無能 これまでを振り返る
過去回想回です
今日はあと一話くらい何とか投稿したい
パーティーメンバーに放置され、置いて行かれた俺は素材がパンパンに入ったリュックを何とか背負いながら町に帰ってくる事ができた。勇者であるフォールからは夕方までに帰ってこいと言われていたが、既に日が沈み、夜の世界になろうとしていた。
「またどやされるんだろうな……」
自嘲気味に諦めの声を出す。
一体いつからこうなったのだろうか?
俺の名はヒューゴといい、元々は小さな村出身で両親と一緒に農家の仕事をしていた唯の村人であった。将来は両親の後を継ぎ村で作物を育てる。派手な生活こそできなかったものの、特に不満を感じている訳ではなかった。そんな生活を続けていた中、俺の生活が急遽変わる出来事が起こった。
ある日の事、たまたま鑑定士と名乗る男が村を訪れ、村人たちの適正値が何であるのかを占ってくれたのだ。
その結果、一村人で置いておくにはもったいない実力を持った人物が何人も現れたのだ。かくいう俺も高い魔力があった事に加え、弱体魔法に適正があり、都会に出て生活する事も夢ではないと言われたのだ。
特に外ではギルドと呼ばれる組織があり、そこでは魔物の討伐といった依頼をこなす事で、それと引き換えで報酬を得る事ができるという仕事がある事を知った。
もしギルドで活動する事ができれば今より何倍もの収入を得る事ができるようになるという話も出た。当初俺は乗り気ではなかったが、ギルドに所属すれば両親たちに対し恩返しを、より良い生活を送らせて上げる事ができるのではないか? 何より弱体魔法を使えるというのは珍しい事で、ギルドに加わればそれだけ多くの魔物の討伐貢献に繋がり、間接的に多くの人々を魔物の脅威から守る事ができるのではないか? という思いが頭をよぎるようになった。
魔物と戦うという事はそれだけ危険を伴う。そういった理由もあって両親から最初は反対されたものの、最終的には俺の意見を尊重してくれた。
そして俺は村を出て、弱体魔法を操る者として活動する事となった。
「それがこの有様だ……。本当に情けない……」
ギルドで活動していたある日、パーティーに入らないかと誘われたのだ。それがフォールたちのパーティーである。その頃はフォールたちも駆け出しという事もあって、お互いにできる事、できない事をさらけ出し合い、お互いの弱点をカバーしつつ、依頼をこなしていった。
その頃の生活は冒険者としても非常に楽しいもので、自分たちが受けた依頼はどんなものであっても必ず成功させる事ができるほど順調な毎日であった。
その時はフォールとステラ、俺の三人だけでドヴォルとウィズは後から俺たちのパーティーに加わった。
前衛と後衛とバランスの取れた俺たちはそれからも快進撃を続け、あっという間に名を馳せるほどの有名人になってしまったのだ。
だがそれがまずかった。あまりにも順調に進み過ぎた結果、失敗、挫折を知らず、自尊心だけが大きく膨れ上がる事となった。それに加え、彼らが優秀である事もあって、周りからも持ち上げられ、ストッパーとなるべき存在がいなかったのだ。
さすがにこれはマズイと思い、慢心しないよう俺は注意を促したのだがそれが悲劇の引き金となった。
フォールたちは戦闘を繰り返す事でガンガン成長し、多くの強力な魔法を使える事ができるようになっていた。一方で俺はどれだけ経験を積んでも相手のステータスを下げる魔法しか使う事ができず、他の弱体魔法を何一つ覚える事ができなかった。
そんな俺を彼らが見逃すはずもなく、いつの間にか無能のレッテルを貼られ、雑用はおろか、実験台にされたり、魔物の囮にされたり、報酬の分け前を無しにされたり散々な目に合わされた。
そして事もあろうか、俺は使えない無能、優秀なパーティーの寄生虫であるという捉え方ができるような発言を周りに聞こえるよう吹聴したのだ。そして俺はパーティー内だけでなくギルドでも無能のレッテルを貼られ、俺に関わろうとする人がいなくなってしまったのだ。
「はは……、これじゃあもう誰も俺を必要としてくれないだろうな……」
本当なら今すぐパーティーを離脱したいがやめる事はできない。無能、寄生虫といった蔑称が広まった事で俺とパーティーを組みたいと言ってくれる人などいないだろう。弱体魔法しか使えない俺一人では、魔物を倒すなど夢物語だ。
それでは収入を得られない。何をされようと何を言われようと、ただ耐えるしかないのだ。
俺は大きなため息をつきつつ、フォールたちと待ち合わせをしている酒場に向かう事にした。