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飛べない翼 part2

年末も近づいてきましたね

寒さもすごいので皆様体調にはお気をつけて


自分のこれからを考えた後のウィズの行動は早かった。まずは自分と手を結んでいた領主の男。これまでの不正、その全てをあの男になすりつけるための準備を始めたのだ。


(少しでも良い思いをできたんです。私には感謝してほしいくらいですね)


万が一自分が不正していた事が発覚していた時の事を考え、ウィズは裏で色々と動いていた。誰が見ても領主が悪事に手を染めていたと分かる証拠。これらをこっそり作成していたのだ。


(裏の帳簿に領主のサイン付きの書類。これさえあれば誰もがあの男が犯人だと決めつけるでしょう。全く、我ながら自分の頭の良さに惚れ惚れしますよ)


ウィズは栄光の翼の中で最も優秀な頭脳を持っていると自負している。自分がいたからこそ栄光の翼をここまで成長させられたのだし、それに加えて唯一パーティーの中でどうしようもない無能を使い物になるように色々と考えてやった。これも自分が他人より優れているからこそできる芸当だ。


(フォールたちも優秀でしたが、ギルドに目を付けられるような醜態を晒した以上、もうお終いですね。もう彼らと行動を共にする必要もないでしょう)


ウィズにとって、同じパーティーに所属していたフォールたちですら自分にとってはただの手ごまでしかなかったのだ。彼らが余計な真似をしたため、結果的にギルドから謹慎処分を受ける羽目になってしまった。


もう潮時である。ウィズはそう判断したのだ。


(最もAランクパーティーの栄光の翼とい肩書は利用させてもらいますが)


例え縁を切ったとしても、自分がかつてAランクパーティーまで上り詰めたパーティー、栄光の翼の一員という肩書は残る。それさえあれば、これから先どうとでもなるのだ。


(さてと。フォールたちは出かけたようですし、このまま宿を出るとしましょう。見つかっては厄介ですからね)


これまで一緒に行動してきた仲間と別れるという状況であるにも関わらず、ウィズは何のためらいもなく自分の部屋を引き払い、受付嬢に支払いを済ませて宿を発った。


(まずは……騎士団の根城にでも向かいますかね。彼らも自分たち用に宿を取っているはず)


癒着の件を全て領主になすりつける。騎士団が相手なら自分が持っている証拠に喜んで飛びついてくるだろうとウィズは考えていた。

「くくく、見つけましたよ」


道を歩いていると騎士の姿をした者がうろついているのが目に映る。見た所、その男は騎士団に入ってまだ日が浅い若者のように見える。となれば自分にとって"扱いやすい人間"である。


「失礼、少々道を伺いたいのですが」


これはチャンスであるという思いを抱えながら、ウィズが騎士の格好をした男に声をかける。


「ん? 何ですか?」

「実はとんでもない情報が手に入りましてね。それを提供しに伺いたいのですが」


ウィズが騎士の男に対して情報を与える。無論、話の内容は領主が不正を働いていたというもので、自分がやってきた事は当然隠して話をした。


「何と……そのような事が……」

「町を守るべき領主がそのような真似をしたという事実。あなた方騎士団としては許せないのでは?」


心の中で笑いながら騎士の男に、ある事ない事を話す。話が全くのデタラメであればその話をいきなり信じてもらうのは難しいが、話の中に事実があれば信憑性は一気に増す。自分が唆したとはいえ、実際に領主は不正行為を働いていた。そのため、ウィズの話に騎士の男は完全に引き込まれてしまっていた。


「この情報。もしあなたが仕入れたとなれば出世に繋がるかもしれませんよ?」

「っ!?」


出世という言葉を聞いた騎士の男の表情が一気に変わる。例え相手が騎士団所属の人物であっても、有能な自分であればこのように簡単にコントロールする事ができる。自分の頭の良さに惚れ惚れしてしまいそうになる。


「もしあなたが信用して下さらないなら別の方に」

「まっ待ってくれ! 分かった! すぐに案内する!」


ここで別の人物に情報を提供すると言ったとたん、騎士の男は血相を変える。こうすれば焦りが生じ、自分で考えるという選択肢が完全に消え去る。本当に扱いやすい人間だ。


(さて、次は騎士のお偉いさんと話をつけないといけませんねぇ)


次の目標を頭で考えながら、ウィズは騎士の男の後をついていく事となった。


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― 新着の感想 ―
[一言] いつも楽しく読ませていただいています。 ストーリーの進みには若干じれったさを感じることがありますが、毎朝更新を確認してしまうほどの中毒性があります。 これからも更新楽しみにしています。
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