幼馴染とデート part6
ちょっと暗い回かも……
一時はどうなる事かと思ったが、あれから俺とミラーナは町での散策を楽しむ事ができた。あっという間に時間が過ぎ去り、気が付けば日が沈み始めていた。
「さっき食べたばかりのような気がするけど……」
「お腹が空いたわね」
どうやらミラーナも同じ事を思っていた様で、空腹を訴えている。
「よし、それじゃあどこかに食べに行こう」
俺の提案にミラーナが頷く。できるなら落ち着ける店の方がいい。雰囲気のある所の方が、"俺としても"都合が良い。少々値が張るかもしれないが、それも仕方ないだろう。俺はミラーナを連れ、店の元へ向かう事にした。
「いらっしゃいませ。二名様でよろしいでしょうか?」
店につくと店員の男が丁寧で綺麗なお辞儀をしてくる。
「いいの?……ここものすごく高そうよ……」
「大丈夫、大丈夫」
金額を心配するミラーナが小声で話しかけてくるが問題ないと俺は答える。今回の討伐でかなりの金額が手に入った。ここの食事代くらいなら何とかなるはずだ。店員にはい、と返事して個室の席まで案内してもらい、適当に料理を注文した。
「それで……私は何の話を聞けばいいのかしら?」
改めてミラーナがこちらを見つめてくる。
「分かってたのか」
「当たり前でしょう。急に誘ってきたかと思えば一緒に町を回ろうだなんて。何かあると思うのが普通でしょ?」
どうやら目の前の幼馴染には俺が考えていた事は丸わかりだったようだ。
「わざわざ外じゃなくても良かったのに……。それこそヒューゴの部屋でも……」
「ん? 何か言った?」
「いいえ。何でもないわ」
何か呟いていたようだったが、まぁ本人が何でもないと言っているのなら問題ないだろう。
(むしろ問題があるのは俺の方か……)
正直今から話をするのが怖い。受け入れられる自信もないし、拒絶される可能性もある。この話をする事でミラーナとの関係が変わる事すらありえるのだ。
(いや、決めたんだ。自分の気持ちに向き合うって)
だがこのまま黙っていてはきっと後悔する。言わないで後悔するよりも言って後悔した方が良い。それが俺の思いなのだ。俺は大きく深呼吸をし、ミラーナの目を見つめる。
そして
「ミラーナ」
俺の思いを告白する。
「俺とパーティを組んでくれないか?」
自分がこれからしたい事。それを自分の口でしっかりと発言した。
「パーティ? 私と?」
「ああ。栄光の翼を追放になったけど、俺はまだ冒険者として活動したい。けど一人でじゃなくてミラーナと一緒がいい。だから……俺と一緒に来て欲しい」
これほど緊張したのはいつぶりだろうか。時間の感覚が分からなくなっている。今どれだけ時間が経ったのか把握できない。一秒がとてつもなく、長く感じる。
「……」
ミラーナもそのような誘いを受けると思っていなかったのだろう。思考が停止しているのか、呆気に取られている。だがそれでも時は止まらない。時間が進むにつれて、ミラーナが頭を整理し始める。
「わ……」
ミラーナが声を発する。
「私は……」
俺の誘いに答えるために。
「私は……」
だが彼女の口から出た言葉。それは
「わた……私は……」
それはすすり泣く声だった。
「私……何で……うれ……けど……だめ……」
目が真っ赤に充血し、すぐにでも泣いてしまいそうな表情を浮かべている。だがそれでも何とかミラーナは言葉を口に出して、俺の誘いに対して、返答する。
「ご……ごめ」
ついに泣き出してしまうが、それでも何とか声を出そうとする。
「ごめん……なさい……うれしいけど……だめ……」
ミラーナからの答え。それは拒否の答えであった。
「……そっか」
こうして俺の誘いは断られてしまう事となった。
「ごめんな」
泣きながらも答えを出してくれたミラーナ。俺は彼女の傍により、そっと寄り添い胸を貸した。彼女が泣き止むまで。