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堕ちていく翼 part6

少しダレてきた感が……

ざまぁ回はありますがもうちょい

変異種を倒す事を諦め、フォールとステラは町を回って素材を販売している店を片っ端から探す事にした。


「無理無理。うちにそんなもの置いてないよ」

「いくらフォールさんの頼みでもねぇ……」

「無いものは売れないですよ」


そう都合よく変異種の素材を売っている店も商人もおらず、時間だけが過ぎていった。


「ここは武器屋だぜ? 素材を探すなら別の店にした方がいいんじゃねぇか?」


ついには武器屋にも顔を出し、変異種の素材を置いていないか確認し始めていた。


「どんな変異種の素材でもいいんだ。武器屋なら何か一つくらいあるだろう?」

「そう言われてもなぁ。ここんとこ物の入りが悪くてあまり武器も作れねぇくらいだからな」


そうため息を吐くのは中年の男、ドルトンであった。ここ最近物の流れが一気に悪くなり、素材などが通常の価格より高騰し、ドルトンの店を含む、多くの装備品を扱う店が非常に厳しい状況に陥っていた。


「何でも領主様が税がどうとか、ギルドが何だとかでろくに物が回ってこねぇんだ。どうする事もできないだろ」


その言葉を聞き、フォールの頭にある事が浮かぶ。そういえばウィズと領主の間で行われていた取り決め。その中に素材の供給と需要をコントロールして値段を釣り上げて稼ぎを得るだとか何とか言っていた事を思い出したのだ。


無論、勝手にそのような行為をするのは違法であるが、利益になるのであればとフォールも黙認していたのだが、まさかこのような形で自分たちに返ってくるとは思ってもいなかった。


「そんなの知らないわよ! あんたも武器屋なら素材の一つくらい何とでもなるんじゃないの!?」

「おいおい……」

「それに、あんたの後ろに転がってるの魔物の牙よね? しっかり物が入ってるじゃない!」


ステラがドルトンの後ろに向かってビシッと指をさす。そこには魔物から採れたであろう牙や爪などが置かれていた。それを見たステラが目の前が自分たちに嘘をついているのではないかと疑ってかかったのだ。


「こいつはキラータイガーやワイルドベアから採れた素材だ。つい最近買い取ってほしいって依頼があったから換金しただけだぜ」

「キラータイガーやワイルドベアって言ったらBランククラスの魔物じゃない! そのクラスの魔物の素材を扱っているなら低級の変異種の素材くらいあるんじゃないの!」

「おいおい勘弁してくれよ。俺はこいつを素材に武器を作ってほしいって依頼を受けたから依頼主にただ見せただけだ。他に素材がどうこう言われても何も答えられねぇぜ」


ステラと店主のドルトンが口論している中、フォールは考えていた。キラータイガーやワイルドベアといえばBランククラスの魔物である。店主はそれを討伐した者から、つい最近買い取ってほしいという依頼があったから実際に買い取ったと言っていた。


(Bランク相当の強さを持つ魔物。それを倒せる者は限られているはず……)


この町にはBランク以上のパーティーは自分たちを含め、それほどいない。となれば素材を売却した相手というのはかなり限られてくる。


(店や商人から素材を買い取れないとなれば……そうか! その手があったか)


自分とした事がつい失念していた。何も素材を持っているのは店を構えているものだけではない。自分たちと同じギルドのパーティーメンバーたち。彼らなら換金する前の魔物の素材を持っているのではないか。そう考えたのだ。


(それに……この町だけにこだわる必要はない!)


謹慎の事もあって、外出するという言葉が完全に自分の中から消え去っていた。だが裏を返せば外出する事で、自分たちにとっての希望が生まれたのだ。


「邪魔して悪かったな。俺たちはこれで失礼する」

「ちょっと!? フォール!?」


店を出たフォールを見て、すぐさまステラがそれを追うようにしてその場を後にした。


「ったく……一体何だったんだ……」


いきなり現れてはギャーギャーと叫び、用が済んだら颯爽と出ていく。それも何も買わずにだ。迷惑な客だったなとドヴォルは肩をすくめ、すぐさま自分の仕事に戻る事にした。


「ちょっといいのフォール!?」


店を出たステラから抗議されるが、フォールはそれを気にせずにいた。何せ希望の光が見え始めたのだから。


「良いんだよステラ。素晴らしい案を思いついたんだからな」

「素晴らしい案?」


フォールは自分が思いついた案を説明する。店にもない、商人も持っていない。なら誰を当たるか。答えは簡単。自分たち以外の冒険者から素材を買い取ればいいのだと説明する。


「少し遠いがこの町より大きな町に行けばその分、素材を手に入れる確率が上がるだろう。すぐにでも移動しなければ……」

「でもいいの? 私たち謹慎中なのよ。勝手に外に出たりしたら……」

「ふっ。俺たちは栄光の翼だ。万が一何か言われたとしても別の町の者から断れない依頼を緊急で受けたといえば納得せざるを得ないだろう。俺たちはあの栄光の翼なんだからな」

「そ……そうね! さすがはフォール! 頼りになるわ!」

「とはいえバレないに越した事はない。今日は一旦宿に戻って人目のつかない、朝早くに出発する事にしよう」


こうしてフォールたちは変異種の素材を求め、明日朝一に別の町に向かう事にした。


一見順調なように見えるが、フォールたちは自分たちの行動の愚かさに全く気付く事ができずにいた。自分たちがやっている事は、散々自分たち自身で非難していた行動だ。

例え変異種の素材を手に入れたとしても、それが今回の件での立証に使えるかは別問題であるという事を理解できていないのだから。


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