飛べない翼 part1
おはようございます
今日からウィズ編始めていきます
タイトルちょいっと変わってます
何とかサクサク進めたい
Aランクパーティー、栄光の翼の一員の魔法を操る男ウィズ、彼は今部屋に引きこもっていた。
(私にはもう十分な蓄えも、他人を動かせる権力も、何よりこの頭脳がある)
そう自分は高い実力も優秀な頭脳も兼ね備えてる最高のエリートなのだ。
(だから私はもう冒険者などする必要はない!)
これまでウィズは様々な魔法を操って敵を葬りながらも、頭脳役として活躍してきた。それに加えこの町の領主と手を結んだりして物の流れをコントロールするなどして多くの金を手に入れる事にも貢献してきた。
(私にはあらゆるものが備わっている! わざわざ無駄に戦う必要はないんですよ!)
だがここに来て状況は一変する事となった。つい最近行われた変異種討伐戦。実力者である自分に加え、多くの別パーティや騎士団の者たちも大勢参加していた。
例え他の連中が使えない存在であっても、優秀な頭脳を持つ自分がいればどうとでもなるだろうと考えてた。それに加え、騎士団のメンバーの中に、貴族の令嬢であるローナルという女性もいた。
まさかあのような場に、高貴な身分の者がいるとはウィズもさすがに予想していなかった。だがそのおかげでローナルに自身の存在をアピールする事で繋がりを持ち、それを機にさらに自分の名を売る機会を得る事ができたのだ。
ウッドモンキーやワイバーンの変異種に遭遇した時は運が無いなと思ったが、ここにきて自分にとって大きなチャンスが転がり、有頂天になっていた。
(まさか……あれほどの化け物が存在するとは……。やはり前線に出るべきではありませんね)
だがそこで恐るべき事が起きる。魔の森で全身黒い毛皮で覆われたオークと遭遇したのだ。事もあろうかあのオークには自分の魔法が一切通用しなかった。
しかも敵の一撃。たったの一撃喰らっただけで、とんでもない痛みが全身に襲い掛かってきたのだ
(優秀な私が転移石を用意していたからこそ何とかなったものの……)
いくら優秀な自分でも、あのようなとんでもない魔物と出会ってしまってはどうしようもなかった。
(それに討伐に参加していた奴らもカスばかり。本当に使えない奴ばかりでしたね)
討伐隊に参加していた者たちにも問題はあった。隊を率いていたリーダーの男は自分と相手の力量さえ碌に見抜けず、適当な指示を出すだけ。その男が率いるパーティに所属している者たちも、口だけは立派な雑魚ばかりで事もあろうか自分に指図さえしてきたのだ。
(騎士団の者たちも酷かったですね。よくもまぁあの程度の実力で討伐隊に加わろうと思いましたね。未だに信じられませんよ)
騎士団の面々も魔物相手に碌に戦えず、中には逃亡する者までいた。
(あんなカスばかりでは勝てる勝負も勝てませんよ)
いくら自分が優秀でも味方が駄目だとどうしようもない。実際に栄光の翼にいる時も、とある男、どうしようもない無能の屑がいた事でかなり足を引っ張られた。優秀だからこその悩みというのも人生においてはどうしても出てきてしまうのだ。
(ですがもうカス共に足を引っ張られる事はありません。今の私なら冒険者をやめてフリーで活動してもどうとでもなりますからね)
冒険者としての活動が無くなれば当然収入も減るが、今の自分にとってはそれくらい無くなったとしても些細なものでしかない。
(とはいえこの優秀な私の頭脳。使わないのは勿体ないですね。いっその事、冒険者への指南役をしてもいいかもしれませんね)
Aランクパーティー、栄光の翼所属の自分から指南を受けられる。これほど名誉な事はないだろう。無論、それ相応の金額を払わせるが。
(フォールたちもAランクパーティーの栄光の翼の一員である以上、自分たちの事は自分たちで何とかするでしょう。さて独立のために色々動かねばなりませんね。まずはあの領主を切り捨てますか)
フォールたちの話によれば、自分と領主が癒着しているとギルドに疑われているらしい。こうなってしまった以上、領主はもう用済みだろう。
(いよいよ始まりますよ! この私の栄光の時代が!)
一人、ウィズは部屋でニヤリと笑みを浮かべていた。