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堕ちていく翼 part8

「ここがこの町のギルドが」


町を回り、フォールとステラはギルドのある建物を発見した。ここでならギルド冒険者も多くいるだろうし、ギルド自体で素材を所持している可能性もあるだろう。


「けど本当にいいの? 私たちが栄光の翼だって名乗らなくて」


ステラが質問を投げかける。フォールはギルド内で交渉するにあたって、自分たちの所属しているパーティー名を伏せる事にした。理由は単純。自分たちのギルドへ栄光の翼が訪ねてきたという情報を漏れないようにするためだ。


本当ならAランクパーティーの栄光の翼という肩書を利用したいところだが、自分たちは謹慎を受けている身。そんな自分たちがべつの町のギルドを訪ねたとなれば全てが台無しになってしまう。


そのリスクを考え、あえてフォールは自分たちはただの一冒険者として振舞う事に決めたのだ。


「金なら十分にある。金さえ出せば素材も難なく手に入るはずだ。さぁいくぞ」


そう言いつつ、フォールとステラはギルド内に足を踏み入れる。中は自分たちが今活動の拠点としているギルドとあまり変わらず、冒険者たちが椅子に座り雑談しており、正面には受付対応をするギルドの受付嬢が立っていた。



「ギルドへようこそ。ご用件は何でしょう?」


受付嬢の前に足を運ぶとニコリと笑って要件を尋ねてくる。


「緊急で変異種の素材が必要になってね。できればウッドモンキーかワイバーンの素材があればいいのだが、確認してくれないかな?」

「かしこまりました。少々お待ちください」


フォールの言葉を聞き、受付嬢がギルド内で素材のストックがないか確認しに向かう。


「何だあいつら? 見た事ねぇ顔だな」

「別の町から来た奴らじゃないか?」


周りにいた冒険者たちがひそひそと話しているが、その会話内容が自分たちの耳に入ってくる。目立たないように動いているとはいえ、注目を浴びてしまうのも仕方ないだろう。


自分もそして横にいるステラも整ったルックスを持っており、それに加え自分たちはあの栄光の翼に所属しているのだ。いくら隠そうとしても隠しきれない強者の雰囲気というものが嫌でも出てしまっているのだろう。


(やれやれ……。身分を隠していてもやはり目立ってしまうな)


これにはたまらずフォールが肩をすくめる。それと同時にやはり自分は選ばれし存在なのだと嫌でも自覚させられてしまう。ステラも自分と同じ事を思っていたのか、呆れ顔をしていた。


「お待たせしました」


確認に向かった受付嬢が戻ってくる。これでようやく素材を手に入れられる。そして再び自分たちは栄光の翼として活動を再開できる。そうフォールは考えていた。


「申し訳ございません。現在、当ギルドには変異種の素材のストックは無い状況でして……」


だが返ってきた言葉は以外なものであった。


「えっ!? どういう事だ!?」


予想していなかった答えが返ってきたため、思わず大声を上げてしまう。そして受付嬢は先ほどと同じ回答をフォールに返していた。

「現在、当ギルドでは変異種が出現したという情報は現在把握しておらず……。ウッドモンキーやワイバーンの変異種については発生事例は一度も確認できていません」

「そんなバカな!?」


ここまで来たのに変異種の素材が無い。その事実をフォールは受け入れられずにいた。


「はぁ!? 変異種の素材、どんな奴のでもいいから一つくらいはあるでしょ!?」

「そう言われましても……。そもそも変異種というのはそう簡単に見つかる個体では」

「私たちはつい最近、ウッドモンキーとワイバーンの変異種と出会ったのよ! それに魔の森ではオークの変異種がたくさん出たのよ! どうしてそんな事も知らないのよ!」


受付嬢に対してステラが怒りの声を上げる。突然怒鳴られた事に受付嬢は驚きながらも、何とかステラをなだめようと冷静に対応をしている。


「何だか騒がしいな。あいつら何やってんだ?」

「お偉い貴族様か何かじゃねぇのか? 大方、珍しい品でも買い漁りに来たんだろうよ」

「ちょっと! 聞こえてるんだけど!」


傍にいた男たちが自分たちの事を話しているを見て、ステラが男たちの元に詰め寄る。


「おっとすまねぇ」

「別に悪口を言うつもりじゃなかったんだが……」

「こっちはね、あんたたちのような雑魚を相手にしてる暇はないの。分かったら失せてくれないかしら?」


その言葉を聞いた男たちの表情が固まる。ステラもまた自分が馬鹿にされたと思い、怒りの表情を浮かべていた。

こうしてフォールたちの意図とは反対に、ひと騒ぎが起こり始めようとしていた。


どこに行っても彼らは変わらず……ってところですね

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