飛べない翼 part10
タイトル少し変更しました
ソ〇ャゲ要素ないのに人権は変だと思い
人権→最強に変えてます
タグもちょこっと変更を (ミラーナさんがんばって)
ウィズ編もいよいよ佳境ですので皆様お付き合い下さい
ウィズの魔法によって作られた風で出来た刃。それがヴァルトに向かって襲い掛かる。
「うおっ!」
だがヴァルトは騎士団所属、それも隊長にまで上り詰めた男。ウィズが魔法の詠唱を終えたのを目で捉えた後、とっさの判断で体を動かしその攻撃をかわす。
風の刃はヴァルトの体に命中せず、部屋の壁を切り裂き、傷をつける事となった。
「お前……正気か?」
「正気? 正気でないのはあなたの方でしょう! この私を、Aランクパーティーの栄光の翼の一員にして、天才であるこの私を愚弄するなど! 断じて許しませんよ!」
再びウィズが魔法を詠唱し始める。宿の一室という場所であるにも関わらず、遠慮無しに魔法を放つつもりのようだ。侮蔑の言葉をかけられた事で、完全に怒り狂ってしまっていた。
「消えなさい! ファイアボール!」
今度は火の玉を作り出してそれを放つ。その攻撃もヴァルトはさっと避けたものの、部屋の壁に命中した事で焦げ跡がつく。
(ちぃ! この野郎! 信じられねぇ事をしやがる!)
使ってくる魔法は大した威力のないものばかりだが、それはあくまで一般的な話の上である。当然、今いる部屋のような場所で使おうものなら、被害が大きくなる。
それこそ火の魔法をこのような場所で使えば、火事などの災害が起こりうる可能性があるのだ。そういった事を考慮せず、魔法を何度も使ってくるウィズ。その人間性はヴァルトにとって理解しがたいものであった。
「ヴァルト様!」
「一体何が!?」
扉が開かれ、ヴァルトの部下の男騎士たちが部屋に足を踏み入れてくる。どうやら部屋の騒音が外まで聞こえてきたようだ。
「ふん! 屑がゾロゾロと! 目ざわりですよ! ファイアボール!」
ウィズが放った魔法が男騎士たちに襲い掛かる。
「なっ!?」
「うわぁぁぁぁぁあ!」
彼らも騎士団所属とはいえ、ヴァルトのように戦闘慣れしているわけではない。突然の攻撃に反応できるわけもなく、その攻撃を体に浴びてしまう。
「目ざわりな屑は焼却しないといけませんからねぇ。次はもっとキツイのを」
「てめぇ! いい加減にしねぇか!」
ヴァルトが自分の得物である斧を手に持ち戦闘の態勢を取る。この部屋は話し合いの場でこそあったが、何かあった時のためにヴァルトは自身の武器を、傍に置いてあったのだ。
「隊長!?」
「お前ら! 今すぐこの宿にいる奴らを避難させろ!」
相手はAランクパーティー、栄光の翼所属の魔法使いだ。自分の実力に酔っている禄でもない男ではあるが、これまでの実績は間違いなく本物である。もしもこの男が本気で暴れたら、この宿が戦場となってしまう。そうなれば、今ここで宿泊している大勢の者に危害が及ぶ事になる。
それを危惧し、ヴァルトは部下の騎士たちに避難するよう命令をしたのだ。
「ですがそれだと隊長が!」
「いいから! さっさと行け!」
「っ!? はい!」
「おっと。逃がしませんよ」
部屋から出ようとする男に向かって再びウィズが魔法を放とうとする。
「させねぇよ!」
しかしそこでヴァルトが斧を振るって注意を引き、その攻撃を中断させる。そのおかげで部下の男たちは、無事に部屋から脱出する事となった。
「悪いがお前の相手は俺がさせてもらうぜ」
「ふん。もとよりそのつもりだったのでしょう? 下っ端の雑魚がいくらいても足手まといでしかないですからねぇ」
眼鏡をクイっとあげつつ、ウィズも再び戦闘の態勢を取る。先ほどまでは話合いのために、そして今は戦うために、改めて二人はお互いに向き合う形となる。
「まぁいいでしょう。ここであなたを始末して、こう報告させて頂きますよ。騎士団の隊長が今回の討伐において大きな被害を出したが、その非を認めず発狂。栄光の翼の一員である私がそれを無事に制圧したとね」
そう話しながらニヤリと笑みを浮かべるウィズ。この場における、騒ぎの原因の責任を騎士団の隊長であるヴァルトに押し付けるつもりなのだ。
「面倒な御託はいいから……さっさと来い。時間がもったいない」
「っ!? この私をまだコケにしますか! いいでしょう! この私が本気で消してあげますよ!」
こうしてヴァルトとウィズの戦いが始まる事となった。