堕ちていく翼 part7
昨日風がやばすぎて大変でした……
寒さも酷くて……
次の日の朝、フォールとステラは別の町に向かうための準備に取り掛かった。
(結局ドヴォルは帰ってこずじまい……。ウィズは部屋にこもったままか……)
昨日宿に戻った後も、ドヴォルは帰っておらず、ウィズは部屋をノックしても返事はなかった。ドヴォルは夜の町に遊びに向かい、そのまま帰ってこず次の日の朝に帰ってくるという事がよくあったため、おそらく前日も察しの通りだろう。
(昨日かなりイラついてたからな……)
女遊びをやめろとは言わないが、自分たちはAランクパーティーの栄光の翼の一員であると自覚してほしいものだ。とはいえ素材を買いに行くだけであればパーティー全員で動く必要もないだろう。逆に大人数で動けば目立つ可能性もあるため、かえって好都合だ。
「さぁ行きましょうフォール! ふふっ、久しぶりに二人きりね!」
一方、ステラはかなり上機嫌であった。こう見えてもステラも一人の女性である。おそらく自分と二人きりで行動できるというのがうれしいのだろう。まぁこれくらいの事で機嫌が良くなるのであれば安いものだ。
「とにかくまずは移動だ。なるべく目立たないように動こう」
二人だけとはいえ自分たちはあの栄光の翼だ。謹慎を言い渡された身であるため、あまり注目されたくはない。できるだけ人目のつかないように移動し、業者に依頼して馬車で別の町に移動する事となった。
(何とか目立たずに移動出来たか……)
さすがに業者には自分たちが栄光の翼である事がバレはしたが、まさか相手も自分たちが謹慎処分を受けたなどという事は知らないだろう。
「さぁ行きましょうフォール! 早く素材を見つけて私たちの無実を証明しないと!」
「ああ、そうだな。俺たちはあの栄光の翼なんだ。俺たちが処分されるなどあってはならないからな」
自分たちはあの栄光の翼。それがあんな戒めを受けて黙ってなどいられない。必ず報いを受けさせてやる。そんな思いをフォールは胸に抱いていた。
(ここでなら変異種の素材がいくらでも手に入るはず。待っていろ)
こうしてフォールとステラは町を回り、変異種の素材を所持している者がいないか確認する事にした。
「変異種の素材? 悪いがそんな貴重な物は置いてないぜ」
「ウッドモンキーにワイバーンの変異種? そんなの聞いた事ないな」
「最近ボアの変異種の毛皮が売られていたが……。もうないと思うぜ」
しかしいくら探し回ってもウッドモンキーやワイバーンどころか、ただの変異種の素材ですら見つける事ができなかった。
「くそっ! 一体どうなってる!」
自分たちは連続でウッドモンキーやワイバーンの変異種と遭遇したというのに。町の者に話を聞いても持っていないだの知らないだの言われ、中々有益な情報を手に入れられずにいた。
「こうなったら直接この町のギルドに向かいましょう。そこでなら何か情報が得られるかも」
「別の町とは言え、直接ギルドに顔を出すのは」
別の町とはいえ自分たちはあの栄光の翼、もしかすると自分たちの存在が噂になっているかもしれない。となれば自分たちが姿を見せれば、こっそり町へ移動していたという情報がバレる可能性がある。
「……仕方ないか」
だがこのままでは何の成果も得られないまま帰る事になってしまう。
(くそっ! こんなことになるなら何か変異種の素材を手に残しておくんだった!)
フォールたちは過去に何匹か変異種の魔物を倒した事があった。そしてその素材を売却して多額の金を手に入れ、それをキッチリ"四等分"していた。分けたとはいえフォールたちの手元にはかなりの金額が転がり込んでいたのだ、
(だが今更過去の事を言っても仕方ない。まずは素材を手に入れる事に専念しよう)
フォールはステラの言葉に従い、この町のギルドに足を運ぶ事にした。