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飛べない翼 part7

ありがとうございます

150話です!

(色々と想定外の事がありましたが……これで私の目論見通り全て進みましたね)


領主が連れ去られていったのを見たウィズがニヤリと笑みを浮かべる。領主が今回の悪事の主犯が自分であると話し出した事に対し、最初こそ驚きはしたが、キッチリと相手に罪をなすりつける事ができた。


「あなたのおかげで領主の悪事を暴く事ができた。感謝する」


自分が証拠を提供した事に対し感謝しているのだろう。ヴァルトがお礼を言いながら頭を下げてくる。


(くくく、予定通りだ。後はこれを機に騎士団と繋がりを持ち、ゆくゆくは国の上層部と縁を持てば……)


これでウィズという名は、栄光の翼の一員としてだけでなく、多くの者にそれを知られる事となるだろう。そうする事で、地位も名誉も権力も、あらゆる者が手に入るだろう。


「いえいえ、冒険者として当然の事をしたまでですよ。領主が不正したなどと町の信用問題に関わりますから」


表向きは心が清くて私欲がない、まさしくAランクパーティーの肩書にふさわしい振る舞いをするウィズ。だがその心は完全に自分の事しか考えていない欲深い人間のそれであった。


「これを機に栄光の翼をよろしくお願いしますよ。私たちも騎士団の方と交流できるという事は貴重な経験になりますので」

「そう言ってくれるのはありがたい。我々は冒険者関連の事については疎いものでね」

「何でも言ってくださればすぐ手配させて頂きます。騎士団の方々からの依頼となれば重要度も高いと思いますので」

「おお、それは心強い」


目の前の男、確か隊長のヴァルトと言ったか。この男はどうやら話が分かる相手のようだ。この男とであればこれから先、仲良くやっていけるだろう。


(最悪、何か問題が発生したとしたら彼にも消えてもらえばいいだけですからね)


騎士団と繋がりを持てる事は大きな強みではあるが、それだけでは出世する事はできないだろう。当然王国にすら評価されるほどの偉業や功績を残さなければならない。そのためには、今回のようにどこかで必ず不正をしなければならない場面がきっと出てくるだろう。

優秀である自分ならバレないように不正行為をするのは容易いし、万が一不正行為が発覚したとしてもその罪は誰かになすりつければいいだけだ。

目の前の男も、騎士団所属とはいえ所詮はただの隊長でしかない。当然彼よりもさらに上の地位に相当する人物もいる。ウィズからすれば、隊長のヴァルトも自分という存在をアピールするための踏み台でしかないのだ。


「では早速聞きたい事があるのだが、良いだろうか?」

「ええ、どうぞ」


自分の言葉を真に受けたのか、ヴァルトがいきなり質問を投げかけてくる。その行動に若干驚きつつも、断る理由もなかったため、構わないとウィズは答える。


「君が所属している栄光の翼。そこにヒューゴという男がいたと思うのだが」

「ああ、あの無……彼ですか。彼が一体どうしたのですか?」


突然あの無能の名が出された事で、思わず無能と呼んでしまう所であった。あの男が無能であるのは事実だが、さすがに第三者であるヴァルトに対して、自分と同じパーティーに所属している者を無能と呼んだりすれば印象は悪くなる。何とか言葉を抑えつつ、ウィズは相槌を打つ。


「何やら君が嘘を吹聴し、彼にやってもいない罪を押し付けようとしたと報告が上がってきていてね。その件について話を聞かせてもらいたい」

「……は?」


思わず間抜けな声を発してしまうウィズ。何が起こったのか理解できずにいた。


「呪術を使って自分たちを呪っただの、騎士団所属の者の弱みを握って脅していただの、そういった事をしていたと報告を受けたのだが」

「そ……それは」

「まぁ領主の屋敷への不法侵入に関しては本人も認めていたが……。だが他の件に関しては身に覚えがないと言っているんだよ


ここに来てあの無能の話題が出てくるとは。この展開をウィズは完全に予想できていなかったため言葉が止まる。


「あ……あれはですね」


だがここで沈黙しては相手に疑われる。何でもいいから言葉を発しなければ。その思いを胸に何とかウィズは自分の口から言葉を出す。


「それに加えて変異種の誤報告やらオークの群れときた。実は騎士団の方もかなり被害が出てな。損害もかなりのものなんだよ。本来なら騎士団内の問題は自分たちで解決するんだが、もし今回の件で"嘘の報告"をして俺たちを振り回してくれた奴がいたら、それ相応の対応をしてもらおうと思ってな」


そう言いつつヴァルトがジロリと視線をウィズに向ける。そして視線を浴びたウィズは硬直してしまう事となった。



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