もがれる翼 part4
またコ〇ナがえらいことに……
体調にはお気をつけて
あれからというもの、ドヴォルたちは取り巻きたちと共に、日が沈んだ後も酒場で騒いでいた。
「うーーい。酒だぁ! 酒持ってこい!」
ドヴォルに付き合わされているのか、取り巻きたちは既に呂律が回らないくらいふらふらになっている。
「俺のーさーーけがーーのめねぇってのかぁぁぁ!」
ドヴォルも意識こそあれど、まるで水を飲むかのように酒をグイグイ飲んでいる。
「うわぁ……」
「ひでぇ……」
夜になった事もあって、酒場にはドヴォルたち以外の客も訪れていたが、酒で酔う彼らを見て思わず顔をしかめずにはいられなかった。中にはドヴォルたちが騒いでいるのを見て、入店するのを控える者もいた。
「おい……。あれ何とかならねぇのか?」
客の一人がボソッと酒場の店員に声をかける。
「……申し訳ございません。相手はあのドヴォル様ですので」
客声に対して、店員は申し訳なさそうな表情を浮かべる。相手がただの一般客であれば注意もできただろう。しかし相手はあのドヴォル、栄光の翼の一員にしてAランクパーティの男なのだ。客の男もそうだが、店員ですら注意を躊躇うほどの肩書。それをドヴォルは持っているのだ。
「仕方ねぇよ……。何せ相手はあの栄光の翼の一員だ。ギルドからしても貴重な稼ぎ柱。無下にはできねぇだろ」
「だがよ……。いくら栄光の翼の一員と言ってもやって良い事と悪い事があるだろ……」
ドヴォルたちに聞こえないように客の男たちがヒソヒソと話す。
「噂によるとドヴォルが通っている娼館、あそこで働いている女がまた一人辞めちまったらしいぜ」
「そうなのか?」
「ああ、何でも滅茶苦茶なプレイを要求して女を壊したって噂だ」
「あの体で力任せにやられたらそりゃキツイだろうな」
「しかも裏で色々手を回したらしくて、辞めたのも自己都合扱いにしたんだとよ」
「おっかねぇなおい……」
ドヴォルが酒、そして女好きであるというのは周知の事実。誰もが知っている話であった。だが酒はともかく、女の方が問題で力任せで強引な振る舞いを行い、何人もの女性が被害を受けたという噂もある。
被害を受けた女性も相手があの栄光の翼のドヴォルだからなのか、名乗り出るという事もなくそのまま見過ごされるという事も起きていたのだ。
「だが最近、調子が悪いみたいだぜ。ほらつい最近」
「ああ、確か立て続けに変異種と遭遇したって話があったな」
ウッドモンキーとワイバーンの変異種の討伐失敗の件。栄光の翼が関わっていたという事もあって、すぐに町中で噂となったため、客の男たちもその情報を耳にしていた。
「そうそう。それでリーダーのフォールが負傷したとか」
「けどもう復帰できるくらいには回復したって聞いたぜ。それに栄光の翼にはまだステラやウィズもいるだろう?」
「そういえばそのウィズも今回の変異種討伐隊に一人だけで参加したとか」
「Aランクパーティ所属の実力者なら一人だけでも大丈夫ってか。羨ましい事で」
「それがよ……。さっき気になる話を聞いたんだ……」
ヒソヒソと話をしていた男たちであったが、聞かれたらマズイ内容なのか耳元でボソッと囁く、
「何でも討伐は無事に完了したらしいんだが……そのウィズはボコボコにやられちまったんだとよ」
「おいおい、マジかよ」
「しかも仲間を置いて真っ先に逃亡したらしいぜ」
「マジかよ……。それが本当なら……」
「さすがのギルドも何かしら動きを見せるかもな」
討伐隊に参加したウィズの一連の行動。いつの間にか、少しずつではあるが、辺り一帯に広まりつつある。そしてそれが真実であると知れ渡るのも時間の問題であった。
「強者ってのはよ! 相手が酒だろうが負けねぇんだよ!」
「あれ何杯目だ?」
「ドヴォルさんすげー!」
一方で自分たちが噂されている事にも気づかず、ドヴォルはいつも通り酒を飲みはしゃぎ続ける。そうして一日を消費する事となった。