幼馴染とデート part5
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「ヴァルトさん!」
「ヴァルト隊長!」
俺とミラーナは、すぐさまヴァルトの元に駆け寄る。ヴァルトの方も俺たちの存在に気が付いたようで、こちらに視線を向けてくる。
「よう、お前らか」
「襲撃があったと聞いて……」
「お怪我は……?」
「何だ、心配して来てくれたのか。まぁこの通り、ピンピンだな」
見た所、怪我を負っているようには見えない。本人が問題ないと言っているのであればおそらく大丈夫なのだろう。
「ウィズは、あいつはどうなったんですか?」
「ああ、何とか抑えて拘束した。いきなり攻撃してくるもんだから焦ったぜ」
どうやらウィズはヴァルトとの戦いに敗れ、その身柄を拘束される事となったようだ。まだ現場の状況こそ把握できていないが、とりあえず騒動の原因を無事に取り除く事はできたようだ。
「しかし仮にもギルドの一員でAランクパーティの肩書を持ってるって奴が、あんな横暴に出てくるとはな。さすがの俺も予想できなかったぜ」
「すいません。ウィズが迷惑をかけたみたいで」
「おいおい、もうお前さんとあの男とは無関係だろ? お前さんが謝る事はねぇよ」
追放された身であるとはいえ、元同じパーティが起こした不祥事。謝らない訳にはいかないと考え俺は頭を下げるが、ヴァルトはする必要はないと返答する。
「大きな怪我を負った奴もいねぇみたいだし、まぁ問題無しだ。とはいえ戦闘中に部屋を一室潰しちまったんだが……」
「本当にすいません。費用は俺が」
「だから気にするんじゃねぇって。費用の請求はお前さんの"元お仲間たち"からキッチリ頂くからよ」
そう言いつつヴァルトが俺の肩にポンっと手を置く。
「ミラーナも休んでるところ悪かったな」
「本当にその通りです。昨日急に彼との話を持ってきたかと思えば今度は襲撃の話。何もかも急なんです隊長は」
「おいおい、話の件はともかく、襲撃の件は俺は全く悪くねぇんだが」
ミラーナに注意され、ヴァルトがやれやれと肩をすくめている。何だかんだでこの二人は相性が良いのだろうなと推測する。
「てな感じで今は後処理の最中だ。潰した部屋の再建の話に、ギルドへの報告。それから今日拘束した栄光の翼のウィズって男と町の領主は引き渡しだ」
ヴァルトが言うに、町の領主、そして栄光の翼のウィズに対して不正行為に関する聞き取り調査を行ったのだが、結果は黒。ウィズの方は全責任を領主に押し付けるために色々と細工をしていたようだが、それ以外にも色々と問題を起こしており、そこを追及したら逆上したのだという。
結果的に戦う事となり、武力をもって拘束するに至ったと説明を受ける。
「元々は変異種を討伐しに来ただけだってのにどんどん仕事が増えやがる。これだけ問題が出てくりゃ本部の奴らもケチつけてきそうだな。ったく面倒くせぇ」
これだけ多くの問題が起こった以上、騎士団の本部も黙ってはいないという事なのだろう。ヴァルトがしかめ面を浮かべながら頭をかいている。
「ヴァルト隊長……私も」
「呼び出して悪かったな。後はこっちで処理するからゆっくり休んでくれ」
「ですが……」
「一丁前に遠慮するな。仕事の邪魔になるからさっさと行け」
こちらに気を遣っているのか、ヴァルトが休息を取るよう声に出して言う。
「行きましょうヒューゴ」
「いいのか?」
「キッチリ休息を取るのも仕事のうちだから」
幸いな事に重傷者は出ておらず、ウィズと戦いを繰り広げたヴァルトも無事であるという事は確認できた。気になる事はあるが、とりあえずはひと段落だろう。
「分かった。すいませんヴァルトさん。俺たちはこれで失礼します」
「おう。何かあったらまた連絡する。二人きりのデート、楽しんでこい」
「ヴァ……ヴァルト隊長!」
ヴァルトに冷やかされ照れているのか、ミラーナが顔を赤くしている。あれこれ色々あったが、俺とミラーナはヴァルトの好意に甘え、引き続き町の散策を楽しむ事にした。