もがれる翼 part6
今日から共通テスト
受験される方頑張ってください!
無事に終わった際には是非私のこの小説を見て頂ければ
新品の斧を手に入れる事ができなかったドヴォルであったが、次は鎧を求めて違う店を訪ねていた。
「すいませんねぇ。今その対応をする余裕が無くて」
「てめぇ! ふざけてんじゃねぇぞ!」
店員の男の態度に腹を立てたドヴォルが胸倉を掴みにかかる。いつ殴りかかってもおかしくない状況となっていた。
「こっちも大変なんですよ。つい最近討伐隊の件があって、あれの後対応もあって仕事が忙しくて。ですからドヴォルさん個人の依頼を聞いている余裕はないんですよ」
「おいおい、まさかそんなどこの誰とも分からないカス野郎の依頼を優先して、この俺様を後回しにしようってんじゃないだろうな?」
この店員の男も通常は、こちらの様子を伺いながら仕事を進めていた。しかし今はどうか。先ほどの武器屋の店主の男と同じようにこちらを小馬鹿にするような態度を取ってくる。
「緊急でどうしてもというなら対応しますが……それ相応の費用が必要になりますよ? もちろんツケではなく現金での支払……」
この言葉がドヴォルの逆鱗に触れてしまった。話している途中であったにも関わらず、店員の男の口が閉じられる。男の頬を目掛けてドヴォルが殴りかかったのだ。
「かはっ!」
まさか殴られると思っていなかったのだろう。思い切り殴られ、店員の男が地面に倒れこむ。
「いい度胸だ。この俺様にそんな口を利くなんてよ!」
ポキポキとドヴォルが指を鳴らす。先ほどまで武器屋の店員の男に舐めた態度を取られていた事もあって、完全に怒りが爆発した。
「俺様を舐めたらどうなるか身を以って教えてやるよ! この店で今まで通り営業できると思うんじゃねぇぞ!」
「相手が言う事を聞かなかったら暴力ですか! 栄光の翼も随分落ちたものですね!」
「あぁぁ!?」
殴られた事で口から血が出たため、店員の男がそれを腕でぬぐう。怒るドヴォルを前にしても怯む様子を一切見せない。
「聞きましたよ。栄光の翼がギルドの任務で失敗続きだって。挙句の果てに嘘の報告をして謹慎処分を受けたって」
「てめぇ!」
「もうあんたたちはギルドや騎士団にも目をつけられてる! 今まではあんたたちの要求に渋々従ってきたが、もうそれも終わりだ!」
ギルドでの失態の話。武器屋の店主だけでなく、防具屋のここにもその話は広まっていた。それを聞いた事で今まで溜まっていた鬱憤を晴らそうとしているのだ。
「知ってるぜ! あんたの鎧もとんでもない刀使いの女性に斬られたんだろ? 今まででかい顔してたあんたたちだが、無様に敗北したんだ! あんたたちの時代は終わったんだよ!」
「……潰す」
店員の男の言葉を聞いたドヴォルは怒りを超えすぎたのか、静かになる。しかし先ほどまでとは比べ物にならないほどの怒気を放っていた。
「泣いても謝っても許さねぇ! 潰して魔物の餌にしてやるよ!」
再び怒りは爆発する。怒り狂うドヴォルを見た店員の男も、今捕まってしまえば自分の身が危ないと考え、すぐさま外に出る。
「誰か助けてくれ!」
「逃がさねぇ! ぶっ殺してやる!」
血走った目で店員の男を追いかけるドヴォル。ドヴォルはガタイが良い分筋力はあるが、そのせいか走る速度はそれほど速くない。そのため走って逃げる店員の男に中々追いつけずにいた。
「おい!」
「何してる!」
追いかけっこをしていれば、当然目立つ。それも栄光の翼のドヴォルが罵声を発しながら走っているとなれば、誰の目にも留まってしまう。そしてその様子を騎士団の男たちに見られてしまう事となった。
「止まるんだ!」
走るドヴォルの前に騎士の男が立ちふさがり、行く手を遮る、
「邪魔するんじゃねぇ! 殺すぞ!」
「落ち着くんだ。一体何が」
「るせぇ!」
自分の進路を遮った騎士の男をドヴォルは拳を振るって殴りとばした。