施行された政策 part1
タイトルが中々思いつかなかった……
宿の女将に武器屋のドルトン、見知った人物たちが現れ、俺は思わず驚いてしまう。
「お前、どうしてここに!?」
「それは俺の台詞なんですが」
「何だい。あんたたち知り合いだったのかい」
女将がこちらに向かって声をかけてくる。
「それも俺の台詞なんですが……。女将さんとドルトンさんこそ……」
「リマの婆さんとはそれなりに付き合いがあってな。まぁ腐れ縁って奴だ」
「誰が婆さんだい! あんたこそ冒険者やめてからはただの人相の悪いおっさんじゃないか! またモストの爺さんに鍛えてもらった方がいいんじゃないのかい?」
「はっ! 冒険者なんて仕事は若い奴に譲ってやりゃ良いんだよ! それとも自分はまだ若いからいけるとでも思ってんのか? 無理するなよ婆さん」
「……どうやら叩きのめされたいようだね! 表に出な! 相手してやるよ!」
リマと呼ばれた女性とドルトンが言い争っている。その光景を見せられ俺とアルシャは呆気に取られてしまう。口論が止まる気配が全く無かったため、何とか二人を宥め、何とか事なきを得た。
「えっとつまり……」
「リマ殿とドルトン殿は冒険者仲間だったのだな」
「まぁそうなるな」
「なつかしいわねぇ」
宿の女将であるリマ、そして武器屋の店主であるドルトンはかつて同じパーティに所属しており、冒険者として活動していたようだ。その内容に驚きつつも、俺とアルシャも二人に改めて自己紹介を行った。
(二人には驚かされたけど……まさかモストさんとも知り合いだったなんて)
ギルドマスターであるあのモストとも繋がりがあったようで、違うパーティながらも互いに冒険者として活動してきたのだという。二人が元冒険者であった事には驚いたが、モストの事でさらに驚く事となった。
「とはいえあの人もギルド長。事の顛末を話してくれたらすぐに動いてくれたよ」
「事の顛末?」
「ほら、以前あんたが話してたオークの群れの件。見つけるのは苦労したけど報告したらすぐ動いてくれたわ」
リマの言葉を聞き、そういえばと俺はかつての事を思い返す。あれはリマの宿で朝食を食べている時の事、自分なりに動いてみると言っていた記憶がある。そしてオークの騒動が解決してすぐ、ギルドマスターであるモストが俺たちの前に姿を現した。言葉から推測するに、リマが俺たちから聞いた話をモストに伝えてくれたのだろう。
「けど結局あの人がこの町に戻ってきた頃には解決してたみたいだけど」
「んでもってその件を解決したのがお前さんっていう訳だ」
大声で笑うドルトン。どうやら彼の元にも、オークの件を解決したのが俺であるという情報は来ていたようだ。
「あれは俺の力だけじゃ無理でしたから。それにモストさんが来てくれたおかげで色々な事を解決できましたし」
「ああ、あの何とかの羽とかいう奴の件だろ? 聞けばあいつら全員何かやらかした見てぇじゃねぇか。つい最近も誰か捕まってたろ?」
「あの人なりにキチンと仕事をしてるみたいね。感心だわ」
オークの討伐にこそ加われなかったモストであったが、彼のおかげで俺と栄光の翼の確執は解決した。それに加え、ギルドにおける不正の取り締まりも強化すると言っていた。これでギルドにも平穏が訪れ、将来安泰となるはずだった。"今日が来るまでは"
「まぁそれは良いとして……問題は」
「……新領主様の件ね」
どうやら二人も同じ事を思っていたようだ。オークの件が片付いたと思ったら今度は新領主、レジオンの問題がやってきた。彼の出した政策はほとんどの者が受け入れられる内容ではない。
「お前も俺も、このままだと店を取り上げられちまうからな」
「まさかあんな横暴に出てくるなんてね……」
「なっ!?」
「なんと……」
二人曰く、町の再建の為に自分たちの店を立ち退くよう衛兵から通達があったらしい。立地条件の関係もあって二人はそれを拒否したのだが、相手はそれを認めず、逆らう場合は反逆したとみなして拘束すると言われたのだ。
「しかも立ち退きの費用は一切出さないとか言いやがったからな」
「就任式では大層な事を言ってたみたいだけど、細かい所までは知らないって事でしょうね」
あの就任式でレジオンは住民たちのための政策をすると宣言していた。しかしなにやら不穏な空気が既に漂い始めている。ここに来て俺はそれをひしひしと感じ取る事となった。




