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飛べない翼 part12

ヴァルトが放った衝撃波によって部屋中に砂埃が舞い上がる。相手が相手であったため、手加減せずに本気で得物である斧を振り回した結果だ。


「やりすぎちまったか……」


時間が経ち徐々に砂埃が晴れてくる、すると部屋には衝撃波によって抉られたであろう後、さらにそこに壁に背中を打ち付けて座り込んでいるウィズの姿が目に映った。


「反応は……ないか」


その姿を見ると、白目を向いて天井を見上げている。どうやら完全に気絶してしまっているようだ。魔法を突然放ってきた事には驚かされたが、何とかウィズを抑えこむ事に成功した。


「ヴァルト隊長!」

「ご無事ですか!」


ほっと息を吐いていると部下の騎士たちが部屋に足を踏み入れてくる。先ほど避難するよう指示を出した騎士の男たちが再び戻ってきたのだ。


「お前ら!?」

「避難指示は別の者に任せております!」

「我々も加勢いたします!」


どうやら避難誘導を別の者に任せ、自分たちは隊長である自分の身を案じて加勢にきたようだ。


「馬鹿野郎! もう決着がついたところだ!」

「「えっ!?」」


ヴァルトの声を聞いた騎士の男たちが周りの様子を見ると、彼らの目にもウィズが気絶している姿が目に映る。既に決着はついたという事を己の目で確かめる事となった。


「お前らが俺に手を貸そうなんてまだまだ甘い! 気を回すのは良いが命令を聞くのも仕事の一環だという事を忘れるな!」

「「はっ……はい!」」


加勢しようとする気持ちを持つ事は悪い事ではないが、それが役に立つかは時と場合による。悪く言えば加勢に来たとしても、戦力とならず時には足手まといにしかならない事があるのだ。

今回の戦いでは、部屋の一室という狭い空間、相手はあのAランクパーティーの栄光の翼の一員だったのだ。もし彼らがあの戦いに加わっていたら、ヴァルトからすれば彼らを巻き込まないよう立ち回らないといけないし、相手のウィズからすればターゲットこそ増えるが、攻撃を当てやすくなる。

そうなればこちらの動きが制限され、戦いにくい状況になってしまっていたかもしれない。


(だからこそ、隊長はしっかり現場の状況を見極め冷静な判断をしろってか……。ったく本当に厄介だぜ)


自分の身だけでなく、部下の身を案じた上で動ける環境を作る。それが騎士団における、隊長の役割としての仕事の一つでもあるのだ。


「まあいい。気絶しているこの男は拘束して領主と一緒に搬送するぞ」

「了解しました!」

「すぐに準備します!」


騎士の男たちは拘束具を取りに向かうため、一旦部屋を後にする。今は気絶しているが、万が一意識を取り戻したとなれば再び魔法を放ち襲い掛かってくる可能性がある。拘束具には相手が魔法を使えないように封じ込める物もあり、これを身に着けさせる事で相手を無力化させる事ができる。


(すんなり勝てたとはいえ相手はあの栄光の翼の一員。油断はできねぇからな)


ヴァルトが栄光の翼のメンバーと戦うのは今回で二回目。一回目は先ほどまでの会話の中で上がっていた無能と呼ばれていた男だ。その男と戦っていると、突然自分の動きがゆっくりとなり、その隙を突かれ腹に渾身の一撃を叩き込まれた。その男は無能ゆえにパーティーから追放されたらしいが、そんな男に敗北を喫する事となってしまったのだ。


(あのヒューゴという男。あいつが只者じゃなかったから栄光の翼の他のメンバーの事を警戒していたが……)


自分に敗北を味合わせた男。そんな男を栄光の翼のパーティーメンバーは追放したのだ。となれば当然、そんなパーティーメンバーの事を警戒する。栄光の翼には"あの男以上"にとんでもない実力ばかり揃っているのではないかと。


(思ったよりも大した事のない奴らだったのかもしれねぇな)


今戦ったウィズという男。いきなり魔法を放ってくるという暴挙には驚かされたが、実際に戦った感じだとそれほど実力があるようには見えない。本人はAランクという事に強い拘りを持っているようだったが、あの実力ではAランクはおろかBランクすら怪しい。

オークの群れ討伐の件の際に集まっていた、ウィズ以外の栄光の翼のメンバーたちも、見た感じそれほど強そうな感じはしなかった。下手をすれば自分の部下の騎士たちと同レベル、それよりも下なのではと思えるくらいであった。


(真偽は分からねぇが……あれだけ慢心してりゃそこで終いだろうよ)


肩書というものはそれ相応の実績を積んで手に入れるものであり、その肩書に恥じぬよう振舞わなければならないのだ。


(それにあの実力でAランクに上り詰めれたのも気になる。ギルドが肩入れしたとしてもAランクまで行くとなれば相当だ。となれば……)


ふとそこでヴァルトはある可能性に気づく。彼らくらいの実力でもAランクに上り詰める事ができる方法、それに心あたりがあったのだ。


(俺の予想通りなら……。はっ! 実力はおろか、人を見る目すらなかったって事か!)


もしも彼らが自分が思っている事と同じ事に気づいていたら展開も変わっていただろう。しかし彼らはそれに気づく事ができず、自分たちの手でとんでもない存在を手放してしまったのだ。


(まぁ今更気づいてももう遅いがな)

「隊長! 準備ができました!」


部下の騎士たちに声をかけられたため、改めて気絶しているウィズを拘束するよう指示し、領主と共に搬送するよう命令する。


「さて後は……部屋の修理代をどうするかだな……」


ウィズが放った魔法。そして自身の攻撃によってあちこち破損している部屋の光景を見ながらヴァルトがため息を吐くのであった。


という事でウィズ編一旦終了です

あっさりすぎた気もしますが、相手が騎士団隊長となれば……ね

明日からはドヴォル編となりますので皆様お願いします


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