堕ちていく翼 part12
今日はちゃんと投稿できてるはず
(何故だ! 何故こんなことに!)
痛みで苦しみ悶えている中、フォールは心の中で自問していた。自分たちはAランクパーティーの栄光の翼。誰もが尊敬を覚える憧れの存在だ。そんな自分が、どこの誰も分からないような奴ら相手にこうも一方的に好き勝手されている。その現実を受け入れられずにいた。
「おらよ!」
倒れこんでいるフォールに対し、ゴロツキの男が腹を目掛けて蹴り上げる。腹部に激しい痛みが襲い掛かり、たまらず吐き気を覚えてしまう。何とか吐くまいと我慢するが、それでも相手からの追撃は止まず、一方的に攻撃をしかけられる。
「喰らえや!」
「おら!」
「やめ……やめなさいよ!」
見かねたステラが男たちに制止するよう声を上げるが、当然それは聞き入れられず、フォールは男たちによって暴行を加え続けられていた。
「はぁーすっきりしたぜ」
「あーあー、イケメンの顔も台無しだなぁ!」
体中のあちこちを傷つけられ、フォールは武器さえ握れない状態になってしまっていた。
「おいお前ら、それ以上はやめとけ。ここでくたばったのを見つけられたら騎士団やらギルドやらが動き出して面倒な事になるからな」
リーダーの男がやめるよう指示をした事でようやくフォールは解放される。息こそあるが、最早戦闘をできる状態ではない。勝敗の結果は誰が見ても明らかであった。
「さてと、お楽しみの品も手に入ったし、撤退するぞ」
「「へい!」」
「っと忘れるところだった。この武器は貰っていくぜ、貴重な戦利品としてな!」
リーダーの男が笑いながら、地面に落ちていたフォールの剣を手に取り、それを眺める。
「こいつは……中々の代物じゃねぇか! 安心しろよ! お前の剣は俺がキッチリ大切に使ってやるからよ!」
フォールはAランクパーティー、栄光の翼のリーダーだ。そんな彼が所持している剣は普通の物と比べ、遥かに優れた性能を持っている。当然、値段もかなり高いのだが、栄光の翼からすればその資金も十分払えるくらいであった。
だが無情にもそのような剣を使ってもなお、フォールはゴロツキの男たちに敗北してしまったのだ。
「おお! リーダー! 決まってますぜ!」
「見事な武器。リーダーにこそふさわしい!」
部下の男たちも武器を手に持ったリーダーの男に対して賞賛の声を上げている。
「それはフォールの武器よ! 返しなさいよ!」
だがそれに反対する者も当然いる。フォールと同パーティーであるステラは当然、その行為を良しとしなかった。返却するよう命令するが、聞き入れられる訳もなく、男たちはその言葉を聞いてもただ笑っているだけだった。
「へへ、まぁ落ち着けよ姉ちゃん」
「本命は姉ちゃんだからな! この後たっぷり遊んでやるよ!」
「剣の事より自分の事を心配した方がいいんじゃねぇか? まぁもう遅いけどよ!」
「くっ! この!」
男たちがケラケラと笑う。ステラは拘束から逃れようと必死で抵抗するが、自分の力ではどうする事もできなかった。
「くっ……お前たち……こんな事してタダで済むと思っているのか……」
息絶え絶えながらもフォールは鋭い視線をゴロツキの男たちに向ける。
「俺たちは……Aランクパーティーの……栄光の翼……だぞ。俺たち以外にも……仲間はいるし、俺たちに何かあったら……ギルドも動く。笑っていられるのも……今のうちだ」
自分たちはあの栄光の翼の一員。そんな自分たちに何かあればギルドが絶対に何か行動を取る。それこそギルドの持つ力を全て使って、目の前のゴロツキどもを叩き潰せる。フォールはそう考えいた。
「Aランクパーティーの?」
「栄光の翼?」
その言葉を聞いた男たちがそれぞれ瞬きしつつ、それぞれの顔を見合わす。
「聞いたか! Aランクパーティーだってよ!」
「こんな雑魚が!? Aランクパーティーの一員!?」
「冗談はやめてくれよ! ありえねぇだろ!」
脅しをかけたフォールだったが、信じてもらえる訳もなく、辺り一帯に男たちの笑い声が響き渡る事となった。