幼馴染とデート part3
ここに来てまた新たな情報が俺の耳に入ってくる。
(借金取り……か)
借りた金を返さない相手からどんな手段を使っても返済させる。噂程度ではあるが、そういった事を行っている組織があるというのは聞いた事がある。
そしてこの"どんな手段"という部分が問題で、組織の中には非合法な行為に手を染めている者たちもいるという。そのため、ギルドや騎士団でも問題視されており、非合法の行為に手を染める者たちを"裏の者"と呼称し、捕縛しようと躍起になっているのだ。
(全く、何やってるんだよ……)
まさかそのターゲットにドヴォルが選ばれる事になるとはさすがに予想外であった。借金の原因となっているものは、間違いなく女と酒絡みだろう。ドヴォルは欲望のままに動く人間だ。仕事を終えた時は決まって娼館や酒場に足を運んでいた。それなりには稼いでいたはずだが、おそらくそれ以上の金額を散財していたのだろう。
(いや……もう俺には関係ない事だ。……それに)
「これはちょっと軽いかしら……。けどこっちは取り回しが悪そうだし……」
ミラーナがうーんと剣を睨みながら、あれやこれやと見て回っている。全く気にならないと言えば嘘になるが、今はミラーナと町を回っている最中だ。
(この時間……。大切にしないとな)
せっかく自分の為に時間を空けてくれたというのに、今を楽しまなくてどうする。そう考えた俺はドヴォルの事は一旦忘れる事にした。
「次はあの店に行きましょう」
「ほら、次はあっち」
「あそこ何かよさそうね」
装備品ばかり見て回るだけだと飽きが来たため、途中から様々な屋台などを見て回り、気が付けば昼の時間になろうとしていた。
「ミラーナ、お腹空かないか?」
「そうね。ちょうどいい時間だし、どこかで食事にしましょう」
どうやらミラーナも空腹を感じていたようだ。ちょうど近くに落ち着ける店があったためそこに入り、俺とミラーナは店員に料理を注文した。
「中々広いわねこの町。思っていたより色々なお店があって驚いたわ」
「どこか気に入った店はあった?」
「あまりああいった店には行かないから。どこの店も新鮮な感じがしたわ」
騎士団でも休暇はあるが、あまりミラーナは外出をしていなかったようで、その時間のほとんどを鍛錬に当てていたようだ。
「……じゃないから」
「えっ?」
「一緒に外出できる友人がいないとかそんなのじゃないから!」
突然のミラーナの発言に困惑する。まぁ村での生活とフォールたちにコキ使われていた生活の俺と比べたら、確かに出会いはあると思うが。
「そもそも一緒に出掛けるのならヒュー君がいいなとか思ってたし。今日だっていきなりの事で驚いたけど本当に」
今度はボソボソと聞きとれないくらいの小声で何かを呟いている。再会してから時折その様子を見ているが、重要な事なら改めて俺に話してくれるだろう。
「お待たせしました」
そうこう話しているうちに、注文していた料理が運ばれてきた。
「「いただきます!」」
食事をしながら雑談を楽しみ、昼からどうするかを話し合う。どこに行くかはさておき、充実した一日を過ごせる。そんな風に思っていた。
「ミラーナさん! ここにいましたか!」
食事を終えてぶらぶらと散策していると、騎士の格好をした男がミラーナに向かって話しかけてくる。かなり急いでいたからか、かなりの汗をかいており、はぁはぁと大きく息切れしている。
「落ち着いて。ゆっくりでいいから話してもらえるかしら?」
「は……はい」
深呼吸をして何とか息を整え、騎士の男が言葉を紡ぐ。
「わ……私たちの拠点にしていた宿が襲われました!」
その言葉を聞いたミラーナが驚きの表情を浮かべる。
「襲撃犯は……栄光の翼のウィズという男です!」
そして俺自身もまた驚愕する事となった。
また嵐の予感が……