飛べない翼 part4
明けましておめでとうございます!
皆様今年もよろしくお願いします!
年始も極力更新していきたいと思いますのでよろしく!
今まで取っていた場所とは異なる宿で一晩過ごしたウィズは当初の予定通り、再び騎士団の者たちがいる宿に向かう事にした。
(さて、少々遅くなりましたがいよいよですね)
いよいよ自分の新たなる道を歩く事になる。とはいえ、その道にある邪魔な小石や雑草は取り除かなければならない。そのための一歩としてまずはこの町の領主に消えてもらう必要があるのだ。
「そこで止まれ!」
宿の前に行くと、騎士の男に制止するよう声をかけられる。
「何者だ!」
「栄光の翼のウィズです。今日あなた方の上司と話をする予定なのですが」
「栄光の翼といえばあのAランクパーティーの! 少々お待ちください!」
騎士の男が確認を取るために宿の中に入っていく。この光景を昨日も見た気がするが、さすがに今日はキチンと話が通っているはず。いくら昨日の騎士の男が無能であっても、それくらいの事はしているだろう。
「お待たせしました! 話は伺っております。中にお入りください」
「では失礼しますよ」
予想通り、話が通っていたようで、ウィズは騎士団が借り上げている宿に足を踏み入れる事となった。
「ほう。さすがは騎士団が借り上げているだけあってかなり広いですねぇ」
外から見ても大きい建物であったが、中に入ると改めてこの宿がとてつもなく広い建物であると認識させられる。
(最も部屋の一室一室は私が借りていた部屋よりは小さいでしょうが)
ウィズもまたこの宿ほどではないが、大きな宿に泊まっていた。自分はAランクパーティーに上り詰めた栄光の翼の一員。そんな自分が宿泊する場所は当然、それに見合う所を選んでいた。
中が広いとはいえ、何名もの騎士団が宿泊している場所と自分が宿泊している場所。比べるまでもなくどちらの方が上であるか、誰でも分かるだろう。
「私たちの団長の元へ案内します。ついてきてください」
どうやら目の前の騎士の男は案内までしてくれるようだ。
(まぁ当然でしょう。何せ私はあの栄光の翼の一員。ウィズなのですから)
自分より頭脳も実力も劣る者は、自分の為にだけ働けばいい。この騎士の男も、昨日の人物よりかはマシなようだが、所詮ただの一介の騎士である。その程度の身分でしかないなら、自分の役に立つために道案内くらいして当然だろうとウィズは考えていた。
「おい、あれ見ろよ!」
「まさか……」
「マジかよ……」
途中ですれ違った騎士の男たちの表情が驚きで満ちている。まさか彼らも栄光の翼の一員である自分と出会えるなどとは思ってもいなかったのだろう。
(やれやれ。騎士団の下っ端にまで姿を知られてしまっているとは。有名人はつらいですねぇ)
ゆくゆくは騎士団だけでなく、国全体に住む国民にも自分の名は知れ渡る事になるだろう。それだけの実力も名声も地位も持っている自分だからこそ果たせる役目なのだから。色々考えながら歩いていると、扉が目の前に現れる。
「失礼。少しお待ちください」
そう言い残し、騎士の男が部屋に入っていく。どうやらこの部屋に団長なる人物がいるようだ。
「団長はこちらでお待ちです。どうぞお入りください」
いよいよこの時が来た。騎士団所属の団長ともなればそれなりに名の通った人物だろう。その男相手に上手く立ち回る事で、自分の目の前に栄光への道が現れるはずだ。
「失礼します」
意を決し部屋に入るウィズ。
「なっ!?」
だがここで予想外の事が起きる。自分の頭脳を以ってしても予測できないとんでもない光景が目に映りこんだのだ。
「よぉ。あんたが栄光の翼のウィズか」
声をかけてきたのは一人の男。そしてその場にはもう一人別の人物がいた。
「な……なぜあなたがここにいるんですか!?」
そこにいたのは自分が栄光への道を歩くための犠牲になるべき男、この町の領主であった。