
その様子を見ていたアルシャが俺の元へと駆け寄ってくる。
「ごめん。倒し切れなかった」
「下劣な男ではあるが、実力は本物だからな。それにまだチャンスは」
「ふざ……ける……なぁ!!!!!」
レジオンの咆哮と同時に剣からさらに魔力が放出される。それによってレジオンが纏う風の勢いがさらに強くなっていく。
「私は選ばれし者だぞ! その私が! 小細工しかできぬ下民や! 愚兄の血を引く出来損ないに! 翻弄されるなどあってはならないのだ!」
風の勢いがレジオンの感情に呼応するようにしてさらに激しさを増す。
(くっ! 何て勢いだ!)
立っているのが精一杯なくらいの強風が俺とアルシャに襲い掛かる。最早魔法というより災害。今自分たちがいる場所が屋敷の中であるという事を忘れてしまいそうになる。
「この私に楯突いた事、後悔するがいい!」
「っ!? アルシャ!」
強烈な攻撃がくる。このままではマズイ。俺は考えるよりも先に体を動かし行動に移る。
「消えて無くなれぇぇぇぇ!」
魔力の暴走とでもいうべきか。すさまじい強風が辺り一帯を覆いつくし、部屋のあちこちが破壊された。




