堕ちていく翼 part4
ウィズが部屋に引きこもり、ドヴォルが外に出ていった事で、宿にはフォールとステラの二人が取り残される事となった。
(くそっ! このままだと!)
ウィズはああ言っていたが、正直自分たちに何の罰則もないというのは考えにくい。ウィズはギルドマスターと直接会っていないから分からないのかもしれないが、あの老人はおそらく自分たちの事を完全に疑っている。
このままだと降格。下手すれば、冒険者としての資格すら剥奪されかねない。何としても自分たちの名誉を挽回しなければならない。
「フォール……。どうするの?」
ステラが心配そうな表情をしながらフォールを見つめる。しかし見つめられている当の本人は苛立っていた。人に聞くのではなく自分でも少しは何かを考えてアイディアを出せと心の中で叫ぶ。
「フォール……」
「ステラ! 少し静かにしてくれないか!」
我慢できずつい声を張り上げてしまう。フォールの機嫌が悪い事を感じ取り、ステラは謝りながら口を閉じる。
(何かあるはずだ! 俺たちの名誉を回復できる何かが!)
自分たちがこれまで築き上げてきた、地位、名誉を守るための策をフォールは懸命に考える。そうしなければ全て失ってしまうのだ。何か良い案がないかと懸命に頭を回転させる。
「ねぇフォール。私良い事を思いついたわ」
「……何だ?」
まさか本当にステラの口から案が出てくるとは思っていなかった。とはいえ今のこの状況、誰の知恵であっても借りたい状況である。フォールはステラに話を続けるよう促す。
「私たちも変異種を討伐すればいいのよ! そうすれば証拠が出せるわ!」
「変異種を俺たちで……だと?」
ステラの案は自分たちも変異種を討伐し、その亡骸を見せる事で自分たちの発言は嘘ではなかったと証明するというものであった。今回のギルドでのやり取りの中で、問題となった内容の中に、自分たちがウッドモンキーやワイバーンの変異種がいるという嘘の情報をもたらしたというものがあった。
これを自分たちが変異種を討伐する事で嘘の証言ではないという方向に持っていけるのではないかと考えたのだ。
「領主との繋がりの件はウィズが何とかしてくれるんでしょ? なら変異種の件さえ解決すれば私たちが罪に問われる事はないわ」
「……なるほど。一理あるな」
問題となっているのはそれだけではないが、一つ一つ洗い出し、それを解決すれば何とかなるのではないか。フォールの中に僅かな希望が芽生えた瞬間であった。
「だが変異種なんてそう簡単にみつかるのか? いくら俺たちの実力と言えどそもそも遭遇できなければ」
「その点は問題ないわ! もし見つけられなかったら、誰かから変異種の素材の一部を買い取ればいいのよ!」
変異種という存在は中々見つからないのに加え、その強さは普通の魔物より強力である。その分手に入る素材もそれなりの値がつく事が多い。
だが自分たちは栄光の翼、例え変異種の素材であってもそれを買い取れるだけの金額はある。かなりの値が張るだろうが全てを失う事を考えれば安いものだ。
「となればもう一度ウッドモンキーとワイバーンの変異種を探すのか?」
「探すのならウッドモンキーにしましょ。ワイバーンは危険すぎるわ……」
「ステラ……」
本当に良い女だとフォールは思う。自分がルックスが良い事もあってかステラはやたら自分に好意的だ。そしてそのステラも見た目は悪くなく、むしろ美人の部類に入るだろう。
「よし。ならすぐにウッドモンキーの変異種を探そう」
「証拠として出すだけなら体の一部だけでもいいはず! 万が一見つからなかったとしてもどこかの商人から買い取れば問題ないわ!」
こうして僅かな希望を抱き、フォールたちはウッドモンキーの変異種が存在したという証拠を探しに行く事となった。
という事で別行動に
これから先は
フォール・ステラ
ウィズ
ドヴォル
の3人それぞれ別行動の話をかいていこうと思いますのでお楽しみに