堕ちていく翼 part5
寒さ少しましになったかな?
ありがたいです
自分たちの名誉を挽回すべく、フォールとステラはウッドモンキーの変異種を探しに魔の森に来ていた。
(俺たちは謹慎を受けている身。できるだけ人目につかないようにしないとな)
フォールたち栄光の翼はギルド長であるモストから謹慎処分を言い渡されている。そのため、本来であれば今回のように外での活動を行ってはならないとなっている。
(最悪、栄光の翼の名前を使えば何とかなるだろう)
万が一、謹慎の件について言及されたら、どうしても栄光の翼に依頼したいという人物が現れ、依頼を受けざるを得ない状況になってしまったとでも説明すればいいだろう。
あのギルド長が何と言おうとAランクパーティーの肩書というのはそれだけの力がある。それさえあれば多少問題が起きようと何とでもできるのだ。
(そのために何としてもウッドモンキーの変異種を見つけなければ)
だがその肩書が今まさしく失われようとしている。そんな事はあってはならない。それを防ぐべく、フォールたちは目標を見つけるべく、森の中を探索する。
「……やっぱり見つからないわね」
魔の森に入って数時間経過した。フォールたちが遭遇した魔物はゴブリンやボアといった低ランクの魔物ばかりで、変異種どころか高ランクの魔物とすら遭遇できずにいた。
「結構奥には来ているはずなんだが……」
魔の森は奥に行けば行くほどそれ相応の強さを持つ魔物が出現すると言われている。だがフォールたちの前には低ランクの魔物ばかりしか現れない。オークエンペラーやオークの群れの出現によって、魔物の生息範囲が今までと大きく変わってしまっているという事を二人は知らないのだ。
「そろそろ撤退した方がいいかもしれないわね」
「……仕方ないか。あまり外に出ているとギルドの連中に見つかるかもしれないしな」
一旦魔の森での探索を打ちきり、二人は帰路につく事にした。結局ウッドモンキーの変異種どころか高ランクの魔物とすら出会えなかった。
自分たちはAランクパーティーの栄光の翼。それ相応の強さを持っているし、相手が強い魔物であればあるほど良い素材が取れるからだ。
せっかく探索に来たのに何の成果も得られなかった事に対し落胆していた。
逆に言えば高ランクモンスターと遭遇しなかったという事は、ある意味"運が良い"という事も当然二人は把握していない。森に入ってすぐ彼らの前に強敵が現れたらまた展開が大きく変わっていただろう。
そんな事を考えもせず、二人は森から脱出し、町へと戻る事にした。
「こうなったら仕方ないわ! 町で素材を買い取りましょ!」
次の行動としてステラが町にいる商人から変異種の素材を買い取ろうと提案してくる。最悪、自分たちが魔物を倒せなかったとしても、素材さえあれば自分たちの言っていた事は本当であると証明できる。
本来なら自分たちもあの無能と同じように実際に変異種を討伐し、その亡骸を披露したかったが出会う事ができなかった以上仕方がない。
(そうだ。あの無能にできて俺たちができないわけがない!)
変異種とさえ出会えていれば自分たちなら簡単に素材手に入れられる。フォールはそう考えていた。あの無能はただ運が良かっただけ。そもそもあれだけの数のオークたちをあの無能が討伐できるはずがない。
きっと騎士団やあのレイシアとかいう刀使いと裏で繋がり、追放された腹いせに俺たちに復讐しようと考えているのだろう。
(あの無能が! 恩を仇で返すとはこのことだな!)
せっかくこれまで栄光の翼というパーティーの一員にしてやっていたというのにこの仕打ち。あの無能はただ無能なだけでなく、人様に迷惑をかけるゴミのような存在だ。
そんな無能にこのような状況に追い込まれた事に対し、当然フォールも腹を立てていた。
(待っていろ! 必ず俺たちの無実を証明してやる!)
怒りを胸に抱きつつ、フォールはステラと共に素材を扱っている商人を片っ端から探す事にした。