刀使いとデート part3
コ〇ナまた増えてる……
増えるならpvとか良い奴が増えて欲しいものです
というわけで更新です
どうぞよろしく
一瞬で決着がついた事に対し、俺を含め、周りにいた者たちが呆気に取られてしまっていた。
「はースッキリした」
「あっありえねぇ!」
「イカサマだ! この野郎、イカサマしやがった!」
満足げな表情を浮かべるレイシアに対し、相手をしていた男、そして呼び込みをしていた男は驚きの表情を浮かべている。おそらく彼らもこの展開を予想していなかったのだろう。驚きを覚えつつも、レイシアが不正をしたのではないかと疑い、疑惑の声を上げる。
「イカサマも何も私は普通に力を入れただけなんだけど」
「嘘つくんじゃねぇ! そんな細腕でこの俺に勝てる訳が」
「普通に戦ったら厳しいかもね。だから勝負が始まった瞬間、君が力を入れるよりも速く、私が力を入れた。ただそれだけの事だよ」
レイシアの言葉を聞いた事で勝負の決め手に納得がいく。どうやらレイシアは相手の男が力を込めるよりも速く、先制して力を加えたのだろう。
(言葉で説明するだけなら簡単だけど……)
しかしそれを実際にできるかと言われれば別問題だ。勝負が始まってから相手が力を入れるまでの時間などほんの僅かしかない。その一瞬の隙を突くなど、普通の人間にできる事ではない。それこそ凄まじい反射神経を持っていなければ不可能なのだ。
(まぁレイシアならできなくもない……か)
オークの群れ、それもナイトやメイジ、ジェネラルといった変異種相手であっても倒せるほどの実力を持つ彼女なら、ありえなくはないと思ってしまう。
「イカサマは不正だって言ったよな?」
「悪いがこの勝負は無効にさせてもらうぜ」
だが今回の相手はレイシアがとんでもない存在であると当然知らない。不正をしたので勝負は無効であるの一点張りだ。
「さてと。不正をしたからにはそれ相応の罰を与えねぇとな」
「嬢ちゃんといえど、拒否は」
「悪いが、その提案は聞けないな」
さすがに見ていられず、俺はレイシアを庇うようにして男たちに前に立ちふさがる。
「何だ兄ちゃん?」
「邪魔だ邪魔だ! 引っ込んでな」
突然現れた俺の対し、男たちは邪魔をするなと命令してくる。だがその命令こそこちらが聞く必要はない。それに不正がどうこういうのであれば、こちらからも言える事がある。
「いや……さ。あんたたちは不正がどうこう言っているが、人の事言えないんじゃないか?」
「何だと!」
「そこのあんた。さっきの試合で"肉体強化の魔法"を使ってたよな? それもバレないようにほんの一瞬だけ」
俺の言葉を聞いた男たちの表情が青ざめる。先ほど一瞬感じた魔力。おそらくあれは肉体強化の魔法を、それも勝負の瀬戸際という絶妙なタイミングで発動したものなのだろう。発動するタイミングが一瞬だけであれば、魔法を不正に使用しているとバレにくくなると考え、タイミングを見計らっていると考えれば辻褄があう。
「そ……そんな証拠どこにあるってんだ?」
「あんたが肉体強化の魔法を使えるかどうか。ギルドで調べてもらえば一発で分かると思うぞ。それとも"ギルド立ち合いの元"、"公正な場"で勝負してみるか?」
反論してくる男たちだが、ギルドの名が出た途端にその口を閉じる。ギルドではこういった揉め事を仲介する仕事を引き受けたりする事もある。依頼となれば当然、ギルドもそれなりの対応を取る。口を閉じたという事はどうやら"当たり"で間違いないようだ。
「おい! ふざけんじゃねぇぞ!」
「こんなの詐欺じゃないか!」
「金返せ!」
俺たちの会話を聞いていた他の者たちが男たちに一斉に駆け寄り始める。その中にはレイシアの前に腕相撲をしていたガタイの良い男もいた。どうやら観客の中には彼以外にも不正行為によって敗北した者が大勢いたようだ。
「ちっ! ずらかるぞ!
「待て!」
「逃がすか!」
さすがにこの状況はマズイと判断したのか、男たちがこの場から逃走を図る。当然金を騙し取られた者たちも黙ってはおらず、怒りの形相を浮かべながら彼らを追いかけていった。どうやら相当荒稼ぎをしていたようだ。
「っとレイシア大丈夫?」
「うん。問題ないよ。というより彼らが不正しているの私も気づいてたし」
「何だ。気づいてたのか」
どうやらレイシアも男たちが不正していた事に気づいていたようだ。
(ってまさか不正に気づいていたからこそ勝負をしかけたんじゃ)
「そうだよ。参加したら何か面白い事が起こるんじゃないかなって思ってさ」
「って心の中を読まないでくれよ」
クスクスとレイシアが笑う。相手が不正をしているのを分かった上で叩き潰そうと考えたようだ。それも軽い気持ちで。
「レイシアが凄いのは知ってるけどさ……。あんまり無茶はしないでくれよ」
「ごめんごめん。次からはちゃんと相談するよ」
何はともあれ、とりあえずはひと段落だ。気持ちを切り替え、俺は次の店を案内するために再び歩き始める。
「こう言ったらあれかもしれないけど……。さっき庇ってくれたのはちょっとカッコよかったかな」
ボソリとレイシアが何かを呟くが、その言葉を俺は聞き取る事ができなかった。