堕ちていく翼 part1
はい
という事で栄光の翼のその後を今日から書いていきます!
結構エグくなりそう……
「クソが!」
自分たちの拠点である宿に戻ってきたフォールは、戻ると同時に怒りを感情をあらわにする。
「本当に信じられない! 私たちはあの栄光の翼なのよ! それを!」
「カス共が! 絶対に許さねぇ!」
ステラとドヴォルもまた怒りを抑えきれないのか、罵声を口にしている。
栄光の翼。ギルドから認められたAランクパーティーの実力者たち。これまで大きな失敗を一つもせず、快進撃を続けて昇級した超エリートの集まりなのだ。
そんな自分たちが大衆の前で馬鹿にされるような形で晒されたのだ。その光景は彼らのプライドを大きく傷つけるのには十分であった。
「まさかギルド長があんな頭の固い爺さんだったとはな。俺たちの実力を見抜けないとは……あれこそまさしく老害だ」
「受付の奴らもそうよ! あいつらフォールの前では愛想ふるまいてたのに、あんなじいさんにちょっと言われただけでダンマリになるんだもの。本当に使えないわ!」
「所詮あいつらはただのアバズレだ。頭もそれ相応に緩いんだろうよ!」
ギルド長のモスト、そして受付嬢に対し辛辣の言葉を言い放つ。これまで多くの功績を上げてきた彼らは、当然ギルドからも注目される事となった。
となればやはり受付嬢たちの目に留まり、彼女たちもフォールたちに対して献身的な行為を取るようになったのだ。良い依頼を優先的に回してもらうのはもちろんの事、素材の買取額を割り増ししたり、様々な店を紹介してくれたり、かなりのサービスを提供するようになったのだ
。
栄光の翼に活躍してもらえれば、それをサポートしている自分たちの評価に繋がる。受付嬢たちはそう判断したのだろう。そしてその中で特にフォールはルックスが良かったため、多くの受付嬢の心を虜にしていた。
同じパーティーのステラと付き合っていたため、"そういった"関係にこそならなかったものの、他の者たちと比べより贔屓される事となったのだ。
とこれまでなら互いに損しない良い関係を築けたように思えるが、裏を返せば所詮利益だけの関係でしか繋がる事ができなかったとも取れてしまうのだ。
「でもどうするの? このままじゃ私たちと領主の関係まで……」
今回の一件でこれまでの繋がりは一瞬にして切られてしまった。それどころか癒着しているとまで言われ、下手をすれば破滅するかもしれないという所まで来てしまった。
栄光の翼はこの町の領主とも裏で繋がっていた。栄光の翼というAランクパーティーの肩書と領主という立場を組み合わせる事で、町の物流や税の流れを裏でコントロールしていたのだ。
そしてそれを利用し、ギルドでの活動以外でもかなりの収入を得ていたのだ。Aランクパーティーという名声を手に入れつつも、裏で多くの富を手にし、数多の魔物を討伐できるほどの力。
間違いなく自分たちは人生の成功者だった。にも関わらずあのような事になってしまい、非常にマズイ状況に追い込まれてしまう事となったのだ。
「領主の件はウィズに何とかさせよう。あいつならいい案が出せるはずだ」
領主とのやり取りは実はウィズが率先して始めたものだった。領主と繋がれば損はない。それどころか得しかないとウィズが言っていたため、フォールたちもその案に乗る事にしたのだ。
「後はあの無能ね。あいつも何とかしないと」
「そうだな。そもそもあの無能が余計な事をしたからこんなことになったんだ」
そして次に考えないといけないのはあの無能の事だ。温情で今までパーティーに入れてやっていたというのに、まさかこのような形で恩を仇で返してくるとは想像もしていなかった。
思えばあの無能はこれまで散々自分たちの邪魔ばかりしてきた。安全がどうとか準備がどうとか、実力がないから知識を使って自分の存在価値をアピールしようと思っていたのだろうが、はっきり言って迷惑だった。
最初こそ役に立つなとは思ったが、フォールやウィズといった優秀な仲間たちが入ってからはただただ目ざわりなだけであった。それでも同じパーティーとして見捨てず、囮や荷物持ちとして仕事を与えてやったというのに。
裏切られたとはまさしくこの事である。
「どうせ何か小細工でもしたんだろうよ。だが所詮は無能。実力は対した事ねぇカスだ。どこかで囲ってボコっちまえばそれでしまいだ」
裏でコソコソ動き、こちらをハメたつもりでいるようだが相手はただの無能のゴミ。それこそ人目のない所にさえ連れてこれば簡単に始末できるだろう。
「でもあの無能には女騎士や刀使いの女までついてるわ。どこで仲間にしたか知れないけどあいつらはどうするのよ?」
「まずはあいつらの目の前であの無能を潰して絶望させてやる! んでその後は俺たちの怖さを分からせてやるんだよ! 身を以ってな!」
あの二人の女は無能と比べ、それなりの実力を持っていた。だが自分たち栄光の翼と比べれば所詮その程度の相手でしかない。ドヴォルはそう考えていた。
「でもあんた、あの刀使いに武器を鎧も斬られてたじゃない。大丈夫なの?」
「はっ! あれは武器も鎧も粗悪品だっただけだからな! 今度はちゃんと新調した奴を装備すりゃいいだけだ!」
宿に戻ってくるまでシャツとパンツだけの姿だったドヴォル。とりあえず着替えはしたが、戦線に復帰するためには装備一式を揃えなければいけなくなった。
「とはいえこの俺様にあんな恥をかかせてくれたんだ。たっぷりと礼はしてもらわねぇとな」
そう言いつつ舌なめずりをする。あの騎士の女も、刀使いの女も顔も体つきも悪くはない。それどころか今まで自分が見た女の中でも格別だ。
同じパーティーのステラも中々の美人だがあの二人はそれを上回っているくらいだ。あれほどの上玉をみすみす見逃せるわけがなかった。
「とにかくまずは作戦会議だ。ウィズを入れて話し合おう」
ある程度これからどうするかは決めたが、まだ具体的な策は決まっていない。フォールたちはまず打ち合わせをする事にした。